【写真】杉田智和&島崎信長のインタビュー撮りおろしが満載!
■杉田、断言「命が二択になったら必ず家族を優先する」
――原作を読まれた際の感想を教えてください。
杉田:少年ジャンプを卒業しなきゃいけない年齢に差し掛かりつつある自覚がある中、年長者の主人公である坂本太郎という男に対しては、勝手に共感を持っていました。
この年齢になってくると、自分の視点を投影できる年齢感の主人公ってそう多くないんです。そういう意味で、彼が主人公をやっていることが嬉しくて、ずっと読んでいました。読者として楽しんでいた頃は、まさか自分が出演するなんて考えてもみませんでしたね。
島崎:殺し屋をテーマにした作品は数あれど、『SAKAMOTO DAYS』の世界観はかなり独特で驚きましたね。殺し屋の養成学校があったり、殺しの請負会社に就職してたり、殺し屋連盟に加入してたり(笑)。
杉田:一般人の倫理観がちょっとおかしいよな(笑)。
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――各キャラクターの魅力や、演じる際に意識された点などを教えてください。
杉田:完成されていた存在に、ある日突然生まれた新しい要素。それを、過去のすべてを排してでも優先する、と決めたのが坂本太郎という男です。いかなる時においても“家族”が最優先になるけど、博愛精神でそうなってるわけじゃないから、命が二択になったら必ず家族を優先する。というわけで、すまんなシン。
島崎:シンも納得すると思いますよ。「それでこそ坂本さんです」って(笑)。
杉田:手を広げることが弱点を増やすことにもなるから慎重にならざるを得ないけど、坂本商店の店員もまた仲間の一員ではあるんだと思います。そういった姿も、坂本の魅力と言えばそうなのかもしれませんね。まぁ、この坂本に“命を選ばせる”状況を作るのは容易ではないと思いますが。
――そんな坂本さんの背中を追うシンですが、彼自身の魅力はどういった部分にあるのでしょうか。
島崎:坂本さんへの敬意を原動力に動く姿とか、かわいらしさが最初に見えるシンの魅力ではありますよね。でも、彼の人生を真面目に考えてみると、相当な経験を経てきて今があるんですよね。パッと見の印象では“舎弟感”に重心を寄せたくなるんですけど、周囲を疑いながら孤独に殺し屋稼業を生き抜いてきた一匹狼の姿こそ、彼のニュートラルなスタンスなんじゃないかなと、僕は思っています。
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――坂本さんがそうであったように、人は変化していくものだと思います。役者として長く活躍しているおふたりが、互いに変化を感じた部分があれば教えてください。
杉田:笑顔の向こうにある後ろ暗さ。それが長所になっている人物が、島崎信長さんだと思っています。彼はかつて、自分の“好き”を語るにあたって、それが周囲に与えてしまう影響について思い悩んでいました。なんて優しい男なんだと思いましたね。
島崎:いやいや(笑)。
杉田:今でもその根本は変わらず、悩みを自分なりの形で乗り越えて、より頼もしい存在になっています。性質が大きく変化したわけではなく、優しいまま“進化”したのが今の彼なんだと思っています。
島崎:僕から見た杉田さんも、同じ印象ですね。基本的なスタンスは変わってないけど、より進化した存在になっています。たぶん、杉田さんの中には進むべきロードマップみたいなものがあって、それを、アップデートを重ねながら進んでいるんじゃないかな。
たとえば、“好き”を発信する方法ひとつ取っても、若い頃はいろいろな手段を模索して、発信する内容も手探りだったと思います。勘所が掴めてきたら、その性質や、発信の方法も変わってきますよね。そんな感じで、常により良い形を目指して歩き続けている先達、というイメージがあります。
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島崎:杉田さんも、自分を偽らない人じゃないですか。だからそうした方がいいかなって。純粋に好きな気持ちに対して、いろいろなものが絡んで大変になる感覚は、僕もよく分かるので。
杉田:だから、無性に「信長くんと話したいな」と思う瞬間があるんですよね。自分の中の気持ちを再確認できるし、僕にとってもとても有り難い。
島崎:なんというべきか……。ありがとうございます!
