『孤独のグルメ』原作者の“リアルな一人メシ”に密着「曇ったプラスチックのコップもまた味があっていい」

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2025年01月08日 16:31  日刊SPA!

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久住昌之氏(66歳)・漫画家
この年末年始にテレビ東京で大量放映されて、高視聴率をマークした『孤独のグルメ』。2025年1月には映画版の公開や、「孤独のグルメ博」の開催、関連本の出版と相次いで“五郎まつり”の様相だが、それだけ人は「一人メシ」に惹かれるのかもしれない。
では、多忙な職業に就くあの人は、仕事終わりにどんな一人メシを決めているのか?食への隠れたこだわりやいかに? こっそり現場を覗いてきた。

◆久住昌之氏(66歳・漫画家)「出されたものをおいしく食べる攻略法を考える」
●神田「名代 天亀そば」の春菊天そば

「5〜6人入れば満席の店内で、椅子はもちろん、お盆もない。丼で受け取って狭いカウンターで食うだけ。券売機はなく、お店のおばちゃんに現金を渡して蕎麦と交換するスタイル。その立ち食い蕎麦屋での時間が、ここ半年で一番充実した“孤独メシ”でした」

漫画『孤独のグルメ』の作者の久住昌之氏がこう回想する、一人メシの体験がある。

出張のため早朝の新幹線に乗る予定だった久住氏は、都内のビジネスホテルに宿泊した。ホテルのある駅から少しだけ歩いた場所に、ポツンとある立ち食い蕎麦屋が気になり、「明日の朝ご飯はここにしよう!」と決意を固めていた。翌朝の午前6時過ぎ、向かったのは神田駅近くにある「名代 天亀そば」。老舗でありながら24時間営業という特徴ある立ち食い蕎麦屋だ。

◆醤油とだしの香りに食欲が刺激される店内

色褪せた暖簾をくぐると、醤油とだしの香りに早速食欲が刺激される。店内に食券販売機はない。心地いいチリチリチリ……という揚げ物の音をBGMにカウンターに並んだ各種天ぷらとメニューを見る。何を注文するか迷った挙げ句、最終的に注文したのは、春菊天そばだ。おばちゃんに490円を現金で支払い、春菊天そばを受け取った。

昆布とカツオのだしをベースにした甘めのつゆが葉物の天ぷらとよく合う。温かい汁に、素揚げに近い春菊天を浸すと、黄金色の油が浮いてくる。

店内には七味だけでなくイワシ煮干粉末などもあり、「味変」を楽しむ人もいるようだ。

一杯の蕎麦を完食した後、コップの水を飲み干した。

◆プラスチックコップの水も味わいがある

「曇ったプラスチックのコップもまた味があっていい。こんなときは、ビールが欲しいなんて思わない。大切なのは出された料理や、空間をその時その時に楽しめるかどうかだと思っています」

そのような発想の原点は学生時代にある。

「中学時代、白飯の上に油揚げが丸々一枚のってるだけの弁当を食べている同級生がいたんです。地味弁の極み。彼はごはんを食べるために油揚げをずらすと、はみ出た油揚げが机にたれている。ほかの同級生は笑っていたけど、ボクはちょっとキタナイけど(笑)なるほどそうなるか、ウマそうだなと見ていました。もともと出されたものをどう攻略すればおいしく食えるか考えるのが好きだったんです。例え、それがまずそうなものでも」

今日もまた、出会った料理と自分なりに向き合いながら「孤独のグルメ」を楽しむ。

【久住昌之氏】
漫画家、音楽家、イラストレーターや装丁家など、さまざまな分野で活躍。原作を務める代表作『孤独のグルメ』(作画・谷口ジロー 扶桑社刊)は映画化され、1月10日全国公開

<取材・文/週刊SPA!編集部>

―[密着ルポ 100%[孤独のグルメ]]―

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