2024年、反響の大きかった記事からジャンル別にトップ10を発表。「乗り物で腹が立った話」部門、仰天の迷惑行為の数々から第5位の記事はこちら!(集計期間は2024年1月〜10月まで。初公開2024年6月19日 記事は取材時の状況) * * *
不特定多数の人と同じ空間を共にすることになる電車内。他の乗客の行動に迷惑した経験がある人も多いことだろう。飲食店に勤務している神谷勇輝さん(仮名・28歳)もそのうちのひとり。終電近くの電車で帰宅することも多く、たびたび迷惑な乗客に遭遇するという。
◆泥酔サラリーマンがカップ麺を膝に置いて居眠りを…
「隣の席に座ってきたサラリーマンに驚いたことがあったんですよね。そのサラリーマン、お湯が入った状態のカップラーメンを手にしていたんです。ベロンベロンに酔っ払っていて、おそらく飲んだ帰りにラーメンを食べたくなったものの、終電間際で店に入っている時間がないので、カップラーメンにした、みたいな感じでした。嫌だなと思いつつも、割り箸をスーツの胸ポケットに差しているのが、なんか面白くて」
気持ちは分からなくもないが、隣に座られるのは恐怖だった。
「カップラーメンを手にしながら居眠りし始めたんです。危険だと思ったのか、反対側の席に座っていた中年男性がカップラーメンを奪って床に置いたりもしたんですが、すぐに目を覚まして拾い上げてしまい……。再び居眠りを始め、再度床に避難させようとしたんですが、今度は目を覚まして怒り出したので、それからは誰も手をつけられなくなりました」
◆危険を察して離れだす他の乗客たち
その状況下でだんだんと眠りが深くなっていく様子に、神谷さんの我慢も限界を迎えることに。
「カップラーメンを手にしたまま8の字を描くように動きだしたので、これは危ないと思い、自分は席を立ちました。他の乗客も離れて、サラリーマンの周りに人がいなくなり、みんな固唾を飲んで見守る感じになったんです」
そして、誰もが予想した通りの結末を迎えることに。
「サラリーマンが描く8の字が崩れた直後にカップラーメンをひっくり返し、自分の膝にぶちまけて……。悲鳴とともに飛び起きていました。誰かに押されたとでも思ったのか、周りに対して一瞬怒るそぶりを見せていましたが、誰もいないので恥ずかしくなったのか、ラーメンまみれのままで寝たふりを決め込んでいました」
◆爆音でYouTubeを再生するヤカラ系の若者
さらに迷惑なこんな体験もしたという。
「やっぱり遅い時間の電車内に乗った時、腕に刺青が入ったヤカラ系の若者たちがいました。彼らは大音量で迷惑系ユーチューバーの動画を見ながら、大声でゲラゲラと笑っていて……。しかも、一般人にいきなりドッキリを仕掛けて笑い者にする系の内容っぽく、聞こえてくる音声だけでも不快でした。でも。外見のいかつさもあって、自分を含めて誰も注意することができない状態でした」
そんな中、大音量で音楽が聞こえてきた。
「急にクラシック音楽が大きな音で鳴り出したんです。それで『やっぱりモーツァルトは良いよな〜』『品がある音楽は心が和むよな〜』という若者の声が聞こえてきました。どうもヤカラたちへの対抗策としてやっているようでした」
これにヤカラが噛み付いた。
「ヤカラが『おい! うるせえよ!』と言いながらクラシック音楽が聴こえるほうに、乗客を掻き分け進んでいったんです。ですが、クラシック音楽をかけていたのは、すこぶるガタイが良い、柔道部かレスリング部じゃないかという感じの体育会系の学生たちでした」
◆すごんでいた奴は内心ビビっていた?
学生たちの言葉も奮っていた。
「『いやーすみません! なんか車内の雰囲気が良くなかったので、音楽をかけてみたんですが迷惑でしたか?』って。ヤカラたちは『うるせえから消せよ!』と自分たちのことを棚に上げていきがり、学生は『わかりました。消すんで、お兄さんたちも消してもらっても良いっすか?』と答えていました。言葉は下手に出ながらも、学生たちは睨みながら言っていて、迫力がありました。それでも、ヤカラたちもここまで来た以上は引くに引けない感じでした」
緊張状態の結末は如何に。
「ヤカラたちは『ふざけるなよ』と凄んでいましたが、すぐに到着した次の駅で下車していきました。1人が『え? ここで降りんのかよ?』と言っていたので、一番すごんでいた奴は内心ビビっていたようで笑ってしまいました。車内では学生たちを褒めるサラリーマンもいて、さっきまでとは打って変わって和やかな雰囲気に」
スマホから視線を上げてみると、他では味わえない興味深い光景を目にできるかもしれない。
<TEXT/ 和泉太郎>
【和泉太郎】
込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め