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フランスのポアティエ大学などに所属する研究者らが発表した論文「Effects of repeated cryostimulation exposures on sleep and wellness in healthy young adults」は、「全身凍結刺激」(WBC: Whole-body Cryostimulation)が睡眠と健康状態に及ぼす影響について調査した研究報告である。
実験では、20人の健康な若年成人(女性9人、男性11人、平均年齢23±2.6歳)を対象に、5日間連続の全身凍結刺激介入とその効果を詳細に検証した。全身凍結刺激は1回当たり5分間、-90℃の冷却室で実施。参加者は下着と手袋、帽子、マスク、靴下、スリッパを着用して入室した。
睡眠の評価には、脳波計測が可能なワイヤレスヘッドバンド、睡眠パラメータを推定するアンチグラフ、夜間の心拍変動なども記録した。
実験の結果、全身凍結刺激の連続実施によって主観的な睡眠の質が向上し、スコアは3.6±0.5から3.9±0.3へと改善した。特に注目すべきは、女性においてこの効果がより顕著であったことである。また、睡眠構造の分析から、徐波睡眠(深睡眠)の持続時間が7.3±16.8分増加したことが明らかになった。徐波睡眠は、組織の回復、免疫系の強化、認知機能の維持に重要な役割を果たすことが知られている。
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心理的な効果も顕著であり、全身凍結刺激の実施によって気分や不安の状態が改善した。この効果も女性において特に顕著であった。女性被験者では不安レベルが43から38へと有意に低下し、総合的な気分スコアも12から1へと大幅に改善した。
夜間の心拍変動については、全身凍結刺激による有意な変化は認められなかったものの、性差が観察され、男性は女性と比較して心拍数が低く、心拍間隔が長い傾向を示した。また男性は副交感神経活動が高く、交感神経活動が低い特徴が見られた。
Source and Image Credits: Coralie Arc-Chagnaud, Olivier Dupuy, Manuela Garcia, Laurent Bosquet, Romain Bouzigon, Robin Pla, Arc-Chagnaud Coralie, Bosquet Laurent, Bretonneau Quentin, Delpech Nathalie, Dugue Benoit, Dupuy Olivier, Enea Carina, Pichon Aurelien, Tanneau Maxence et Theurot Dimitri, Couvertier Marien, Decatoire Arnaud, Monnet Tony et Samson Mathias, Sauvet Fabien, Sauvet Fabien, Morales-Artacho Antonio, Nedelec Mathieu, Pasquier Florane, Poignard Mathilde et Ruffault Alexis, Pla Robin, Bouzigon Romain, Bouzigon Romain, Bouzigon Romain, Benoit Dugue, Effects of repeated cryostimulation exposures on sleep and wellness in healthy young adults, Cryobiology, Volume 117, 2024, 104948, ISSN 0011-2240, https://doi.org/10.1016/j.cryobiol.2024.104948.
※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2
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