「2ならば1+1」は正しい?SNSで議論を呼んだ“中学2年生の疑問”に東大生5人が回答

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2024年12月29日 16:01  日刊SPA!

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―[貧困東大生・布施川天馬]―
 みなさんは1+1の答えがわかりますか? 当たり前ですが、この答えは2ですよね。馬鹿にするな、と思われたかもしれません。それでは、「2ならば1+1」は正しいでしょうか?

◆SNSで議論を呼んだ「2ならば1+1」

 こうなると、途端に意見が分かれます。先日、X(旧Twitter)にて、「数学の先生が『2ならば1+1』は偽だといっていたが、自分は真だと思う」という投稿がなされ、反響を呼びました。

 先生は「2+0や-1+3などの反例があるから、これは偽だ」と言いますが、投稿者は「1+1は『1と1の和によって定義される数』なのだから真」と返したそうです。

 Twitterのポストをさらっても、真だ、偽だと様々な意見がありました。確かに一見すると両方の言い分に一理ありそうです。一見すると小学生にすら理解されそうな問題が、多くのユーザーの胸をざわつかせている。いつかの「18÷0」の問題のようです。

 今回の問題は、どうやら中高数学の範囲で解こうとしているか、大学数学の範囲まで見据えているかが一つの争点になりそうでした。そこで、今回は大学で数学をある程度勉強した学生何人かに「2ならば1+1」は正しいかを聞いてみました。

◆理系東大生5人の答えは

 私は今回5人の理系東大生に話を聞きましたが、彼らはそろって「わからない」と返答してくれました。それも、わからないというのは、「理解不能」の意味ではなく、「真偽を判断しかねる」のだといいます。

 そもそも、元となる投稿では「2ならば1+1」を命題のように扱っていました。ですが、これは正確には命題ではないのだそう。

 そもそも命題とはざっくりいえば「真偽が決定できる文言や式」のことを指しますが、そのためには「2」や「1+1」は命題とすることはできません。

 真偽を確かめるためには、元となる文章が命題である必要がありますが、そもそもが命題でないのだから、真偽決定以前の問題にあるのです。

 仮にこれが「x=2ならばx=1+1」のような形であれば、これは命題と呼ぶことができます。そして、この命題は真です。おそらく、投稿者はこのような命題を意図して発言されたのだと考えられます。

◆先生はなぜ「この命題は偽だ」と考えたのか

 一方で、先生はなぜ「この命題は偽だ」と考えたのでしょうか。これも東大生何人かに聞いてみたところ、「2+0や3-1などはすべて数値的には同意だが、これらを反例とするためには、ひとつひとつの式自体に意味がある状況が想定される」と答えてくれました。

 つまり、1+1も2+0も3-1も全部数値としては2になるのですが、「これらのどれかがよくて、それ以外がだめ」と答えるためには、一つ一つの式に違いがなくてはいけません。つまり、1+1と2+0と3-1を区別するような状況ならば、「1+1以外にも表現方法があるから偽だ」と答えられる。

 例えば、そのような命題としては、「x+y=2ならばx=1,y=1である」などがあります。この場合、xやyの中身は決まっておらず、条件もないため、「どんな数字を入れてもいい」といえます。

 そうなると、「いやいや、x=2,y=0とかのパターンもあるから、x=1,y=1と断じるには早計じゃないか」と反論でき、この命題は偽とわかる。

 もしも先生がこのような命題を想定していたのであれば、確かに偽であると反論するでしょう。

◆前提の省略を怠らないことが大切

 蓋を開けてみれば、結局「前提条件の確認があいまいなままで話を進めた結果のすれ違い」が原因と判明した、今回の騒動。

 今回は数学を基にして登場しましたが、このようなすれ違いは日常生活や仕事においても多々現れるはず。些細なすれ違いが、大きな騒動へ発展することも珍しくありません。

 今回の議論の発端も、結局「2ならば1+1である」という命題ではないものを命題として扱った結果。

「自分の中では当たり前に感じているものが、他人にとってはそうではないかもしれない」と常日頃から考え、前提の省略を怠らないようにすべきという教訓を得られました。

 ただし、元の投稿を拝見する限りでは、「2ならば1+1」と問題を提起したきっかけ自体、数学的なセンスに光るものを感じます。

 それもそのはず、投稿者はなんと中学二年生で数学検定一級を取得した秀才。素晴らしい才能を持つには違いありません。

 勉強しているがゆえに周囲とのレベルが合わなくなるジレンマはありますが、ぜひ今後とも数学の才能を磨いていっていただきたいと思います。

―[貧困東大生・布施川天馬]―

【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)

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