限定公開( 17 )
『仮面ライダー』や『ウルトラマン』などのソフトビニール人形(ソフビ)の人気が過熱している。秋葉原に店舗を構える専門店「まんだらけCoCoo(こくう)」が2024年12月15日に開店5周年イベントを開催し、店頭でレアソフビの販売が抽選形式で行われた。当日は約650人が行列を作り、開店以来の大賑わいとなった。
当日、記者も取材を行ったが、20万円、50万円、80万円……といった高額のソフビが次々に売れていく光景に圧倒された。外国人の姿も多く、年齢も20代と思われる若者からベテランの風格が漂う年配コレクターまで、とにかくソフビ人気が国籍も年齢も超越し、拡大していることがよくわかるイベントであった。
記者はこのたび、5周年を迎えた藤田哲平店長にインタビューを行った。ソフビ人気が盛り上がった背景と現状、そしてこれから人気はどうなっていくのか…といった気になるポイントまで深掘りした。
――藤田店長は「まんだらけ」に2010年に入社されたそうですが、当時はソフビの人気はどうでしたか。
藤田:僕が入社した頃はソフビ人気が低迷していた時期で、インディーズソフビの価格が今と比べたら驚くほど安かったですね。僕自身は2002年くらいからソフビが好きなので、その頃からずっと価格の推移を見ていますが、2007年前後はそれまで1万円くらいのものが3万くらいに高騰するなど、人気が高まっていました。ところが、2010年頃になると一気に5000円くらいまで下がってしまったのです。
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――かなり激しく価格が下落したんですね。要因は何だったのでしょう。
藤田:2009年、怪獣太郎が発行していた「怪Zine」というフリーペーパーが11号で休刊した影響もあってか、人気が一時的に落ちたのです。それこそ、今ならコレクターが喉から手が出るほど欲しがるソフビがワゴンの山のなかに入っているような状態でした。
――信じがたい話ですね。ところが、その後にソフビ人気が復活しています。
藤田:InstagramのようなSNSの普及が大きく影響していると思います。個人で創作するソフビの情報が調べやすくなりました。ソフビはネットとの親和性が高いんですよね。それに、サイン色紙や原画などの直筆系や、カードやシールはファイルに入れて保存しなければいけませんが、ソフビの取り扱いはそこまで神経質になる必要がありません。コレクションを並べて飾って楽しめますし、それをSNSにUPすると映えるんですよ。
――ヴィンテージ玩具のなかでも、超合金は取り扱い方に関して気を使いますよね。
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藤田:超合金は保存の仕方をかなり気にする必要がありますし、劣化が怖いです。箱に入れて仕舞っているだけでも劣化するので、手入れが大変なのです。僕も以前に超合金をコレクションしていましたが、関節のところが劣化でバキバキ折れてしまって…それでやめました(笑)。ソフビは冬に硬くなる性質があり、硬いまま落下させるとパキッと折れたりするので、温度変化は要注意です。とはいえ、当社で扱う他のコレクションアイテムと比べたら、そこまで扱いが難しくはないと思います。
――2020年からコロナ騒動が起きましたが、その前年、2019年に「まんだらけCoCoo」がオープンしています。
藤田:2019年の12月にオープンしました。たった2ヶ月営業して、緊急事態宣言が出たときは、さすがに「ヤバッ」と思いました。ただ、12月の時点で、中国から来ていたお客さんが「新型のウイルスが流行っているので、気を付けたほうがいい」と教えてくれていました。なので、意識しながら営業はしていました。
――「まんだらけ」はコロナ期間中も店を閉めず、特に買取りの窓口はオープンにしていましたよね。
藤田:コロナ期間中は、確実に売るための人、買うための人しか来ないという状態でした。当社の買取りシステムを使って当面の生活資金を得られて、コレクションに助けられたというコレクターもいましたし、ライバルが少ない中でコレクションを充実させたコレクターもいました。10万円、50万円といった高額の買取りも多かったですし、地方から郵送で買取りを希望するお客様もいましたね。
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――コロナ期間中にはポケモンカードなどが高騰して世間を騒がせましたが、ソフビも値上がりしましたね。
藤田:コロナの時に富裕層が参入してきた影響が大きいと思います。自粛期間中に家にいて、SNSを見てソフビの存在を知り、並べたらかっこいいと感じた方が多かったようです。バッドボーイズの佐田正樹さんもコロナ期間中に本格的に集め始めたそうですし。また、創作ソフビはイベントが中止されたため、対面販売ができないので、SNS上で抽選販売を行っていました。こうして、SNSを通じてソフビを売買する流れが生まれていったと思います。
――最近の傾向では、若い人たちがソフビのコレクションをしていますね。しかも、ヴィンテージソフビを購入しているのには驚きます。
藤田:ファン層が広がっていて、20〜30代が増えました。やはり、YouTubeやInstagramの影響は大きいと思います。12月1日にも当店ではリニューアル記念のイベントを開催したのですが、開店前から列ができましたし、1〜2万円くらいするヴィンテージソフビを買う人が200人くらいいました。明らかに新しく加わったコレクターですね。
――といっても、ヴィンテージソフビの『ウルトラマン』や『仮面ライダー』を若い人たちはリアルタイムでは視聴していないわけですよね。どんなところに魅力を見出しているのでしょうか。
藤田:人それぞれ見るポイントは違うと思いますが、例えば、形がかわいいとか、レトロな雰囲気に魅力を見出しているのでしょう。1970年代に放映された『忍者キャプター』や『がんばれ!!ロボコン』のミニソフビを若い女の子が買っていたのには、びっくりしてしまいました。
――外国人にもソフビは大人気だそうですが、「まんだらけ」で買い物をするコレクター全体を見て、外国人と日本人の比率はどんな感じでしょうか。
藤田:僕の体感ですが、ソフビは意外にも、外国人より日本人に人気が高い気がします。確かに外国人は、株のような意識を持っている方がいますし、投資のような感覚で売り買いをしている例があります。しかし、日本人も決して負けていませんよ。12月15日に開催した5周年イベントには、10年に1回しか出てこないようなマニア向けのレアソフビなど、貴重な品物を出しましたが、日本人のお客様がたくさん並んでくださいました。
――この調子だと、若いコレクターはどんどん増えていきそうですね。
藤田:現在、ソフビは流行の真っただ中ですので、いつかブームは冷めると思うんです。ブームが終わってからも続けて集める人は、10%くらいではないでしょうか。マニアでも5〜10年続く人は珍しいですからね。とはいえ、20〜30代の人が一人でも多くソフビを愛する人が増えてくれるといいな…という思いはもちろんありますし、ぜひ続けて集めていただきたいなと思っています。僕は、ソフビは世界に誇る文化遺産だと考えています。熱心なマニアが増えてくれれば、次の世代にしっかりと受け継がれていきます。私たちはその橋渡しをしていきたいと思っています。
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