「『ゆうひが丘の総理大臣』の出演経緯は複雑なんですが……。じつは、4クール(1年)を予定していたドラマ『俺たちの祭』が、内容が暗くて視聴率が振るわず3クールで打ち切りに。残り1クール分として急きょ作った、明るい教師が主人公の学園ドラマ『青春ド真中!』(ともに日本テレビ系)がウケたんです。それで“同じ路線で次の4クールを作ろう”と。『俺たちの祭』の失敗がなければ『ゆうひが丘の総理大臣』は生まれていなかったかも」
こう語るのは、中村雅俊さん(73)。熱演した主人公・大岩雄二郎といえば、フライトジャケットとジーンズがトレードマークだった。
「あれは私物。原作漫画の大岩は角刈り頭の体育会系で、ぜんぜん自分のイメージじゃない。アメリカ帰りという設定をもとに、自分でキャラを作っていったんです」
ロケ地はおもに多摩美術大学や多摩御陵だった。
「スタッフや共演者とも、よく飲みに行きました。翌朝、二日酔いの監督が、多摩御陵の川の水で顔を洗っている姿も見たものです」
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多摩美術大学では、撮影現場に一般の人が入らないように、スタッフが目を光らせていた。
「でも、竹中直人は多摩美の学生だったから、よく現場に入り込んでいました。当時から、せんだみつおさんの夕方のバラエティ番組でモノマネをしていたから、ちょっとした有名人だったんですよ」
青春ドラマということもあり、海に入ってずぶぬれになったり、生徒の掘った穴に落ちてしまうシーンなども多く、ロケ現場ではシャワーを浴びたり着替えができる場所が必須だった。
「それがラブホテルなんです。神田(正輝)ちゃんと一緒に着替えをしているとき、適当にボタンを押すとパッと照明がついて、ベッドが回転しだして“すげえ!”って感心してみたり(笑)」
最終回で学校を去るとき「総理、行くなよ」と生徒たちに引き止められるシーンは、本気で寂しいと思えるほどだった。
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「最年少だった小川菜摘も思い出の生徒。番組終了後、共演する機会はまったくなかったんだけど、菜摘とは家が近所で、よく顔を合わせていたんです。うちの子供たちが『浜ちゃんのサインが欲しい』というから菜摘に頼んだら、後日、夫婦そろって自宅に届けてくれたこともありました」
近所付き合いの仲だったが、2024年6月、芸能生活50周年記念公演で、46年ぶりに小川との共演が実現した。
「大人の、素晴らしい女優になっていて、感慨深かったですね」
『ゆうひが丘の総理大臣』(日本テレビ系・1978〜1979 年)
「俺はこの教室では総理大臣より上だ」。開口一番に言い放った英語教師・大岩雄二郎は、生徒から「ソーリ」と呼ばれるように。生徒とぶつかり合いながらも、最終的には夕日の海岸を走って解決する爽快感があった。『金八先生』と双璧をなす、学園ドラマの金字塔。
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【PROFILE】
なかむら・まさとし
1951年生まれ、宮城県出身。大学在学中に文学座附属演劇研究所に入所、『われら青春!』でデビュー後、数多くのドラマ、映画で活躍。デビュー50周年記念ベストアルバム『SONGS〜Masatoshi Nakamura 50th Anniversary All Time Best〜』が発売中。
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