箱根駅伝2025 全日本8区で衝撃の走りを見せた駒澤大・山川拓馬 5区出走となれば「山の神」争いのトップ候補

1

2024年12月31日 07:00  webスポルティーバ

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

2025年1月2日・3日に行なわれる第101回箱根駅伝(217.1km/往路107.5km・復路109.6km)区間エントリーが12月29日に発表された。

レースの当日変更を見越した補員の顔ぶれを見ると、優勝候補の一角・駒澤大は、今季好調で2区と5区の両区間で候補に挙がっていた山川拓馬(3年)は、おそらく2年ぶり2回目となる5区出走の可能性が高くなった。

今年の全日本大学駅伝8区で見せた衝撃の走りは、山川本人のみならず、チーム全体にも大きな自信を植えつけた。

2年ぶり9度目の箱根制覇、学生三大駅伝では通算30目の優勝に挑む駒大のカギを握るひとりとして、どんな走りを見せるのか?

【前回箱根の悔しさ胸に衝撃の走りでチームに貢献】

 前回の箱根駅伝、当時2年生だった駒澤大の山川拓馬は思わぬ悔しさを味わった。

 4区をまかされた山川は、3区で先頭に立った青山学院大から4秒遅れの2位で平塚中継所を出発した。

「本当は最初から突っ込むはずだったんですが、思うように走れず、じりじりと離される結果になり、そこで勝負が決まってしまったところがありました。

 自分のなかで思い描いていた走りができず、チームに迷惑をかけてしまいました」

 全日本大学駅伝のあとに恥骨を痛めてしまい、箱根まで思うように練習を積めなかった影響があり、青学大の佐藤一世(現・SGホールディングス)に1分26秒差にまで広げられてしまった。

 駒澤大はその後、巻き返すことが叶わず、2年連続の三冠と箱根駅伝連覇を逃した。

「『箱根の借りは箱根で返すしかない』っていう言葉を藤田(敦史)監督から言っていただいたので、しっかりと箱根の借りを返し、総合優勝に貢献できるような走りをしたい」

 そう誓って、大学3年目のシーズンを迎えた。

 恥骨のケガが長引き、シーズンインは遅れたが、そのぶん、フィジカルを強化。フォームを見直しバランスを整え、故障しにくい体をつくる取り組みを新たに始めた。

 そして、7月の関東学連網走記録挑戦会で10000m28分36秒98の自己ベストをマークすると、ひと夏を越えて駅伝シーズンはさらに進化した姿を見せた。

 出雲駅伝では3区をまかされると、7秒前にスタートした青学大のエース・黒田朝日に追いつき、熾烈な先頭争いを繰り広げた。次の中継所には黒田に先着を許したが、区間タイムでは勝利し、城西大のヴィクター・キムタイに次いで区間2位と好走した。

 圧巻の走りを見せたのは、全日本大学駅伝の最終8区だ。3位でタスキを受けた山川は、最後まで優勝をあきらめずに果敢に前を追った。優勝した國學院大には届かなかったものの、2分37秒差があった青学大を逆転し2位でフィニッシュした。記録は日本選手歴代2位の57分9秒。早稲田大の渡辺康幸が1995年にマークした56分59秒の日本選手区間最高記録にあと10秒まで迫る激走だった。

 これほどの快走にも、山川は「目標としていた56分59秒には届かず、練習がまだ足りていないと感じた」と反省を口にしていた。それほど好調をキープし、駅伝シーズンを送れているということだろう。

 もちろん昨季までも強い選手だったが、明らかに今季の力はこれまで以上。その片鱗をふたつの駅伝では見せた。

【強者揃いの山上り決戦への決意】

 雪辱を誓う今回の箱根駅伝、山川は「希望区間は2区か5区です」と話していた。一方、藤田監督は、12月上旬の箱根駅伝トークバトルで「全日本の走りを見ると、2区をやらせてみたいという思いもあります」と、エース区間の2区での山川の起用を示唆していた。1年時に区間4位と好走した5区か、それとも花の2区か。山川をどの区間に起用するのかは、駒大の王座奪還へのカギのひとつだ。

 結局、12月29日の区間エントリーでは、山川は補欠に登録された。まだいずれの区間の可能性も残すが、2区にはエースで主将の篠原倖太朗(4年)の名前がある。おそらくは篠原にアクシデントがあった場合のバックアップも兼ねての補欠登録であり、何事もない限りは、当日変更で5区起用が濃厚だ。

 上りを得意とする選手だけに、2区の権太坂と残り3kmからの急坂をすいすいと攻略する山川も見てみたいが、2区以上に1区間でタイム差がつきやすい5区・山上りのほうが、山川の走りは生きてくるはずだ。なおかつ、前々回の経験があり、計算がしやすいのも5区に起用するアドバンテージだ。

 12月13日に行なわれた合同取材では、山川は「2区か5区」と言いつつも、やはり5区への思いが強いように感じた。アンケートの希望区間にもしっかり"5区"と書いてあり、「1年生のときのリベンジと、山の神になりたい」と意気込んでいる。

 2回目の5区を走るイメージもできている。

「1年生の時に走った時は、"上りで詰めて、下りで離す"っていうレースをしたんですけど、今回5区を走る場合は、逆に"前半で離すような走り"をしたい」と、2年前とは違ったレースを目論む。

 5区での目標は68分台の区間新記録を掲げる。

 とはいえ、今回の5区は、山川のほかにもなかなかの強者ぞろいだ。

 青学大は、10000m27分台に突入した若林宏樹がエントリーされた。大学で競技に区切りを付けるだけに、最後の箱根駅伝への思い入れも強い。

 早稲田大の工藤慎作(2年)は、出雲の6区で駒大の篠原や青学大の太田蒼生(4年)を上回る区間2位。全日本でも、山川の1分遅れだが、区間3位と立て続けに好走しており、走力は昨季以上だ。

 また、現時点では補欠登録だが、城西大の斎藤将也(3年)、創価大の吉田響(4年)も5区出走の可能性が高い。

「同じ区間を走る選手全員がライバル。そのなかでも、しっかりと区間賞、区間新を狙って走ることが大事」と山川は話しているが、他大学の意識する選手には、10000m27分台を持つ城西大の斎藤の名前を挙げている。

 これほどの実力者たちに圧倒的な差をつけて勝利し、"山の神"と呼ばれるような活躍を山川が見せたとき、駒澤大の2年ぶりの優勝も見えてくる。

    ニュース設定