【100年に一人の逸材・棚橋弘至登場】『キン肉マン』大好き作家・燃え殻×爪切男の先月の肉トーク!! <番外編前編>【コミックス派はネタバレ要注意!】

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2024年12月30日 00:10  週プレNEWS

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燃え殻、爪切男「先月の肉トーーク!!」、24年最後の更新となる今回のスーパースペシャルゲストはまさかの新日本プロレス「100年に一人の逸材」棚橋弘至が登場

先月連載した『キン肉マン』を批評する「先月の肉トーーク!!」。24年最後の更新となる今回のスーパースペシャルゲストはまさかの新日本プロレス"100年に一人の逸材"そして社長である棚橋弘至!

燃え殻さん、爪切男さんも批評を忘れ、もはやただのファンになっておりました!! 先月の連載の話は後編でちょっとします......。

***

●出会いは、プロレスより先に『キン肉マン』

爪切男(以下、爪) 棚橋さんの『キン肉マン』との出会いは、いつ頃だったんですか?

棚橋弘至(以下、棚橋) 小学生の時ですね。もうテレビ放送があって......いや、『ジャンプ』で読んだのが先だったかな? 僕らの世代だと、キンケシがとにかく流行ったので、弟と一緒にでっかい洗濯カゴにいっぱいのキンケシを集めてて、たくさん持ってるのがうれしかったですね。

 どういうところが好きだったんでしょうか、『キン肉マン』の。

棚橋 まず、ビジュアルのかっこよさですかね。筋肉への憧れっていうのは、小さい頃の男子ならありますんで。あとはキン肉マンが、普段はドジだけどいざという時はむちゃくちゃ強い、がんばれる人っていうのが、カッコよく感じたんじゃないですかね。

燃え殻(以下、燃) プロレスはいつ頃からですか?

棚橋 小さい頃、祖母がプロレス好きで、一緒に新日本の中継を観ていて。まだ金曜20時の放送だった頃ですね。猪木対国際軍団の闘いをすごく覚えていて。ラッシャー木村、アニマル浜口、寺西勇と猪木の変則マッチを観て、「なんで1対3なんだろう?」と。

燃・爪 (笑)。

棚橋 「でも猪木、勝つんかい!」っていう。それは覚えてますね。

 『キン肉マン』とプロレス、どっちが先だったんですか?

棚橋 どっちだったかなあ......でも、小さい頃のプロレスの記憶は、ほんとにおぼろげなので、ちゃんと好きになったのは、『キン肉マン』のほうが先ですかね。

 僕もなんです。最初は『キン肉マン』から入って、しばらく経ってから金曜20時の新日本プロレスを観て、「あ、『キン肉マン』みたいなものが、現実にもあるんだ?」とびっくりして。マスク被ってる人がいるし、曲に乗って登場するし。非日常が楽しかった。

 子供の頃、特に好きだった超人は誰ですか。

棚橋 ロビンマスクです、今日もTシャツを着てきたように(※新日本プロレスと『キン肉マン』がコラボして作った「棚橋弘至×ロビンマスク」Tシャツ)。あと、バッファローマンですね。僕、授業中にノートとかプリントの裏に、『キン肉マン』の超人たちをよく描きまくていて。やっぱり、ロビンマスクが一番うまかったです。

 描きやすいんですよね。

棚橋 どう描いても、わりとかっこよく描けるっていうね。ウォーズマンは逆に難しい。

 キン肉マンも実は難しいですよね。

棚橋 描く人それぞれで、クセのあるキン肉マンができちゃって。ラーメンマンも描く人によって個性が出るし。画風も変わりましたしね。

 そう、どんどん画風が変わっていきましたよね。

●棚橋前・棚橋後、「愛してまーす!」の分水嶺

 棚橋さんご自身の体も、(夢の)超人タッグ編ぐらいの頃の『キン肉マン』の画風と近いと、僕、ずっと思ってて。『キン肉マン』に棚橋さんが出てきても、おかしくないような。

