LenovoのヤンCEOが語る「AI戦略」 Intel/AMD/NVIDIAのCEOも勢ぞろい

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2025年01月04日 12:10  ITmedia PC USER

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同社がAI時代に打ち出すメッセージとして「Smarter AI for All」を掲げる、Lenovoのヤン・ヤンチン会長兼CEO

 多くのPCメーカーにとって、2024年は“AI元年”だったと呼べるかもしれない。理由としては、半導体メーカー各社からAI(人工知能)の推論実行に特化した「NPU」を標準搭載したCPU/SoCが相次いで発表されたことで、いわゆる「AI PC」の新製品がこの年に一気に市場へと投入され、マーケティングメッセージとしてのAIが、実際にセールスポイントとして機能していたことにある。


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 一方で、こうしたNPUを統合したCPU/SoCを備える「AI PC」は、どちらかといえばハイエンドモデルに偏っている。価格面からも、多くのユーザーが求めるボリュームゾーンからは若干外れている状況でもある。


 同時に、このAI処理性能を生かせるアプリやサービスも、現状ではそれほど多くない。仮にAIを生かせるアプリ/サービスの数がある程度そろったとしても、より多くのユーザーを引きつけるのに十分かといわれると、そうでもないというのが筆者の見解だ。


 しかし、今後数年でAI PCの割合が増えるのは確実で、PCメーカーなどの予測では2030年頃までに出荷されるほぼ全てのPCがAI PCになるという予測もある。いずれにせよ、その頃には多数のユーザーを引きつけるキラーアプリのようなものが登場する可能性も高く、PCメーカー各社がAI時代の序盤戦で自らの特徴やメリットをアピールすべく、さまざまなメッセージを打ち出している。


 今回は、このうちの1社であるLenovo(レノボ)の事例を紹介したい。同社はPCにおいて出荷数ベースで世界一のシェアを誇っているが、その強みは個人向けPCのみならず、タブレットからスマートフォン、サーバやデータセンター向けインフラまで、PCやそれを取り巻くエコシステム全体にハードウェアポートフォリオを持つ点にある。


 同社が打ち出すメッセージは「Smarter AI for All」だが、このエコシステムの強みを生かしてオンデバイス(オンプレミス)処理のAIとクラウド(データセンター)処理のAIを組み合わせて活用する「Hybrid AI(ハイブリッドAI)」を戦略として掲げている。2024年10月に開催された「Lenovo Tech World 2024」で説明している。


●PCはもはや「パーソナルコンピューティング」を意味しない


 Hybrid AIという概念自体は、Lenovo独自のものではない。近年、この分野が脚光を浴びるようになったのは、「ChatGPT」を始めとするTransformerベースの巨大なパラメーターを持つ新世代AIモデル(LLM:大規模言語モデル)がクラウド上で動作するようになり、ユーザーがインターネット経由でこれにアクセスして使うようになってからだ。


 こうしたLLMをデータセンターで稼働し、多くのユーザーがアクセスする――このような形態は、ベンダーにとってもリソース的な負担が大きい。また、ユーザー側からしてみても、「社外秘データの扱い」「セキュリティ」「パーソナライズ(個別最適化)」そして「レスポンス速度」など、さまざまな観点において、必ずしもベストな利用形態とはいえない。


 そのため、昨今のAIに関する取り組みでは、比較的軽量な言語モデルはローカルデバイス上で動作させ、必要に応じてクラウドにあるLLMにアクセスしたり、企業/組織の環境ごとに分割/最適化されたクローズドな環境にあるLLMを利用したりと、複数のAI環境を組み合わせる利用形態が模索されるようになった。


 Hybrid AIは、このような取り組みの中で登場した概念だが、ローカルデバイス上で動作させる言語モデルやAIエージェント、プライベートクラウドの提供方法などで各社独自の“味付け”が行われており、この点においてもLenovoならではの妙味があるというわけだ。


 この“Lenovo流”をPC向けに展開したものが「Lenovo AI Now」だ。


 Lenovo AI Nowは、PCメーカー各社がMicrosoftの「Copilot in Windows」とは別枠で提供しているAIエージェントの一種だ。ローカルデバイス上でMetaの「Llama 3」ベースのLLMを動作させるだけではなく、「Knowledge Library(ナレッジライブラリー)」上にさまざまな情報の記載されたファイルを蓄積しておくことで、その情報を反映した回答を与えてくれるようになる。


 汎用(はんよう)的なパブリックのチャットAIでは、ユーザーごとにカスタマイズした情報を得ることは難しい。しかし、Lenovo AI NowはKnowledge Libraryの情報を加えることで結果の“味付け”を可能にしている。こうしたプライベートなデータはローカルデバイス上に保存され、ローカル処理されるため、データが外部に出ることもなくプライバシーも守られる。今後のローカルAI展開の上で重要な要素だろう。


 Lenovoのヤン・ヤンチン会長兼CEOは「PCとは、もはや『Personal Computing(パーソナルコンピューティング)』ではなく、AIによる『Personalized Computing(パーソナライズドコンピューティング)』を意味している。これが、Lenovoを他とは差別化する要因になっている」と述べる。


 それだけ、AIアシスタントにおける妙味の部分が大きいという主張なのだろう。


●データセンター向けソリューションにはどう関わる?


 Lenovoが考えるHybrid AIのうち、Enterprise AIとPublic AIはデータセンター向けソリューションとなる。


 プライベートであれパブリックであれ、AI処理をデータセンターで行う場合、ユーザーはインターネット経由でクラウドにアクセスし、必要な情報を得たり処理を行ったりしている。


 ここでは、省電力性やコンパクトさが求められるPersonal AIと比べると巨大なLLMが動作しており、それを支えるNVIDIAやAMDの高性能GPUがフル稼働している。こうした用途に向けたソリューションを抱えている点も、Lenovoの強みといえる。


 今回のTech World 2024で興味深かったのは、Intel/AMD/NVIDIAという昨今のAIデータセンターを語るうえで欠かせないベンダー3社のトップがイベントに生出演した点にある。3人のうち、Intelのパット・ゲルシンガー氏は2024年12月に突然退任することになったが、AMDのリサ・スーCEOと共に「x86 Ecosystem Advisory Group」にちなんで、データセンター向けの最新の取り組みにおけるLenovoの重要性を改めて強調した。


 そしてデータセンター向けAIを語る上で外せないのが、NVIDIAのジェンスン・ファンCEOだ。Public AIのみならず、企業ユーザーがEnterprise AIで学習モデルを構築する際に、現状においてNVIDIAのソリューションは欠かせない。


 LenovoではNVIDIAと共同で「Lenovo Hybrid AI Advantage」という取り組みを発表している。これはNVIDIA製GPUでCUDAが動作する環境において、企業ユーザーがすぐにAIの仕組みをすぐに導入できる「テンプレート」的なレポジトリを提供するというもので、企業/組織ごとのニーズに応じた実装が短期間で可能という。


 AIワークロードの実行に当たり、GPUの発する膨大な熱の処理は大きな問題となる。Lenovoでは、「NVIDIA GB200(Blackwell)」クラスでも十分に冷やせる水冷機構を備えたシャーシ「ThinkSystem N1380 Neptune」と、これに対応するNVIDIA GB200システム「ThinkSystem SC777 V4 Neptune」を併せて発表している。


 Public AIの展開ならびに、Enterprise AIでの社内へのAI導入を考える企業ユーザーのニーズを汲み取ろうとするベンダーらに向けたラインアップをアピールした格好だ。



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