「広島での地位を捨てて来るのはすごい決断」と長沼も太鼓判 憧れの浦和で大ブレイクを期す松本泰志

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2025年01月09日 22:12  サッカーキング

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練習後、取材に応じた松本 [写真]=元川悦子
 2025年は9年ぶりのJ1タイトル奪回という大目標を掲げ、1月6日から始動した浦和レッズ。フィールドプレーヤー最年長となる原口元気も「優勝するために帰ってきたので、それだけにフォーカスしたいと思うし、責任を担いたい」と新たな決意を口にした。

 今季の浦和は6月からアメリカで行われるFIFAクラブワールドカップに加え、昨季出場できなかった天皇杯もあるため、超過密日程を強いられる。それだけに幅広い選手層が必要不可欠だ。

 タフな新シーズンに向け、今季は10人の新戦力を補強したが、昨季のサンフレッチェ広島でリーグ36試合出場3ゴールという目覚ましい成績を残した松本泰志は特に重要な人材と言っていい。

 実際、広島のミヒャエル・スキッベ監督は彼を中盤の主軸と位置づけ、大きな信頼を置いていた。2024年夏に川村拓夢と野津田岳人が移籍した際は、事実上の大黒柱として獅子奮迅の働きを見せていたほどだ。

「広島では本当にたくさんのことを学びました。直近で言えば、対人の部分や飛び出し、運動量、2度追い、3度追いといったフィジカル的な部分で成長できたと思います」と本人もしみじみと言う。それだけの恵まれた環境を離れ、あえて別のクラブに赴くというのは、やはり大きな決断に他ならない。

 そこは広島時代の元同僚である長沼洋一も神妙な面持ちで語っていた点だ。

「実は本人から『浦和からオファーが来たんだけど、どうしましょう』と相談を受けました。広島の地位を捨ててこのチームに来るのはすごい決断だと思います。『またここで広島みたいな地位を築いていけば、選手としてのレベルも上がっていくんじゃないかな』という話はしました」

 今回の松本のチャレンジは本当に特筆すべきこと。こういう勇気ある選手が“新生”浦和の起爆剤にならなければいけない。

 主戦場であるボランチに関して言うと、昨年9月のマチェイ・スコルジャ監督復帰後の浦和はかなり手薄な状況に陥っていた。本職は安居海渡とサミュエル・グスタフソンの2人だけで、原口や渡邉凌磨が務めるケースも散見された。そこに2024年Jリーグ優秀選手賞に輝いた男が加わったのは力強い要素となる。豊富な運動量や2、3列目からの飛び出し、ゴール前の推進力は攻撃の活性化にもつながるはずだ。

「(マチェイ)監督から求められていることはハッキリしています。8番のポジションから裏に抜けることは特に強く言われているので、自分のタイミングに周りが合わせられるような声かけとかをしていかないといけないと思っています」と本人もいち早くチームメートと特徴を理解し合い、ベストな関係性を作ろうと意欲を燃やしている。

 長沼は「彼は少しコミュニケーションが苦手なところがある」と評したが、幸いなことに今の浦和には接点のある選手が何人かいる。長沼を筆頭に、2019年のコパ・アメリカで共闘した安部裕葵、東松山市立北中学時代に在籍したクマガヤSCで1つ上に当たる金子拓郎、2つ上の吉田舜、同じ中学校で2学年上だった渡邉など面識のある選手が多いのは、追い風に違いない。彼らの力も借りながら、新天地適応がスムーズに進めば、開幕となる2月15日のヴィッセル神戸戦からトップパフォーマンスが期待できそうだ。

「広島の時は3バックで前線が1トップ2シャドーだったので、ボランチとシャドーの距離感が近かったですけど、4−2−3−1だと2列目との距離が少し遠くなる部分もある。その分、自分でボールを運ばないといけない局面も増えてくる。そこは意識して取り組んでいきたいですね。そして、できるだけ多くのゴール、アシストに絡んでいきたい。目標数字ですか?6番なので、6ゴール6アシストくらいかな」と松本は笑顔を見せていたが、本当にその数字を達成、越えることができれば、2019年以来の日本代表復帰も見えてくるかもしれない。

 幸いにして、今年は7月にEAFF E−1選手権が韓国で開催される予定になっている。同大会は欧州組が招集できないため、国内組だけで挑むことになる見込み。2022年大会で相馬勇紀と町野修斗が目覚ましい活躍を見せて、FIFAワールドカップカタール2022メンバーに滑り込んだように、まずはこの舞台に立つことが、松本の最初のハードルとなる。

「新しいチームに来たことで、つねに見られる対象になりますし、自分の活躍次第でチームが上に行けるかどうかが大きく変わってくる。だからこそ、しっかり活躍して、代表にも入っていきたいと思っています」

 地元である埼玉に戻り、心機一転、幼少期からの憧れのクラブで新たなスタートを切ることになった松本。家族や友人、昌平高校時代の恩師である藤島崇之元監督らも見守る中、もう一段階飛躍した姿を見せることが彼に託されたノルマだ。

 2025年Jリーグのスターになるべく、異彩を放ってほしい。

取材・文=元川悦子

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