棚橋 (笑)。ありがとうございます。プロレスっていうのは、キャラクタービジネスでもあるので、ロン毛に派手なコスチュームはずっと変えずにいましたね。

 ああ、観た人が覚えやすい。

棚橋 アニメだと、1話観ただけで、誰がヒーローか、誰が悪者か、わかるじゃないですか。僕らはそれを、入場から退場までの間にやり遂げなきゃいけないので。だから、まず見た目でイントロデュース(紹介)するっていう僕のコスチュームは、大正解だったと思います。

 なるほど。

 そうか、プロレスファンで、歴史を把握して観てくれる人もいるけど、ポイントで今だけ観る人もいますもんね。

棚橋 特に地方会場なんかは、詳しくないけど初めて来たとか、家族に連れられて来たっていうお客さんもいる。そういう人もグッとつかみたいので。試合後のコメントも、何かキーフレーズを挟むと、ウェブのトピックスに切り抜きが上がったりするので。だからこそ、プロレスっていうジャンルを飛び越えるような言葉を選んで使ってましたね。僕は、特に『仮面ライダー』が......『キン肉マン』と競合ではないですよね?

燃・爪 (笑)。

棚橋 僕は『仮面ライダー』も好きだったので、『仮面ライダー』のフォルムをコスチュームに落とし込んだり、試合後に作品のセリフをそのまま使ったり。「さあ、おまえの罪を数えろ!」とか。『仮面ライダー』のファンは若年層が多いので、そういう方がプロレスを観てくれるきっかけになったらうれしい、というのがあって。で、「『仮面ライダー』好きだ、好きだ」って言ってたら、僕、映画に出ましたからね。

 そうですよね。 (*2016年12月公開の『仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー』に出演)

棚橋 怪人役でしたけどね(笑)。

 『キン肉マン』も「へのつっぱりはいらんですよ」とか、ジャンルを飛び越えるフレーズがありますよね。

棚橋 僕が勝手に思ってることですが、プロレスのトップに立つための三種の神器があって。決め技、決めセリフ、ビジュアル、だと思うんです。猪木さんはその全部がパッと浮かぶじゃないですか。あのビジュアル、「元気ですか!」「1、2、3、ダーッ!」、延髄斬り、卍固め。全部浮かぶけど、それを僕が覆(くつがえ)させてしまったので。

猪木さんから後も第三世代(*)までは、全部「1、2、3、ダーッ!」だったんですよ、。でも僕から「愛してま〜す!」になって。「愛してま〜す!」で締め、「カネの雨が降るぞ!」(オカダ・カズチカ)で締め、「ロス・インゴベルナブレス・デ・ハポン!」(内藤哲也)で締め。なので、棚橋前・棚橋後で、大きく変わった。
*新日本プロレスの第三世代は、天山広吉、小島聡、永田裕志、中西学の4選手が中心と言われている

 そこで変えるって、勇気がいりますよね。

棚橋 ええ。最初に「愛してま〜す!」って言った時は、シーン......でしたからね。

 覚えてます、覚えてます。最初はなんでもそうですよね。内藤さんもそうだった。

棚橋 東京ドーム大会の記者会見で、最初に「100年に一人の逸材」って言った時も、シーン......ってなりましたからね。

 シーン......ってキツいなあ。トラウマになりそう。

棚橋 武藤(敬司)さんとの対戦だったので、武藤さんは、天才っていうイメージじゃないですか。天才に勝る何かないかな、と考えて。辞書で調べたら同義語で「逸材」って言葉があったんですよ。その当時『仮面ライダーキバ』で、紅音也(くれない・おとや)が「1000年に一人の天才」って言ってたので。1000年はちょっと言いすぎだから、100年にしようと思って。武藤さんとの会見で「100年に一人の逸材、棚橋です」って言ったら、シーン......と(笑)。

