ラグビー日本代表候補の早稲田大・佐藤健次が夢見る「荒ぶる」合唱 目標まであと1勝

2

2025年01月04日 07:00  webスポルティーバ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

 新年が明けた1月2日、61回目となるラグビー大学選手権の準決勝2試合が東京・国立競技場で行なわれた。関東対抗戦を全勝で駆け抜けた早稲田大は、4シーズン連続トップ4の実力を誇る京都産業大(関西大学Aリーグ2位)と対戦することになった。

「リゲイン・プライド」

 プライドを取り戻すことをテーマに掲げた早稲田大にとって、この試合は特別な意味を持っていた。

 FB伊藤大祐(現・神戸スティーラーズ)がキャプテンだった昨シーズンの準々決勝、早稲田大は京産大に28-65で大敗。スクラムでもフィジカルでも相手に圧倒されて、年越しができずにシーズンを終えた。今回の準決勝は、まさにその借りを返す絶好の機会となったわけだ。

※ポジションの略称=HO(フッカー)、PR(プロップ)、LO(ロック)、FL(フランカー)、No.8(ナンバーエイト)、SH(スクラムハーフ)、SO(スタンドオフ)、CTB(センター)、WTB(ウイング)、FB(フルバック)

 因縁の相手に対して、白のセカンドジャージーをまとった早稲田大は常に先手を取った。前半からスクラム、ディフェンスともに京産大を上回り、後半11分までに5トライを奪取。終盤になって3トライを返されたが、最後は逃げきって31-19で決勝に駒を進めた。

 1年前、グラウンドで涙を流したHO佐藤健次(4年)は、キャプテンになってリベンジを果たした。

「どこかでずっと、京都産業大にやり返したい気持ちがありました。昨年の4年生のリベンジをしようと。プライドを取り戻すチャンスが来たので、勝ててよかった。ただ、内容としてはまだ成長できるところがたくさんある。それらをしっかりと反省し、決勝戦はもっといいプレーができるようにがんばりたい」

 試合の流れを決めたのは、やはりスクラムだった。

 早稲田大を率いる大田尾竜彦監督が「スクラムで反則せずに組み勝ってくれた。それが(4トライを挙げた)前半につながった」と言えば、佐藤も「スクラムで(相手から)ペナルティが取れて、前半でいい流れに持ってくることができた」と胸を張った。

 昨季、大阪の地で京産大にプライドを踏み潰された姿はそこになかった。

【勝因はスクラムとフィジカルバトル】

 大敗した悔しさを晴らすべく、早稲田大が新チームを始動させたのは1月9日。敗因となったスクラムを強化ポイントに掲げ、仲谷聖史コーチとともに練習を重ねた。その結果、関東対抗戦では帝京大や明治大ともスクラムで互角に戦えるようになった。

 ただ、京産大はスクラムで変則的な組み方をしてくるチーム。早稲田大にとって相性がいいかどうかは、フタを開けてみないとわからない。No.8からHOに転向して3シーズン目の佐藤は、スクラムで京産大に勝てた要因をこう話す。

「8人でまとまって、いいヒットで前に出ることにフォーカスした。相手の3番のバインド(味方同士がガッチリと組み合うこと)が少し特殊なので、チームメイトがその組み方でずっと練習してくれた。それがいい経験になってスクラムを押せました」

 前半7分にラインアウトからのサインプレーから挙げたLO栗田文介(3年)のトライや、前半15分のCTB福島秀法(3年)のトライは、それぞれスクラムで相手から反則を奪って得たチャンスを結びつけた形だ。

 また、京産大から2度コラプシング(スクラムを故意に崩す反則行為)を誘ったプレーも、早稲田大FW陣の「押し」があったからこそ。「(優勝して)フロントローで仲谷さんを絶対に胴上げしようと話しているので、そのために(決勝では)スクラムをもう一段階がんばります!」(佐藤)

 そして勝因をもうひとつ挙げるならば、ディフェンスで相手のキーマンを止めた「接点でのフィジカルバトル」で京産大を上回っていた点だろう。

 今季の京産大には、関西リーグで14トライを挙げてトライ王に輝いたNo.8シオネ・ポルテレ(3年)を筆頭に、トンガ出身のLOソロモネ・フナキ(4年)とフィジー出身のCTBナブラギ・エロニ(2年)という強力な外国籍選手を擁している。彼らを前に出してしまうと、試合の流れを握られてしまうことは明白だった。

 この3人のプレーに対し、今季1試合平均8.4失点しか許していない早稲田大ディフェンスはきっちりと機能していた。時にはボールホルダーを3人で食い止め、ゴールラインに迫られても体を張ってトライを阻止した。

「強いランナーがいることはわかっていたので、弾かれてもいいからしっかりタックルに入ろうと言い続けた。フィジカルバトルで負けていなかったし、相手をひとりにしなかったところがすごくよかった」(佐藤)

【先輩・齋藤直人の姿を見てワセダへ】

 昨季のリベンジを果たした早稲田大は、2大会ぶり34回目の決勝戦に臨む。相手は大方の予想どおり4連覇を狙う帝京大(対抗戦2位)。今季の帝京大とは春季大会こそ7-60で大敗したものの、夏合宿では38-14、そして対抗戦でも48-17で勝利を収めている。

 勝敗を分けるのは、やはり決勝でもスクラムの出来が大きく影響するだろう。佐藤は「細かいプレーが大事」と言う。

「結局のところ勝負を決めるのは、誰かのランブレイクではなくて、(こぼれたボールに対して体を張ってマイボールにする)セービングとか、ラインアウトからのこぼれ球とか、ディフェンスのバッキングアップ(スペースを埋めるなどのフォロー)とか、そういう細かいプレーを80分間やり続けることだと思います。

 1点でも最後に勝っていればいい。優勝するか準優勝するかは、本当に雲泥の差です。最後に見たことない景色を見にいけたらいい」(佐藤)

 佐藤の言う「見たことのない景色」というのはもちろん、早稲田大が日本一になった時だけ歌うことを許されている第二部歌『荒ぶる』を130人以上の部員全員で歌うことを指す。

 学生ラストイヤーの佐藤は4年前、桐蔭学園の先輩であるSH齋藤直人(現トゥールーズ/フランス)の代が日本一になる姿を見て、「早稲田大で優勝したい!」と臙脂のジャージーをまとう早稲田大の門を叩いたた。

 中学校時代(横浜ラグビースクール)も花園でもキャプテンとして日本一に輝き、世代のトップを走り続けている通称「サトケン」。大学ラストイヤーで優勝し、有終の美を飾ることができるか。

このニュースに関するつぶやき

  • HISASHIぶりに「荒ぶる」聞きたい。
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(1件)

ランキングスポーツ

前日のランキングへ

ニュース設定