前回に続き、家電量販企業の2025年を占う。今回紹介するのはエディオンとヨドバシホールディングス(ヨドバシHD)の2社だ。エディオンはZ世代に向けPB商品で新しいシリーズを展開したり、22年4月に資本業務提携したニトリとの共同開発商品に拍車がかかったりしている。ヨドバシHDは24年11月に移転オープンしたマルチメディア千葉が、米ファンドによるそごう・西武の買収後1号店として注目を集める。新業態の体験型ビューティーストアもチェックしておきたい。
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エディオンとヨドバシカメラを分析
●リフォーム含む商品全般が好調のエディオン
エディオンの24年3月上期決算から振り返ろう。同社もエアコンとインバウンドの活況で増収、大幅な増益を達成した一社だ。
売上高は3805億円(前年同期比107.9%)の増収。営業利益は144億9800万円(同134.5%)、経常利益は150億2700万円(同136.0%)、当期純利益は100億3100万円(同139.0%)だった。
24年4〜9月まで毎月、POS受注ベースで前年をクリア。前上半期も増収増益だったが、今上半期はアフターコロナで復活を遂げたといってもいいほどだ。
4月からの気温上昇でエアコンと季節商品の販売が例年よりも前倒しで動いたり、大型インチのテレビの買い替えも順調に進んだりした。特にエアコンでは、節電やAI機能搭載など高付加価値の大型モデルの販売が好調だった。
経済産業省による導入支援「給湯省エネ2024事業」があったエコキュートや断熱性能の高い二重窓、オール電化商品、バス・トイレといったリフォーム事業も好調だった。それだけでなく、理美容・健康器具や電子レンジ・調理家電などの生活家電も堅調に推移。商品全般において好調だったとアピールしている。
何よりも、既存店の売上高が上期累計で同104.4%だったことが同社の好調ぶりを示す。
●Z世代をターゲットにしたPB商品をシリーズ化
エディオンで力を入れているのがPB商品だ。家電量販業界全体に通じる共通の課題として、若いZ世代にリーチできていないことがある。家電は今や、Francfrancやロフト、イケア、無印良品など生活雑貨店でも独自に企画・開発した商品を販売している。本来、家電量販店が取り込むべきZ世代が、そうした雑貨店に流れているのではないかという危機感である。
エディオンのPB商品コーナー
エディオンは24年8月から、Z世代をターゲットに据えた「カラーデザインシリーズ」を展開。「ビジュ家電」として、部屋で自撮りしたときの映り込みがかわいく見えるような「お部屋のビジュをアゲる家電」を打ち出していく。
Z世代向け「カラーデザインシリーズ」
エディオンのPB戦略では、ニトリと共同開発したオリジナル商品にも注目したい。22年4月に両社が資本業務提携し、23年12月からスタートした取り組みは、まさに24年上期で加速しだした。
コードレススティッククリーナーやイヤーカフ型ワイヤレスイヤホン、ファンヒーター、加湿器、ペット家電、電気ドリップケトル、ガラスミキサーなど立て続けにリリースしている。エディオンとニトリの双方の店舗で販売している商品がある点も、押さえておきたいポイントだ。
ニトリと共同開発したイヤーカフ型ワイヤレスイヤホン
●「マルチメディア千葉」のオープンで注目のヨドバシカメラ
ヨドバシホールディングス(ヨドバシHD)は非上場だが公表している24年3月期の売上高は7560億円(同97.2%)の減収だった。17年3月の6580億円(同96.8%)を底に、6期連続で増収を続けてきたが、ここにきて減収に転じた。
コロナ禍のテレワーク需要やおうち時間を過ごす調理家電などECの「ヨドバシ・ドット・コム」が好調すぎて、その反動減というのが大方の見方だ。ただ、24年3月期の経常利益率8.0%というずば抜けた利益率の高さは健在である。
ヨドバシカメラ マルチメディア千葉
24年11月15日、ヨドバシカメラ千葉店を移転してオープンしたマルチメディア千葉は、売場面積が約1万3200平方メートルで旧店舗の約3倍、JR千葉駅から徒歩2分という好立地。23年8月末に閉館した、そごう千葉店の別館「旧ジュンヌ館」をリニューアルした店舗だ。
22年に米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループがそごう・西武を買収した後の1号店としても注目を集める。フォートレスはヨドバシHDをビジネスパートナーに選定している。
多くの商品が体験・体感できる(マルチメディア千葉)
ヨドバシHDはフォートレスを通じて土地や建物などを取得し、マルチメディア千葉が入る建物の名称をヨドバシHD千葉ビルとした。
地下1階〜地上17階のうち売り場は1〜4階。地下1階にはユニクロとABCマート、JINSがテナントとして入店し、5〜17階と屋上は1680台収容の駐車場(タイムズヨドバシ千葉)となっている。駅前立地ながら巨大な駐車場を兼ね備えて買い物の利便性を高めるのもヨドバシ流だ。
そもそも同店は、フォートレスによるそごう・西武の買収が報じられた際、パートナーであるヨドバシの池袋(西武池袋本店)と渋谷(西武渋谷店)、千葉(そごう千葉店)への出店意向も合わせて報じられていた。
試せることを全面に押し出している(マルチメディア仙台)
マルチメディア千葉のオープンは、24年3月期の減収分224億円を回収するのに十分だろう。本丸である西武池袋本店の改装も進んでいる。西武池袋本店は25年1月から段階的にリニューアルオープンを行い、今夏にグランドオープンする予定だ。
●体験型ビューティーストアの新業態に挑戦
最後に、西武池袋線の池袋駅東口改札を出てすぐのところに24年4月に出店した新業態の体験型ビューティーストア「Yodobloom(ヨドブルーム)池袋店」にも触れたい。
新業態「Yodobloom(ヨドブルーム)池袋店」
スキンケアやヘアケアに関する店内のすべての商品を購入前に比較しながら体験できる。Yodobloom公式アプリでは、予約が必要な体験コースを用意しており、エステシャンや美容師が肌や頭皮診断からカウンセリングして、顧客に合った美容家電やシャンプー、トリートメントなどを提案する。
もちろん、予約不要のメイクアップ体験や肌・頭皮の診断体験、理美容家電体験などもある。ヨドバシHDの新業態へのチャレンジによる今後の発展、進化にも注目したい。(BCN・細田 立圭志)