 それで心が折れないのが、すばらしいです。

棚橋 鉄メンタルなので。ブーイングも......今、海野翔太が浴びていて。

 はい、すごいですよね。

棚橋 プロレスファン特有の試練にぶつかっていますけど。でもオカダ、内藤、棚橋、さかのぼれば武藤さんもちょっとあったんですけど。でも、僕が一番長いんですよ。

 ああ、それはそうだったかも。

棚橋 2006年に始まって5年間ぐらいブーイングされていました。なんでオレのよさがわからないんだろう、わかんないヤツはモグリだ、と思っていたんで、なんとか乗り越えられたんですけど。

 そこで「うっ...」てなったりしなかったんですか?

棚橋 最初はなったんですけど。一所懸命がんばって盛り上げていきたいのに、なんでブーイングなんだろう、と思って。長年音響をやっているスタッフに相談をしたら、「タナくんはアントニオ猪木だよ、そのままでいいよ。ブーイングもタナくんが勝ち取ったリアクションだから」と言ってくれて。「そうか、俺はアントニオ猪木だったのか」と、まんまと乗せられまして。

 そこで乗れるのもすごい。

棚橋 猪木さんの本名の猪木寛至と、僕の棚橋弘至、至の字が一緒じゃないですか。父が猪木さんのファンで、「至」を付けたみたいで。生まれながらにしてプロレスラーになることが決まっていたんだな、名付けって怖いなと思いました。

 ブーイングも自分が引き出していると思えたんですね。

棚橋 そうです。僕がブーイングをもらうってことは、対戦相手に声援が行くんですよ。相対的に見れば試合は盛り上がっているので、なら、いいのかなと。

*この記事の後編は、明日12月31日(火)17時に配信いたします。

棚橋弘至(TANAHASHI HIROSHI)
1976年生まれ、岐阜県出身。99年新日本プロレス入門。2006年にIWGPヘビー級王座を初戴冠、今では定着した「愛してま〜す!」もこのころに誕生した。00年代の「プロレス冬の時代」を支え、現在のブームを生み出した立役者。23年12月には新日本プロレスリング株式会社の代表取締役社長に就任した。26年1月4日での現役引退も発表している。新日本プロレスの年間最大ビッグマッチである1.4「WRESTLE KINGDOM 19 in東京ドーム」では、「棚橋弘至ファイナルロード・ ランバージャックデスマッチ」として、棚橋の引退会見にも乱入してきたEVILとの対決が決まっている

燃え殻(MOEGARA)
1973年生まれ、神奈川県出身。働きながら始めたツイッターでの発言に注目が集まり、作家デビュー。『ボクたちはみんな大人になれなかった』(新潮社)、『すべて忘れてしまうから』(扶桑社)、エッセイ集『それでも日々は続くから』(新潮社)『これはただの夏』(新潮社、8月28日に文庫版発売)、『ブルー ハワイ』(新潮社)など多数の著作がある。最新著は『明けないで夜』(マガジンハウス)。ドラマ『あなたに聴かせたい歌があるんだ』(漫画:おかざき真里/扶桑社)はHuluで配信中。出演中のラジオ番組 『BEFORE DAWN』(J-WAVE、毎週火曜26:00〜27:00)もチェック

爪切男(TSUMEKIRIO)
1979年生まれ、香川県出身。2018年『死にたい夜にかぎって』(扶桑社)で小説家デビュー。2020年、同作が賀来賢人主演でドラマ化。『きょうも延長ナリ』(扶桑社)が発売中。集英社発のWebサイト『よみタイ』で好評を博した、美容と健康にまつわるエッセイ『午前三時の化粧水』が来春書籍化予定。ドライバーWebで『横顔を眺めながら 〜爪 切男の助手席ドライブ漂流〜』を連載中。主演:木村昴でのドラマ放送でも話題となった『クラスメイトの女子、全員好きでした』が文庫化

取材・文/兵庫慎司  撮影/榊 智朗 ©ゆでたまご/集英社

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