亡き父の店「守り抜く」=地域へ恩返し誓う―遺族代表小林さん・能登地震1年

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2025年01月01日 20:01  時事通信社

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時事通信社

犠牲者追悼式で遺族代表の言葉を述べるため、席を立つ小林由紀子さん(中央)=1日午後、石川県輪島市の日本航空学園能登空港キャンパス(代表撮影)
 能登半島地震と豪雨の追悼式で遺族代表の言葉を述べた石川県穴水町の小林由紀子さん(53)は、地震で最愛の父洋一さんを82歳で亡くした。父から継いだ衣料品店も倒壊し、今は仮設店舗で営業を続ける。「店を守り抜くことが父への感謝になる」とし、地域への恩返しも誓う。

 昨年の元日、小林さんは実家で両親と新年会の準備をしていた時、突然の強い揺れに襲われた。慌てて家を出たが、2度目の揺れで家は倒壊。気づくと洋一さんはがれきの下敷きだった。

 小林さん夫妻は4年前、曽祖父の代から130年以上続く衣料品店「バル・こばやし」を洋一さんから引き継いだ。「店が大好きだった」という洋一さんの口癖は「自分だけ良ければいいんじゃない。お客さんを大事にしないと」だった。店に代々伝わる教えだといい、客目線に立つことの大切さを教え込まれた。

 その店も地震で失い、再建を諦めかけた。先行きの見えない日々が続く中、「制服の採寸だけはやろう」という夫の言葉で作業を始めると、「当たり前のことが楽しくて、この仕事を続けたい気持ちが少しずつ高まっていった」。店を再開する覚悟を決め、昨年10月、同町の被災事業者が集まる仮設商店街「あなみずスマイルマルシェ」で再出発を果たした。

 追悼式では時折声を詰まらせながら、「この店を守り抜くことが亡くなった父への感謝であり、地域の皆さんへの恩返し」と話していた小林さん。式典後に取材に応じ、「元気に少しずつ前を向いていることを見てもらいたいと思った。今年は支えてくれた人に感謝を伝えたい」と力を込めた。 

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