年末年始をまたぎ、熱戦が繰り広げられている第33回高校女子サッカー選手権。3年ぶり4度目の頂点を狙う神村学園(鹿児島)と大会史上初の3連覇を目指す藤枝順心(静岡)が12日(日)激突する。
夏のインターハイの決勝で敗れた相手で、今大会は5試合で34得点無失点と圧倒的な強さを誇る藤枝順心を相手に「倒すのは私たちだ」と意気込んでいたのは大商学園(大阪)。インターハイ準優勝校は、リベンジを誓い神戸に乗り込んだが、準決勝の直接対決で敗戦し、夢半ばで大会から姿を消した。
U-17女子日本代表2人を擁する大会屈指のタレント集団だった大商学園。初戦からスタメン出場を続けた三島ゆな選手(3年)は、スタンドで見守る父に恩返しを誓うため、試合終了のホイッスルが吹かれる最後の時までピッチを縦横無尽に駆け回った。
悲しみを乗り越え、結果で恩返しを誓う「結構抜けてるところがあって、笑顔がチャームポイント」とチームメイトから評される三島選手。大会前には「このチームで日本一を取ることはもちろんですが、一番は結果で恩返しをすることが自分の目標」と意気込みを語っていた。その恩返しをしたい相手は、父・勇作さん。「高校1年生のころに母が病気で亡くなって、一番の支えとなってくれた」という。
三島選手を襲ったあまりにも早すぎる別れ。父は全力で支えてくれた。「毎朝朝練があるけど、毎日お弁当を作ってくれたり。仕事が夜遅くに終わることがあっても毎晩ご飯を作ってくれる。家事も毎日欠かさずやってくれる」。勇作さんは「娘は朝練で5時半に家を出るので、自分は4時半に起きてから弁当を作っている。なるべく娘のペースやルーティンを乱さないように心がけていた」と振り返る。
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「朝から晩まで働いて、お父さんにも悩みはあるはずなのに、私にはそういう面を一切表に出さないところがすごい」。三島選手は尊敬する父のために、日々の練習を乗り越えてきた。「母が亡くなってからずっと支えてきてくれているので、その日々の集大成として良い景色を一緒に見たい。結果で恩返しがしたい」。感謝を伝える最後の冬が始まった。
父の前で決めたゴール!三島選手が駆け抜けた最後の冬迎えた3回戦の鎮西学院(長崎)戦。この日もスタメンで出場した三島選手は応援席から勇作さんが見守る中、攻守にわたり全力疾走を繰り返した。大商学園は前半から押し込む展開。後半には味方の直接フリーキックのこぼれ球を三島選手が押し込み今大会初得点を挙げた。「娘が点を決めてくれるとやっぱりうれしい。久しぶりの得点だったので」と勇作さんは目を細めた。
試合後、三島選手が真っ先に向かったのは勇作さんの元。「ようやくゆならしいプレーになってきたな。よかったよかった」と勇作さんは労った。
「悔いなくプレーしたいし、結果を残して、家族に恩返ししたい」とインタビューに答えた娘の姿を見て、「年のせいなのか、涙が出てくる。娘はゴールを決めるまで苦しんでいたと思う。次の一戦も頑張ってほしい」。勇作さんは目頭が熱くなっていた。
最終的には準決勝で姿を消した大商学園。三島選手は日本一の夢を後輩達に託し、最後の冬を終えた。卒業後も大学に進学しサッカーを続けるという三島選手。親子の物語は続く。
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