新発想のアームが付属! 標準消費電力わずか6Wの23.8型ディスプレイEIZO「FlexScan FLT」を試す

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2025年01月03日 09:21  ITmedia PC USER

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EIZOの新モデル「FlexScan FLT」。ディスプレイ部のサイズは、約550.2(幅)×327.8(高さ)×24.4(奥行き)mmだ

 EIZOの「FlexScan FLT」は、23.8型のフルHDディスプレイだ。スタンドを省き、標準で付属するアームを用いてデスクに取り付ける構造で、ディスプレイ部の厚さが約24.4mmという超薄型、かつディスプレイ部の重量が約2.4kgという超軽量を売りとする。


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 さらに、標準消費電力はわずか6Wと、同社史上最も環境に配慮したディスプレイであるとアピールしている。メーカーから機材を借用したので、レビューをお届けしよう。


●スタンドは付属せずアームを用いてデスクに取り付け


 まずは基本的な仕様からチェックする。画面サイズは23.8型、解像度は1920×1080ピクセル(フルHD)、IPSパネルを採用しており、画面はノングレアだ。視野角は水平/垂直ともに178度、輝度は250ニト、コントラスト比は1000:1、応答速度は5ms(いずれも標準値)となる。これらのスペックは、一般的なディスプレイと比較して突出した特徴はない。タッチ操作には非対応だ。


 本製品の特徴は、わずか6Wという標準消費電力の低さだ。同社の従来モデルが11Wなので、約45%を削減したことになる。またECOモードを使用することで消費電力を最大60%カットする機能を備えるなど、節電関連の機能および取得規格を挙げ始めるとキリがないほどだ。


 一方、外見上の特徴としては、一般的なディスプレイのような据え置き用スタンドが付属せず、標準添付のアームを用いての取り付けを前提としていることが挙げられる。このアームは専用品で、ワンタッチで取り付けられる構造を採用する。この後に詳しく見ていく。


 重量は約2.4kg(モニター部のみ)と超軽量だ。一般的に23型クラスのディスプレイは4〜6kg程度はあるのが普通なので、本製品の軽さが分かる。ちなみにスピーカーは非搭載だ。


 接続方式はUSB Type-Cのみとなる。本体背面には3基のUSB Type-Cポートがあり、それぞれ役割が異なり、詳しくは後述する。ちなみに、ACアダプターのポート形状もUSB Type-Cとなっている。


 アームを除く付属品は、USB Type-Cケーブル、ACアダプター、電源ケーブルとシンプルだ。この他、剥がれ防止ガイドが2個付属している。なお、アームが付属しないモデルも受注生産で用意されており、そちらは VESA取り付け用の金具、およびVESAマウント対応のネジが付属する。


●取り付け簡単もアームの使い勝手にはクセあり


 本製品の設置にあたっては、最初に付属のアームをデスク天板に取り付け、次いでその先端に本体を装着する。そして、最後にアーム下部のケーブルガイドにケーブルを通して完了と、一般的なディスプレイアームを用いた場合と同じ手順で設置を行う。


 特筆すべきなのは、設置の簡単さだ。アームについては、支柱部を手で握って回すことにより、ドライバーなしで天板に固定できる。この支柱は直径が実測で60mmとかなり太いため、握って回しても手が痛くなることもなく、また反対方向に回して緩めるのも容易だ。下方向への出っ張りが少ないロープロファイルタイプなのもよい。


 さらにアーム先端へのディスプレイ本体の取り付けも、位置を合わせてはめ込むだけなので、重いディスプレイを支えながらネジ止めをしたり、先にアームにディスプレイを取り付けてからアームの固定位置を試行錯誤したりするといった面倒さとは無縁だ。ディスプレイ自体が約2.4kgと軽量なこともあり、1人で問題なく作業が完結するシンプルさはまさに秀逸と言える。


 以上のように、取り付けやすさは文句なしなのだが、このアームは使い勝手が独特なので注意を要する。1つは縦横の回転に対応しないことだ。ディスプレイアームを使う理由の1つは、エディターや表計算ソフトなど、画面を縦長に使いたい時に素早く切り替えられることだが、本製品は横向き限定なので、こうした使い方には対応できない。


 またそれにもかかわらず、アームの先端部はいかにも回転できそうな遊びの部分があるのが紛らわしい。回転できないのは百歩譲って認めるとして、必ず画面を水平に保てるように、遊びの部分は作らないのがベターだろう。説明書には「無理に回転させないようご注意ください」とあるが、回転できないことが見た目に分かる形状の方が望ましい。


