まさに全部入りフラッグシップでしたよ、「α1 II」は。
そもそも、フルサイズセンサーのミラーレス一眼で最初に「フラッグシップ」と銘打って登場したのがソニーの「α1」で、2021年3月のことだった。
その後、ニコンのフラッグシップ機「Z9」が21年12月に登場。キヤノンは少し遅れて24年11月に「EOS R1」を発売した。そのタイミングで、ソニーはα1の後継機「α1 II」を出したのである。
「うちは一歩先を行きますよ宣言」をした感じだ。
|
|
●α9 IIIとα1 IIの違いと共通点は?
α1 IIのボディデザインは基本的に1月に発売された「α9 III」とほぼ同じ。寸法も同じ。重さはちょっと違う。
ボディが同じなので縦位置グリップも共通だ。
ただ、大きく異なるのはセンサー。
α9 IIIは新開発のグローバルシャッターで電子シャッターで撮影してもまったく歪まないし、高速でのシンクロ撮影もできる。シャッタースピードも最速で1/80000秒だ。その代わり、画素数は2400万画素で、ISO感度も拡張ISO感度でISO51200までだ。
|
|
α1 IIは先代と同じ積層型センサーを採用。グローバルシャッター方式は搭載されなかったが、α9も3代目で搭載されたので、来るとしたら次のα1 IIIかも、と思わないでもないけど、根拠はありません。
で、メカシャッターも搭載している。ローリングシャッター形式ではあるが、高速読み出しが可能な積層型で歪みは最小限だ。
実際に電子シャッター時の歪みはどうなのか。α9 IIIと積層型ではない高画素で積層型ではない「α7R V」(高画素機は読み出し速度で不利ですよという例)と最新の積層型センサー搭載機EOS R1で撮り比べてみた。
α1 IIは高画素ながらほぼ歪みが出てないのは素晴らしい。今回の作例はすべて電子シャッターで撮っているけれども、まず問題は感じなかった。さすがだ。
そして画素数は約5010万画素とα9 IIIの2倍強あり、ISO感度も拡張ISO感度で最高ISO102400まで上げられる。
|
|
感度別に比べてみると、確かに超高感度時の画質はα1 IIの方が上で、ディテールがより出ていた。高画素ながらα9 IIIより高感度なのだ。
シャッタースピードは最高で1/32000秒、連写速度は電子シャッター時で最高秒30コマ。ここの数字はα9 IIIには及ばないが、十分に高速だ。
つまり、速さという点でのみα9 IIIに一歩譲るも、α9 IIIに比べて高画素で高感度に強いカメラなのである。
と、ここで終わってもいいのだけど、実際にあれこれ使ってみてどうだったのか。
前述した通り、ボディはα9 IIIと変わらない。縦位置グリップが別売りのためフラッグシップ機としては非常にコンパクトながら、グリップはしっかりしていて握りやすいし、ダイヤルやボタンの操作感もさすがフラッグシップ機で扱いやすいし、レスポンスもすごくいいので気持ちよく使える。
高画素+速さ+AIというので、まずはその3つを体感できる被写体として鳥を選んでみた。使ったレンズは「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」。
AIを使った機能の筆頭は被写体検出AF。先代のα1から大きく進化した点であり、基本的にα9 IIIと同等であるが、あらたに認識対象として「AUTO」が搭載された。
各被写体を自動で認識してくれる機能だ。α1よりもむしろ、α7Cシリーズなどエントリーからミドルクラスで歓迎されそうである。将来はそれらにも搭載されるのだろう。
続いて連写系。ドライブモードは左肩のダイヤルで変更する。α9 IIIと同様、単写の次が超高速連写で徐々に連写速度が落ちていくという構成で、高速連写推しなのがよく分かる。
高速連写の速度は4種類でそれぞれ速度を設定可能。電子シャッター時はプリ撮影にも対応し、0.03秒から1秒まで。0.1秒以下の細かい数値は人間のレリーズタイムラグをなくすために使えそう。
そしてあれこれ野鳥向きのセッティングにして撮影した時の画面が次の写真だ。連写速度はMID。被写体検出はオートでAF-ONボタンを押してAFを作動させている(ユリカモメの瞳が緑色で認識されている)状態だ。ユリカモメの左下には「プリ撮影中」を示すアイコンがあり、撮影中はこれが全部緑になる。
連写系ではさらに「連写ブースト」も注目。デフォルトではC5ボタンに割り当てられている。撮影しながら中指を伸ばせば押せる(指が短い人だと遠いけど)位置にある。
これを押すと、連写アイコンが連写ブーストアイコンに変わり、押してる間だけ超高速連写をしてくれるのだ。指がそれを覚えるまではとっさに押せなかったりするけど良いアイデアである。
O8000)
