【ニューヨーク、ロンドン時事】今月20日にトランプ次期米大統領の就任を控え、米長期金利の上昇圧力(債券価格には下落圧力)が強まっている。指標である10年物国債利回りは8日、一時4.7%超と昨年4月下旬以来約8カ月ぶりの高水準を付けた。同氏が主張する関税引き上げなどがインフレを再燃させ、減税が財政を悪化させる恐れがあるとの警戒感から、債券売りが加速した。
昨年9月中旬以降、米連邦準備制度理事会(FRB)は計1%の利下げを行ったが、長期金利は逆に約1%上昇した。トランプ氏が打ち出す高関税政策は輸入品の価格を押し上げ、大型減税措置は財政赤字を拡大させるとの懸念は根強い。市場では、長期金利が5%台に向かって上昇し続けるとの観測がくすぶり始めた。
不法移民の強制送還も人手不足を招き、サービス業の賃金上昇要因となる可能性がある。一方、足元の米景気が底堅さを示していることは、早期の追加利下げ見通しを後退させている。
インフレなどに対する根強い警戒から、英国をはじめとする欧州各国の長期金利も上昇傾向にある。英政府の歳出拡大方針などを背景に、英10年債利回りは8日、2008年8月以来約16年半ぶりに4.8%超に上昇した。