 もう1つは、一般的なアームだとディスプレイの付け根すぐに上下方向の角度調整用関節があり、その先に左右角度調整の関節があるのに対して、本製品はその順序が逆になっていることだ。なぜこれが問題かというと、前者だと画面が左右どこを向いていても画面の上下の向きを調節できるのに対し、後者では画面が必ず真正面を向いたままになってしまうことだ。以下の写真を見てほしい。


 そのせいで、本製品は左右それぞれ90度の範囲でアームを大きくスイングできる利点があるにもかかわらず、それを有効活用できない仕様になっている。念のため同社の過去製品「LA-131-D」「LA-130-D」や、他社ディスプレイアームの売れ筋製品も確認してみたが、こうした仕様は本製品だけだ。


 なぜこのような設計を採用したのかは不明だが、いずれにせよ縦横の回転ができないことと併せて、一般的なディスプレイアームに慣れているユーザーは面食らう可能性が高いので要注意だ。アーム自体を伸縮できる機構など見るべきポイントもあるため、もったいない印象を受ける。


●接続はUSB Type-Cのみ 周辺機器の接続にも対応


 続いて接続方法を見ていこう。本製品の接続方法はUSB Type-Cのみで、背面には3基のUSB Type-Cポートがある。1つはPCとの接続に使うアップストリーム用、もう1つはACアダプターを接続する給電専用、残りはキーボードやマウスなどの周辺機器を接続できるダウンストリーム用となっている。それぞれの役割はアイコンで明記されているので分かりやすい。


 接続方法は2通りある。1つは1本のケーブルでノートPCと直結する方法だ。この場合は映像信号だけでなく電力もPCから供給される。モバイルディスプレイによくある使い方で、1本のケーブルで完結するためスマートだが、電力が足りなくなる場合もある。また、この接続方法ではダウンストリームポートを利用できない。


 もう1つは本製品にACアダプターを装着し、本製品を通じてPCにも給電しつつ、映像信号を受信する方法だ。ケーブルが1本の場合と異なり、給電の向きは逆になる格好となる。こちらであれば電力が不足することもなく、前述のダウンストリームポートも問題なく利用できる。常時安定して使うならば、こちらのつなぎ方になるだろう。ちなみに、ダウンストリームポートはスマートフォンの充電などにも対応している。


 続いて、OSDメニューについて見ていこう。OSDメニューは画面右下にあるタッチボタンで操作するのだが、フレームをタッチする方式はどうにも直感的でなく、項目を移動したり、別のメニューを選択したりするタイミングで画面そのものを指先で押してしまうこともしばしばだ。


 このあたり、物理ボタンとしてしっかり分けるのか、それとも画面上のタッチで統合するのか、いずれかの方向でまとめた方が使いやすくなるように感じる。


 なお、本製品の利用にあたっては、このOSDメニューから、消費電力表示をぜひ設定しておきたい。これは現在の消費電力をリアルタイムで画面上に表示できる機能で、PC側にソフトウェアをインストールすることなく、本製品単体で表示をサポートしている。


 これをオンにしておけば、ディスプレイ側の消費電力、さらにUSB Type-Cポートの消費電力をリアルタイムで表示可能だ。接続方法の変更などによって電力がどれだけ変化するかが一目瞭然なので、なるべく電力を消費しない使い方を見いだすのに役立つだろう。


 デフォルトではこれらは画面右上に表示されるが、表示位置や透過のパーセンテージを設定することもできる。


●標準消費電力の少なさと5年保証がプラス要因


 以上ざっと使ってみたが、確かにボディーは薄いものの圧倒的というわけではなく、またモバイルディスプレイと違って持ち歩くわけではないので、軽さを実感するのは取り付け時くらいだ。スタイリッシュではあるものの、それ以上のプラスαは期待すべきではないだろう。


 また、ディスプレイもアスペクト比16:9のフルHDということで、とりたてて特徴があるわけではない。背面のUSB Type-Cのインタフェースも確かにスマートなのだが、モバイルディスプレイではそう新しい仕様ではない。スピーカーがないなど割り切りもみられ、多機能というわけでもない。


 一方で保証期間は5年と長く、長期的に使っていくと標準消費電力の少なさがじわじわと効いてくるはずだ。こうした点を踏まえると、23型クラスとしては高価な6万4900円という直販価格も、同等サイズのディスプレイと単純比較できるものではない。アームの使い勝手にかなりクセがある点に納得がいけば、という条件付きだが、個人であっても導入を検討する価値はあるだろう。



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