サッカー日本代表の2025年はどうなる? 予選首位突破でも見えない本大会までの強化の道すじ

2

2024年12月31日 07:20  webスポルティーバ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

日本代表ゆく年くる年〜杉山茂樹×浅田真樹(後編)

 W杯予選で首位を独走する一方、メンバーの固定化をはじめ将来への不安もぬぐいきれない日本代表。予選突破を確実にした2025年はどんな年になるのか。サッカージャーナリストの杉山茂樹氏と浅田真樹氏が語り合った。

浅田 来年の話をすると、間違いなく3月の予選で本大会出場が決まります。6月の予選2試合は消化試合になり、秋にアメリカに遠征するという話もありますが、どんな試合が組めるのかわからない。ヨーロッパで親善試合をやることになるのか。実は6月に行なわれるゴールドカップに出るのではないかという噂はあって、CONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)のプレスリリースを見ると、招待チームを入れるということはアナウンスされているので、可能性はなくはないのかもしれない。そういうことをやっていかないと、もう真剣勝負に近い形の試合はできないのかもしれません。

杉山 ヨーロッパで試合をするといっても、ヨーロッパの国は予選の真っ最中で、ベストメンバーが揃うアフリカのチームとできるかどうか。できても年内にせいぜい1回じゃないですか。

浅田 ちなみに6月の予選2試合はホームでしょう。ますます新しい選手を呼べなくなって、ベストメンバーのお披露目の場になっちゃったりして。

杉山 予選は楽勝。いい選手が次々と出てはヨーロッパへ行っちゃう。そのヨーロッパからはひどく離れている......日本は世界であまり例のない国になったんですね。要するに日本はもう、手元に代表選手を集めて強化するという時代ではないということ。そうなると、代表監督の役割はセレクターになる。今や日本の代表監督は、戦術がどうのこうのというより、交通整理がうまくできる人でないといけない。戦術は基本、選手たちがヨーロッパでやっているのと同じことをやっていれば、そんなに問題ない。森保監督は自分の色を出すことなど考えず、ずっとヨーロッパに行ってるぐらいのほうがいいと思います。

 現在のベストメンバーのうち、1年半後の本大会では何人かはケガをしているし、何人かはクラブでポジションを失って調子を落としている。いまベストを決めること自体が怖いことなんです。どうすればいいかと言えば、ベストメンバーが30人ぐらいいて、誰が出ても大丈夫な状態にすること。勝手にベストな11人を決めて間口を狭くするのは非常に危険なこと。たぶん選手のレベル的には紙一重。だから監督は「今回はこうします」「この人は選びません」と素直に言えばいい。

【新形式のW杯本大会】

浅田 素直な説明は必要ですね。三笘を招集したのはいいけど体調不良だったということがあったけど、要は「とりあえず1回、呼びました」というアリバイ作りの招集だったのかと邪推してしまいます。

杉山 この先の話でいうと、W杯予選が断トツの首位でも本大会は別でしょう。しかも仕組みが変わった今回は、ベスト8に進出するのが大変になると思う。今までは組み合わせに運があればベスト8が見えたけど、今回は決勝トーナメントが1試合多くなるから、そんなにやりやすい相手ばかりこない。ブラジルと当たる可能性はベスト32でもベスト16でもある。

浅田 グループリーグではトップクラスでない国と当たる可能性が高そうです。カタールW杯で日本はドイツとスペインに勝っているけど、コスタリカに敗れている。コスタリカみたいな国がグループリーグに集まってくる可能性もある。

杉山 戦術的な話をすると、森保ジャパンのサッカーはドイツやスペインを念頭に置いているようなところがある。逆にあのサッカーはコスタリカに危ない。強いチームには嫌がられるかもしれないけど、弱いチームの餌食になりそうなサッカーです。

