ホストクラブで借金を抱えた女性客に売春などをさせる「悪質ホスト」の問題。警視庁はこうした女性を風俗店に斡旋するグループの解体へ向け、捜査を担当する部署に30年ぶりに「特別捜査本部」を設置しました。
車の後部座席でうつむく男。再逮捕された遠藤和真容疑者(33)は、大分県別府市の違法風俗店で働かせるために女性を紹介した疑いがもたれています。
この男が主導していたのが、スカウトなどおよそ300人を抱える巨大グループ「アクセス」です。
記者
「警視庁の捜査員が埼玉県川口市の風俗店に家宅捜索に入りました」
捜査を担当する警視庁保安課は「特別捜査本部」を設置。これは、1995年にオウム真理教の銃密造を摘発した事件以来、実に30年ぶりです。
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異例の体制で「アクセス」の解体に乗り出したのです。
“人身取引”とも言われる手口はこうです。まず、スカウトがSNS上で女性を勧誘。送らせた自撮り写真などをもとに、オークション形式で最も高い報酬を提示した店に女性を斡旋。
「スカウトバック」=紹介料として稼いだ総額は、70億円にも上るとみられています。
記者
「『スカウト』と検索すると、風俗店を紹介する多くのアカウントが出てきます」
投稿を確認すると、北海道から九州まで津々浦々の風俗店への斡旋情報が。こうした斡旋が絶えない背景には、“悪質ホストの問題”が潜んでいるといいます。
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今回、JNNは元スカウトの男性に話を聞くことができました。
元スカウト(20代)
「(Q.〔周りのスカウトが〕ホストから依頼を受けて風俗に斡旋したか)ありましたね。事実、うちの会社にもいましたね。やり方にもよると思うが、飲み屋でばったり会ったようなシチュエーションにしたりして、『これ仲良いスカウトなんだよね』みたいな。一緒に仲良くなっちゃって、『こっちで働いてみようよ』みたいな」
男性はホスト側にとっても、スカウトを通じて“女性の稼ぎを確認できる”メリットがあると話します。
元スカウト(20代)
「稼ぎが良い子たちはホストに通っている子たちだったり、何らかの理由で『絶対に今月いくら稼がないといけない』という子たちが多い」
これは、男性と女性との実際のやり取り。すぐにでも働きたいという女性の切実さが垣間見えます。
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女性
「そのあと即体(=即日体験入店)とかってできる?」
男性
「できるけどあんまりオススメはしないかなあ」
「働きたいかどうかは女性が決める」と話す男性ですが、それでも年収は多い時で2000万円あったといいます。
元スカウト(20代)
「風俗に関しては(店に)紹介してその子が働いて、稼ぎの大体10%〜20%がバックとして、その子が働いている限り入る」
「悪質ホスト」の被害者支援に取り組む団体にも、多くの相談が寄せられています。
女性客にツケ払い=「売掛金」を稼がせるためにホストがスカウトに女性を紹介し、ホストにも風俗店から紹介料が支払われるケースもあります。
こちらの女性も、ホストクラブで使う金を稼ぐため、スカウトを通じて風俗店で働き始めました。
スカウトを利用し働く女性
「先月は400万円ぐらい稼いで…。それをそのままホストにベットみたいな…」
しかし、そのホストからは。
スカウトを利用し働く女性
「『お前のこと金としか見てないんだよ』とか、『きょうも何時に仕事行くの。早く行けよ』みたいな感じで…」
女性は今も風俗店で働き、給料は全額、ホストクラブで使っているといいます。
青母連 田中芳秀 事務局長
「完全に人身売買だと思いますね。ホスト産業の中にも、スカウトも完全に入っているという形になってきて、ホストに借金を抱えることによって(女性が)性風俗に行かざるを得ない状況を作っているというふうになっているので、やっぱりそこが一番問題だと思う」
警視庁の取り調べに対し、遠藤容疑者は容疑を否認しています。
警視庁はスカウトグループ『アクセス』を、匿名・流動型犯罪グループ、いわゆる「トクリュウ」とみていて、悪質ホストクラブ問題も視野に組織の全容解明を急ぐ方針です。