【陸上】久保凜、800m日本女子4人目五輪へ「しんどいからこそ達成感大きい」/インタビュー

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2025年01月01日 09:12  日刊スポーツ

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2025年の目標を記した日の丸を手に笑顔を見せる久保凜(撮影・前田充)

陸上女子期待のニューヒロインが、世界選手権東京大会の開催を待つ2025年の初めに、新年の誓いを立てた。


女子800メートル日本記録保持者の久保凜(16=東大阪大敬愛高)が新春インタビューに応じ、世界切符の獲得を宣言した。あと0秒93に迫った同大会の参加標準記録(1分59秒00)をクリアして、高校3年になって迎える夏の東京で、世界舞台に初めて立つ。【竹本穂乃加】


   ◇   ◇   ◇


高校生が、日本陸上界の歴史を変える。久保が専門とする女子800メートルは世界との差が顕著だ。1928年アムステルダム五輪で人見絹枝が日本女子初の銀メダルを獲得したことで知られるが、それ以外は24年パリまで96年間で五輪出場はわずか2人しかいない。それでも久保は「しんどいからこそ達成感が大きい」。高い壁にも臆することなく、世界と戦う気概だ。


これまでの快進撃を振り返れば、決して夢物語ではない。脚光を浴びたのは、23年高校総体だった。高1にして2分6秒41の好走で初優勝。同種目での1年生女王は高橋ひな以来9年ぶりで、同時にサッカー日本代表MF久保建英のいとことしても注目を集めた。


昨年はトップの集まる日本グランプリシリーズで連勝し、同7月には日本女子で初の2分切りとなる1分59秒93で日本新記録を樹立。「(建英に)負けてられないと。超してやるという気持ちがあった」。「建英のいとこ」という枕ことばを、実力で「日本記録保持者」に変えてみせた。


武器は、序盤から前方で引っ張る積極的な走り。中学時代「ラストで足が動かなくなる」と課題だった後半の失速も克服。日本記録を出したレースでは前半の400メートルを59秒00で通過後、後半も60秒93。常にラスト200メートルからのスパートを意識することに加えて、1000メートルを連続6本といった駅伝練習でスタミナもつけ、単独走でも逃げ切れる地力をつけた。昨年12月22日の全国高校駅伝では2区(4・0975キロ)を走って、驚異的な16人抜きの区間賞も獲得した。


精神面もすでに成熟している。日々の練習は、1人特別メニューに励む。午前4時半起きで、片道1時間かけて朝練習に向かい、遅い日は帰宅が午後8時を過ぎる。自身に向き合い続ける毎日だが「ただ強くなるために練習するだけ」。孤独な練習でも意欲が下がることはなく、試合でも「何も考えず、ただ走るだけ」と弱気になることはない。


16歳が狙うのは、91年以来34年ぶりの東京開催となる夏の世界選手権。出場に必要な参加標準記録1分59秒00まで0秒93に迫り「1秒もない。今までは遠いかなと思っていたけど、(自分の)目標が高くなった」。世界デビューはもう夢ではなく、現実的な目標だ。


20歳で迎える28年ロサンゼルス五輪も視野に入る。入賞となれば、人見絹枝の記念碑的な「銀」から100年の節目になる。レジェンドの名は「昨年、取材で初めて聞いた」。1世紀の重みを感じながらも、覚悟は決まっている。「その目標を達成するのは自分。目標はまだ高いけど、練習を積んで、絶対に達成したい」。自らの足で歴史を動かす。


◆久保凜(くぼ・りん)2008年(平20)1月20日、和歌山・有田川町生まれ。小1でサッカーを始め串本JFCでプレー。高学年の頃に地元の駅伝大会で区間新記録を出し潮岬中で陸上開始。中3時の22年全日本中学校選手権800メートルで優勝。23年に東大阪大敬愛高に進学、同年から全国高校総体800メートルで2連覇。24年6月に日本選手権初優勝。同7月に日本新記録の1分59秒93。サッカー日本代表久保建英はいとこ。憧れの選手は田中希実。167センチ。


◆世界選手権東京大会 9月13日に開幕。21日まで、男子24、女子24、混合1の合計49種目が行われる。会場は東京・国立競技場。国内での開催は、07年大阪大会以来18年ぶり3度目、東京での開催は91年大会以来34年ぶり2度目になる。


◆人見絹枝のアムステルダム五輪 日本女子初の五輪選手として出場した。得意の100メートルに絞っての出場も準決勝で敗退。その悔しさから、急きょ800メートルに出場。全競技を通じて日本女子初メダルとなる「銀」を獲得した。なお陸上女子の一般種目でのメダルは、2024年パリ五輪やり投げ北口榛花の金メダルが96年ぶり2個目だった。


◆日本女子の五輪800メートル出場者 過去3人。1928年アムステルダムで人見絹枝(大毎)が2分17秒6で銀メダルを獲得。64年東京では木崎正子(中大)が2分18秒6で、04年アテネ五輪では杉森美保(京セラ)が2分2秒82で予選敗退。杉森は2分0秒45(05年)の前日本記録保持者。

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