プレミアリーグで今見逃せないクラブは? 水沼貴史がオススメのチームのよさを徹底解説

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2025年01月06日 07:10  webスポルティーバ

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プレミアリーグ中間地点のおススメ チーム編

ハイレベルな攻防を繰り広げている、イングランドのプレミアリーグが人気だ。シーズン半ばを迎えたが、今、見るのにオススメのチームがどこか。試合中継の解説を務める水沼貴史氏に教えてもらった。

【チームの幅が広がったリバプール】

 今季のプレミアリーグを語る上で、まずはリバプールを挙げないわけにはいかない。長期政権を築き、サポーターから特段に愛されたユルゲン・クロップからアルネ・スロットに指揮官が変わったことは、一大トピックだった。今季のリバプールがどう変わるのかは世界中が注目していた。

 スロット監督になってなにが変わったか。クロップ監督時代の強度が高く、縦に速いというよさは残しながら、対策を取られた時にポゼッションしましょう、少しボールを持ちましょうと。その質を上げることによって、相手を引き出して背後を取るなど、戦術的な部分でバージョンアップ、ブラッシュアップされている。

 そのなかで一番の変化はアンカーのMFライアン・フラーフェンベルフの存在。バイエルンやクロップ監督時代にはなかなか芽が出なくて、スロット監督になってようやく開花。代わりに遠藤航が出場機会を失ったのも仕方ないと思えるほど、ハイパフォーマンスを見せている。

 スロット監督がオランダ人であることは、大きい要素かもしれない。彼の能力を一番わかっているし、自分の戦術に落とし込んだ時に、彼の能力がどう生きるかもわかっている。それからコミュニケーションが取りやすくなり、求められる役割もわかりやすかったはず。

 それによって信頼を得られた部分はあったと思う。そこで感じたのは、選手は信頼されると伸びるということ。メンタル的な影響が大きいと思うけれど、それによって本来の能力が発揮されて、より伸びていく。やっぱり信頼されるのは大事だなとあらためて感じた。

 彼以外もFWモハメド・サラーやMFカーティス・ジョーンズ、MFドミニク・ソボスライなど、選手の能力を生かす眼、采配が適正だったと思う。それによってクロップ監督時代からメンバーはそれほど変わっていないけれど、強度は落とさずにチームとしての幅が広がって、プラスアルファが加えられている。

 ここまで首位を独走しているが、調子を崩す要素は見当たらない。先日(12月14日)のフラム戦は前半の早い時間帯に退場者を出して、ひとり少ないにもかかわらず、相手を圧倒するほどの勢いがあった。チームの自信や勢いがどこまで続くのか見ものだ。

【チェルシーの変化に感じる、リーグの質の高さ】

 チェルシーも、注目されているクラブのひとつ。今見ていて非常に面白いチームだ。ここ何年かは監督がすぐに変わってなかなかうまくいかなかったけれど、今季からエンツォ・マレスカ監督になって一番変わったと思うのは守備。FWノニ・マドゥエケが必死に戻って守備をしている姿を見て驚いた。

 それから今季絶好調のDFマルク・ククレジャも、相手から絶対に離れないというくらいタイトにいく。また、中盤のモイセス・カイセドやエンソ・フェルナンデスが、強力なフィルターとなって、そこで奪えれば縦に速く、そして今絶好調のMFコール・パーマーが違いを生み出してくれる。今季のチェルシーからは、守備の献身性、タイトさ、強度の高さを非常に感じる。ボールを奪われて攻め残りをする選手の居場所はもうない。

 ボールを奪われたらとにかくプレスバックをサボらず、チームとしてのコンパクトさを絶対に失わないようにするのは、リバプールやアーセナルも同様で、今のプレミアリーグはそれを標準として備えていることが、上に行くためには必要だなと感じる。それだけリーグ全体の攻撃の質が上がり、守備をサボってはいけないことを意味している。

 それから近年のチェルシーは、巨額の投資をし続けて、スカッドの分厚さはプレミアでも随一。2チーム分の戦力があって、チーム内競争の厳しさはすごいものがある。それが今のチームの成長にものすごく影響があると感じる。

 とくに今季加入したジェイドン・サンチョとペドロ・ネト、このふたりのウイングの加入は大きな戦力アップだった。トップはニコラス・ジャクソンが好調だけど、クリストファー・エンクンクもいる。

 そうした選手たちを多く抱えるなかで、マレスカ監督は非常によくマネジメントができているのだと思う。競争力があるということは試合に出られない選手も出てくるわけで、そこのモチベーションやコンディションの管理ができないとチームはうまく回らない。そこを巧みにターンオーバーして、チームを成長させている手腕は見事だと思う。リバプールにどれだけ食らいついていけるか楽しみだ。

【今季のサプライズはノッティンガム・フォレスト】

 アーセナルは昨季のメンバーを中心に、相変わらず守備は強固でセットプレーという武器も強力。MFマルティン・ウーデゴールがケガで離脱した時は少し調子を落としたけれど、戻ってきてからの復調ぶりを見るにあらためて彼の存在の大きさが証明された。

 そして今季のアーセナルが面白いのは、若手が台頭してきていること。メンバーを固定しがちなミケル・アルテタ監督だが、17歳のMFイーサン・ヌワネリ、18歳のMFマイルズ・ルイス・スケリーが使われるようになり、昨季とは違った若い力という魅力がある。ふたりとも10代とは思えない落ち着きとスキルがあり、これからの成長が楽しみだ。

 それから触れないわけにはいかないのが、マンチェスター・シティだろう。ジョゼップ・グアルディオラ監督がいる間に、こんな事態になるとは思いもしなかった。シティにしてはありえないミスがあまりにも多く、11月、12月の2カ月で2勝3分8敗と信じられない状況だ。

 原因は、おそらく相手のプレス強度がこれまでと違ってきていること。これまでは相手はシティのボールを取れないので躊躇してプレスに行っていたのが、今は強い意志を持ってプレスに行っている。

 たぶん「これくらいのプレスだったらシティの選手でも後ろに下げるぞ」というのが、相手もわかってきているのではないか、と思えるようなシーンが多く、シティにミスが増えてきている。そこへきてチームに安定感をもたらしていたロドリが長期離脱になったことで、歯止めが効かない。

 12月15日のユナイテッドとのマンチェスターダービーは、終盤に2点を決められて逆転されるという、ホームのエティハドで戦うシティとしてはあり得ない負け方をしていた。まるでトラウマを抱えているような状況に陥ってしまうのは、サッカーの恐ろしさだなと思う。ロドリの復帰やなにかをきっかけに持ち直す可能性は十分にあるが、それまでどうなってしまうのか全くわからない状況だ。

 最後に今季一番のサプライズと言えるのが、古豪ノッティンガム・フォレストの躍進だろう。しっかりとした守備をベースにサイドにはクロッサーがいて、前線のFWクリス・ウッドという大柄なターゲットにボールを集める、古きよきイングランドサッカーを感じるチームだ。

 センターバックにはムリーリョとニコラ・ミレンコビッチという個性のある面白いコンビがいて、前線のワイドにはFWカラム・ハドソンオドイやMFモーガン・ギブスホワイトという活きのいい選手もいる。どこまでビッグクラブを食い続けられるかはわからないが、フォレストは間違いなく前半戦を盛り上げてくれているチームのひとつだ。

後編「水沼貴史がおススメする今季プレミアリーグ注目選手につづく>>

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