■特別な1つより、日々の積み重ねが“芝居”に繋がる
――坂本太郎の人生は、仕事とは異なる場所から受けた刺激をもって大きく変化しました。声優という仕事において、外から受けた刺激で変わったことはありますか?
杉田:あらゆる物事が、今の芝居に繋がっていると思っています。芝居について考えるにあたっては、演じる人物の立場や動きを体験するのが一番早いですからね。だから、法に触れること以外は、あらゆる経験を積みたいと思っています。
たとえば、以前“カリスマコンビニ店員”の芝居をする機会があったのですが、僕はそれまでコンビニ店員はおろか接客業を一切やったことがなかったんです。これはもう一度体験した方が良いということで、実際にやらせてもらいました。
――自主的にですか!?
杉田:当時住んでいたマンションの近所のコンビニに行って「土曜日の深夜帯の1時から3時くらいまで週イチで働けませんか?」と聞いてみたんです。そしたら、店長さんに「そんな最初からシフトを指定してくるバイトはいない(笑)」と呆れられてしまいました。
島崎:それはそう(笑)。
杉田:事情をお話したらバックヤードを見せてくれて、道具の使い方などを教えてもらうことができて、大変参考になりました。実際に見たり、触ったりすることで解像度が大きく上がるので、その刺激を自分から受けにいくのは大事だと思っています。
島崎:体験できるものなら、確かにそうですね。直接体験できないものでも、なにか近い状況がヒントになることもあるし。
杉田:殺し屋は体験できないもんね(笑)。坂本については、むしろ家庭に軸を置いている人物なので、そちらを理解する方が大事だと考えました。今回は実際に家庭を持ってお父さんでもある知り合いから話を聞いたり、関係性の面から近いものを探したりしました。
――島崎さんはいかがでしょうか。
島崎:杉田さんがおっしゃったとおり、といいますか。大事なのは“1つの特別な体験”ではなくて、日常の中から感情や感覚を拾い上げることなんだと思います。自分の感性だけじゃなくて、街角で酔った人の動きや、友達と楽しそうに話している人の表情も、それぞれから受け取るものがあるんです。もちろん、意識して見に行かないと手に入らないものがあれば、積極的に行動してみます。
役者を何十年続けられるかは分かりませんけど、人生の中で受け取ったものが積み重なっていって、役者としての自分に変化が生まれていくんだと思っています。大きな体験によって変わる部分もあるとは思うけど、長い目で見ると大事なのはそっちなんじゃないかなって。大先輩のみなさんを見ていると、特にそう感じます。
――積み上げた経験の厚みが芸を作っているのですね。『SAKAMOTO DAYS』でも、そういった厚みを感じたことはありましたか?
島崎:そりゃもう。冒頭ナレーションの大塚芳忠さんなんか、毎回素敵な演技をされていて、毎回しっかりと準備を重ねられている様子が感じられます。どれほどベテランになっても、積み重ねを続けているからこそ、あの厚みがでるんだなと、若輩ながら思っています。
杉田:実際に経験することも大事ですが、すべてを経験することはもちろん不可能です。でも、たくさんの経験を重ね合わせることで、経験したことがないものもイメージできるんですよ。
――放送を楽しみにされているみなさんへメッセージをお願いします。
島崎:今頃みなさんは、原作を楽しまれている頃かと思います。アニメも本当に楽しくて、毎週ウキウキしながら現場に行っています。キャラクターの通じ合いやドラマが楽しめるうえに、びっくり箱から面白いものがポンポン飛び出してくる。きっとみなさんにも、ぽかぽかとあったかく楽しんでもらえると思うので、ぜひご覧になってみてください。
杉田:おそらく、放送を待つみなさんは我々よりもより強い期待を抱いていると思います。我々は落ち着いて、そんなみなさんが楽しめるものを作っています。信じて、気負わず、坂本さんのお腹くらい柔らかな気持ちで、アニメを楽しんでみてください。
(取材・文:蒼之スギウラ 写真:吉野庫之介)
テレビアニメ『SAKAMOTO DAYS』は、1月11日よりテレ東系列ほか各局で放送開始。Netflixほか各プラットフォームでも配信予定。