年末年始は家族や親戚と過ごすのが恒例行事という人が多いはずだ。しかし新年早々、そこで大失態を演じてしまう人もいる。
◆義実家で食べる豪華な正月料理が楽しみ
「正月早々、厄災が降りかかりました」と語る都内在住の高嶋春人さん(仮名・42歳)。
一昨年の末、高嶋さんは関西にある妻の実家へ帰省した。高嶋さん自身の実家は都内で両親とは頻繁に会えるため、正月は毎年、子どもを連れて妻の実家を訪れるのが恒例となっているそうだ。
「義両親とは仲が良くて、毎年、正月は蟹や鯛料理など、豪華な正月料理を用意してくれるので楽しみなんです。特に妻が作ってくれる栗きんとんです。栗きんとんを肴に日本酒をちびちび飲むのが好きで、ついつい食べ過ぎてしまうんですよね。一昨年もいつも通り、大晦日に義実家に到着し、夕方からご馳走をつつきながら、皆でテレビを見て談笑していました」
◆新年早々、体調不良に…
新年が明け、妻と子どもを連れて初売りに出かけたり、例年通りの時間を過ごしていた。しかし、三が日が終わりに近づいた頃、体調に違和感を覚えたという。
「なんだか胃もたれというか、お腹が痛かったんです。正月だから普段より食べすぎたかなと思い、そのときはあまり気にしていませんでした。ただ、夜になっても食欲が戻らず、妻が作った栗きんとんを少しだけ食べて、その日は早めに寝ることにしました」
ところが、その夜、高嶋さんは異変に気づいて目を覚ます。
◆深夜の大惨事
「下半身が妙に冷たかったんですよ。少しお酒も飲んでいたので、まさかおねしょをしたのかと思いました。恐る恐るパジャマのズボンを覗いてみると、鼻をつくような悪臭が……。そのとき初めて、自分が『大』のほうを漏らしてしまったことに気づいたんです」
高嶋さんは急いでパジャマと下着を洗おうと洗面所に向かったが、そこで偶然トイレに起きていた妻と鉢合わせてしまった。
「平謝りしようと思ったんですが、それどころじゃなかったんです。なんと、僕が寝ていた布団にもしっかり漏れてしまっていて……。部屋中がものすごいニオイで、深夜にもかかわらず、急いで洗濯機を回すことになりました」
夜中の騒動で、義実家の家族にもこの事態はすぐに知れ渡ってしまったという。
「もう恥ずかしさでいっぱいでした。申し訳ないやら情けないやらで……それからしばらくはずっと気まずい思いをしていました。でも、翌日の夕飯のときに帰省していた妻の兄が『正月早々、義実家で漏らすなんて、おもしろすぎるやろ!』と笑い飛ばしてくれたんです。そのおかげで、皆も大爆笑してくれて、少しは気が楽になりましたね(笑)」
◆栗きんとんが腐っていた!
高嶋さんは、義実家での大失態を笑いに変えてくれた義兄に心から感謝しているという。しかし、なぜ彼だけが体調を崩してしまったのだろうか?
「後から気付いたんですが、義兄が栗きんとんを食べようとしたときに『これ、変なニオイするな』と言ったんです。よく見ると、納豆みたいに糸を引いていて、明らかに腐っていたんですよ。でも、僕はそれがさつまいもの粘り気だと思い込んで、普通に食べてしまったんです」
栗きんとんは高嶋さんのお気に入りで、毎年たくさん食べるため、他の家族はあまり手をつけないのだという。そのため、腐っていることに気づくタイミングが遅れてしまった。
「実は冷蔵庫がいっぱいだったので、栗きんとんを食卓に出しっぱなしにしていたんですよね。暖房が効いた部屋に長時間置いていたことが原因だと思います。完全に僕の不注意でした」
高嶋さんが食べた栗きんとんは手作りのものだった。市販のおせち料理には保存料が含まれる場合が多いが、手作りのものは日持ちが悪い。さらに暖かい室内に長時間置いていたことで、腐敗が進んでしまったのだろうと高嶋さんは振り返る。
「それ以来、食べ物の扱いには気をつけるようになりました」
新年早々まさに大失態とも呼べるが、家族との正月エピソードとして忘れられない思い出になったことは間違いないだろう。
<取材・文/結城>
―[年末年始の憂鬱]―