「介護保険料の引き上げなどにより、年金の支給額は少なくなっています。そもそも、請求の手続きをしないと年金は受け取ることができません。もしや、あなたのご両親の年金に“請求漏れ”や“貰いそびれ”はありませんか? 高齢の親御さんに代わって、子どもや孫が『請求漏れ年金』を発見し、貰いそびれた分を受け取るケースもあるんです」
そう教えてくれたのは、“消えた年金”とよばれる「請求漏れ年金」を’96年から現在に至るまで6千件以上も見つけ出してきた“年金探偵”こと、社会保険労務士の柴田友都さんだ。
この“消えた年金問題”とは?
「’97年に、国民年金、厚生年金、共済年金それぞれの年金番号が、公的年金として一括管理するために、『基礎年金番号』として統合されました。ところが、紙台帳の情報をコンピューターにデータ入力する作業がずさんだったために番号がきちんと統合されずに、誰のものかわからない年金記録が5千95万件も発生していたことが’07年にわかったのです」(柴田さん、以下同)
日本年金機構は、年金記録の再確認を加入者や受給者に呼び掛けてきたというが……。
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「’24年3月の段階で、誰のものか明らかになっていない『請求漏れ年金』が、1千713万件もあります」
消えた年金のうち、およそ3分の1は“持ち主”がわからないままの状態にあるのだ。
「年末年始に実家に戻られたら、ご両親に、日本年金機構から、『あなたのものと思われる……』という通知が以前に届いていなかったかを聞いてみましょう。
’10年ごろから“該当するであろう人”に通知が出されていますが、そのうちじつに8割が放置されているのです」
本誌が’17年に柴田さんに取材し「請求漏れ年金」を発見したケースを紹介したところ、大きな反響が寄せられた。現在でも、柴田さんには、1年間で1千件以上の問い合わせがくるという。
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「実際に調査をして、年間80件ほど“消えた年金”が見つかっています。主に、転職を経験した人、勤めていた会社が倒産、合併、社名変更したという人に多いです。 さらに女性の場合は、結婚前に働いていたのに貰っていない、夫を亡くしたが遺族年金を貰っていないなどのケースがあります」
近年は、こうした高齢の親や亡くなっている祖父母の“貰いそびれ年金”を、子供や孫が見つけるパターンが多いという。
今回は、“年金探偵”の柴田さんが、本誌読者に向けて「親の『貰いそびれ年金』チェックシート」を作成してくれた。
「チェックシートをもとに『昔は、どこに勤めていたの?』『転職していない?』。お母さんには、『結婚前の職場は?』と、聞いてみましょう。会社名や業務内容、勤務地や時期がわかれば探し出すことは可能です。特に戦中・戦後の混乱期に働いていた方は、年金が埋もれている場合があります」
1つでも当てはまる項目があれば、貰えるはずだった年金を受け取るチャンスがあるかも!年末年始、実家で祖父母や両親の年金に「貰いそびれ」がないか確認してみてはいかがだろう。
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【解説してくれたのは…】
柴田友都さん
しばたゆういち・年金コンサルタント。社会保険労務士。1948年生まれ。金融機関に勤務するなか、請求漏れ年金の相談キャンペーンを企画。退職後、産友社会保険労務士事務所を開設。「消えた年金」の相談に従事。調査費用は無料で、見つかった場合は年金額の20%と手数料を受け取る。これまで6千件以上の請求漏れ年金を見つけ出し「年金探偵」と呼ばれている。
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