ソニーが得意とするリアルタイムトラッキングも優秀でよい。こちらは杭に向かって飛んできたユリカモメ(後ろにいる方)をリアルタイムトラッキングで追いながら連写した中の1枚。手前は杭から追い出されたユリカモメ。
ユリカモメばかりでもアレなので野鳥をもう1枚。
今度はちょうど鳴いた瞬間のアオサギだ。じっとしててくれたのでシャッタースピードを落として狙ってみた。
ファインダーのレスポンスもよくて見やすく、被写体も追いやすい。ファインダーは約944万ドットで倍率は0.9倍。眼鏡をかけてたり新しい深型のアイピースカップ(従来型と両方付属する)を使うときは、アイポイントが33mmまで伸びる縮小モードも用意されている。眼鏡ユーザーとしてはありがたい仕様である。
続いては猫。ちなみに後ろ頭でもちゃんと認識してくれました。
レンズはFE 70-200mm F4 Macro G OSS II。ハーフマクロにも対応したいい感じの望遠ズームレンズだ。
猫を撮るときにさっとモニターをチルトして目線を下げられるのもありがたい。
背面のモニターはチルト+バリアングルの4軸構造で、用途によって自在に使い分けられるのだ。全部のモニターがこれになればいいのに。
さすがハイエンド機だなと感じるのは、ダイヤルのほどよい重さやボタンを押したときの感触、シャッターボタンの感触といったモノとしての良さだ。各種操作のレスポンスもいいので、とっさの設定変更にもすぐ対応してくれる。
操作系も最新のα9 IIIに準じており、先代よりも使いやすく感じる。先代よりちょっと貫禄がでた感じ。
ここでちょっと操作系の話。上面をみると、左肩にフォーカスモードとドライブモード。右肩に撮影モードダイヤルと電子ダイヤル2つ。右端のダイヤルは露出補正がデフォルトで割り当てられている。
ダイヤルが不用意に回らないようロックされたり、ボタンやダイヤルの重さがちょうどよかったりするのもいい。
背面もα9 IIIと同様だ。最新のαと同じくタッチパネルを使ったメニューを出すこともできる。
ただ、十字キーの右がISO感度ってのはちょっとカスタマイズで変更したいかも(親指の付け根で不用意に押してしまったことがあったので)。
では人物の撮影といこう。
取り出したるレンズは「FE 28-70mm F2 GM」。新しく発表された大口径のズームレンズだ。
美肌効果はオン(強度は中)で撮っている。
さらにクリエイティブルックのSHを使ってポートレート。ほわっと明るくハイキー気味の写真を撮ってくれるルックだ。逆光時に露出補正を使わずあえてクリエイティブルックをかけてみた。
大口径なので夜も使ってみたい。絞り開放でクリスマスツリーのイルミネーションを背景にぼかして入れた夜のカット。
さらに夜景。こちらは光条をキレイに出すべくF11まで絞って。
このレンズはけっこう寄れるので、絞り開放でぐぐっと寄ってみた。
最後はいつものガスタンクで。
●バッテリーの貧弱さは運用でカバーか
メディアはCFexpress Type AとSDカード(もちろん、UHS-II対応)のどちらでも使える。
反対側には5つの扉があり、シンクロ端子、LAN端子、USBやHDMIなど必要な個所だけ開けて使える。
フラッグシップ機だけあり、様々な現場に応じたワークフローに対応した構成だ。
一方で少々心許なく見えるのはバッテリー(CIPA規格でファインダー利用時は約420枚)。αシリーズはα7C IIからα1 IIまで同じ「NP-FZ100」を採用していることもあり、非常に便利である反面、より消費電力が大きいフラッグシップ機は不利なのだ。
そこはボディのコンパクトさとの兼ね合いもあり、USB PDで給電しながら、あるいはバッテリーを2個装着できる縦位置グリップを使うなど運用でカバーすることになるだろう。むしろ、スナップ向けの小型機(α7C IIとか)、スタンダード機(α7 IVとか)からフラッグシップ機までバッテリーが統一されているのがさすがで、複数のαがある場でも運用しやすい。
価格は99万円(ソニーストア価格)とほぼ100万円コースなのだけど、全体の質感といいシャッターの感触といい性能といい、高画素で高速で賢い最先端のカメラというさすがフラッグシップという製品だったといっていい。
撮影していて実に快適で魅力的だったのだ。ちなみに、α1 II発売に伴い、先代のα1は88万円(ソニーストア価格)に値下げされております。
|
|
|
|
Copyright(C) 2024 ITmedia Inc. All rights reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。
iPhone14とSE、EUで販売終了に(写真:ITmedia NEWS)35
iPhone14とSE、EUで販売終了に(写真:ITmedia NEWS)35