古くは「ここを勝つとクラシックに縁がない」と言われたシンザン記念(3歳・GIII・芝1600m)だが、今では誰もが認めるクラシックの登竜門だ。特に牝馬に限ると勝ち馬はもちろんのこと、負けた馬からも大物が続々と誕生。そこでこのレースをステップにGI馬に上り詰めた名牝を振り返る。
まずは07年のダイワスカーレットだ。単勝1.9倍の1番人気で参戦。3番手から押し切りを図ったものの、直後でマークするように運んだアドマイヤオーラに差され、自身初黒星となる2着に終わった。しかし、この敗戦を糧に、何より同期のウオッカとしのぎを削ることで大きく成長。同年の桜花賞、秋華賞、エリザベス女王杯を制し、最優秀3歳牝馬に選ばれた。さらに翌年には有馬記念を制覇。通算成績12戦8勝、2着4回の連対率100%という素晴らしい成績を残した。
続いては12年のジェンティルドンナを取り上げたい。未勝利を勝ったばかりとあって、後に重賞4勝を挙げるトウケイヘイローに続く2番人気での出走だった。それでもレースでは好位から抜け出して、1馬身1/4の着差以上の完勝。牡馬を完封したことで、一気にクラシックの主役候補に名乗りを上げた。その後の活躍は御存じの通り。史上4頭目の三冠牝馬に上り詰めると、ジャパンCではオルフェーヴルを撃破し、年度代表馬に選出された。その後も活躍を続けてGIを7勝。繁殖としても優秀で、産駒のジェラルディーナは22年のエリザベス女王杯を制している。
そして最近では何といっても18年の勝ち馬であるアーモンドアイだ。史上最強牝馬の呼び声もあるGI・9勝馬。その活躍ぶりは今更説明するまでもないだろう。あえてトリビアを挙げるなら、彼女がGI以外で唯一走った重賞がこのシンザン記念。また、当時の鞍上は戸崎圭太騎手で、全15戦の中で唯一、主戦のC.ルメール騎手以外とコンビを組んだレースでもあった。
他にも97年1着のシーキングザパール、11年3着のマルセリーナ、16年2着のジュエラーなど、このレースから多くの名牝が羽ばたいていった。今年はどんなレースが見られるのか、出走馬の今後も想像しながら楽しみにしたい。