浅田 ヨーロッパだとセカンドクラスの国と当たる可能性が高いわけですが、そういうチームと試合をする機会もない。

杉山 ヨーロッパのセカンドクラスはレベルが上がっています。スウェーデンとかノルウェーとか。チャンピオンズリーグを見ていても、レベルが低いと言われていた国出身の若い選手がたくさん出ている。

浅田 メンバーで言うと、逆に、武藤嘉紀や大迫勇也といった選手をもう1回代表に呼ぶという流れができると、ヨーロッパから帰ってきやすくなる。武藤は今季のJリーグで明らかにいいパフォーマンスをしていた。帰国は都落ちで代表にも呼ばれなくなる、ではなく、円滑に戻れる仕組みとして考えてもいいかも。海外に行くのはもうしょうがない。ただ、行ってみて試合に出られないなら帰ってくればいいという流れを作って、力があれば代表にも入れる、と。

【欧州のクラブからどう見られているか】

杉山 選ばれ方は何でもありでいいと思うんです。というか、見る側も代表にベストを求めすぎている。「●●が落選」と言われるけど、落選という言い方自体が間違っている。別に選挙で落ちたわけではなく、ただのパーツの入れ替えにすぎないのだから。実際、ヨーロッパの選手は呼ばれなかったら「ちょっとラッキー」と思っているかもしれませんよ。呼ばれても、2試合で5分しか使われず、ただ時差ぼけになってクラブに戻ってくるとか、内心ではどう思っているか。

浅田 ひいては、もしかしたらこれからヨーロッパに行きたい選手たちの足かせになるかもしれません。「日本人選手は、すぐ『強制力があるから』と言って、毎回、代表に招集されるから、獲らないほうがいい」となりかねない。同じ力の日本代表とクロアチア代表の選手がいたらどっちを獲るか。代表戦があってもクロアチアは近いけど、日本人選手は毎回極東まで往復する。だったら近場で試合をしてくれるクロアチア代表を獲ろうとなるのは、むしろ当然かもしれない。

 それに関連して言うと、パリ五輪でオーバーエイジを含めたヨーロッパ組をあまり呼べなかったのは、「五輪は強制力がない大会だから仕方がない」と言われていたけど、本当にそうなのかと思います。日本協会は、強制力があることを盾に、A代表の試合があるたびに自分たちのクラブの選手を呼ぶ。だったらこっちは強制力がない時は協力しないよ、という側面はなかったのか。

杉山 可能性はあるでしょう。パリ五輪でオーバーエイジを呼べてなかったのは日本だけ。他の国も呼べないのかと思っていたら、みんな呼んでいた。なぜ日本は呼べなかったのか、検証したほうがいい。

浅田 遠藤航は本人も出場するつもりはあったと言われているけど、呼べなかった。それは本当に強制力がなかったからなのか。

杉山 あの国の代表監督はいつもベストメンバーしか選ばないから、「絶対疲れて帰ってくるぞ」と思われているかも。

浅田 そうかと思えば、インドネシアや中国を連れ回したあげく試合に出さなかったら、クラブは「1分も使わないわけ?」と思うでしょう。そんなことをしていると、選手の移籍にも悪影響を与えるのではないかと、心配になります。

杉山 代表を取り巻くさまざまな歪みに協会はどれほど危機感を抱いているか。代表強化は新時代を迎えているにもかかわらず現状は無策。来年3月の試合からキチッと対策を施さないと、再来年(2026年)は怪しくなる。そんな気がしてならないです。ナショナルチームダイレクター、技術委員長、会長の頑張りに期待したいものです。

浅田 日本サッカーを取り巻く環境が変わってきているのは間違いない。もちろん協会にはその変化に対応してもらわなければ困りますが、メディアを含めた見る側にも発想の転換が必要になっていると感じます。

このニュースに関するつぶやき

  • W杯出場決まったら6月は若手やアピールしてる選手を使って欲しい 底辺の拡大はやるべき
    • イイネ!2
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(1件)

ニュース設定