2025年の外国為替市場の円相場の動向について、市場関係者の多くは足元の歴史的な円安水準からの修正は進まないと予想する。日銀が利上げを進める一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は利下げを継続するが、いずれのペースも緩やかとの見方からだ。ただ、同年1月に発足するトランプ次期米政権の経済政策は不透明感が強く、内容次第で相場が変動する可能性もありそうだ。
24年の対ドルの円相場は、22円超の幅で大きく上下した。年初は1ドル=141円台だったが、米経済の堅調による米利下げ観測の後退で円売り・ドル買いが進み、7月には161円94銭と約37年半ぶりの安値を記録。その後は政府・日銀の円買い介入や日銀の追加利上げ、米利下げ観測で上昇に転じ、9月に139円50銭台と約1年2カ月ぶりの高値となった。秋以降は米大統領選でのトランプ氏勝利などで下落。年末に158円台を付ける場面もあった。
市場関係者11人に25年の展望を聞いたところ、24年より円高になると予想したのはわずか1人。安値については24年と同程度か、やや下回る水準の160〜163円が9人。170円まで下落するとの回答もあった。
円高が加速しない一因は、日米の金利差縮小が限定的との想定からだ。日銀は24年3月にマイナス金利の解除、7月に追加利上げを決めたが、その後は利上げを見送り、25年も2回にとどまるとの予想が多い。
一方、FRBは24年9月以降、3回連続で利下げしたが、12月に公表した25年の政策金利見通しでは、利下げが従来の4回から2回に半減した。
日銀の利上げとFRBの利下げが0.25%幅で各2回行われた場合でも日米の政策金利には依然3%以上の開きがある。ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは「幅はかなり残り、金利差縮小に伴う円高は大きく進みにくい」と話す。
トランプ氏が主張する追加関税や減税、移民規制について、みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは「インフレ誘発的」で、FRBの利下げ回数を抑制すると指摘する。ただ、景気が失速すれば、トランプ氏は利下げを要求するとの予想もある。市場は同氏の言動に一喜一憂する展開が予想される。