コロナ後の航空業界「次の一手」に。キャセイパシフィック航空、ラウンジ&個室ビジネスが“超贅沢”だった

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2025年01月11日 16:20  日刊SPA!

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アリア・スイートのビジネスクラスシート
 航空データ調査会社「Cirium」によるとコロナ禍で輸送力(RPK)を落としたエアラインは、2021年実績で対2019年において100社の中で実に97社にのぼる。最大の危機を乗り越えて、2023年実績で黒字を計上するところが出てきた。
 この先に同様のパンデミックが起きた場合でも乗り切れるような財務体質の改善が積極的に行われている。エアラインでは、投資を再開し、機内プロダクトの充実や、ラウンジなど空港設備の拡充を行うエアラインが増えている。

◆存在感を高めるキャセイパシフィック航空

 コロナ禍では世界中の航空会社が売り上げを大きく落とした。そんな中、香港をベースにするキャセイパシフィック航空は、パンデミック後の需要回復を背景に、2023年の通期黒字化をバネに戦略的な投資を加速させている。

 2024年は、再建に向けた具体的な成果が現れ始め、同社の復活の兆しが感じられる年となった。とりわけ戦略的投資を通じて存在感を取り戻しつつある。特に香港を国際航空ハブとしてさらに強化する取り組みは、アジア全体の玄関口として経済活動を活性化させる可能性を秘めている。

 数字で表すと、中国方面に関しても大きく回復傾向にあり、2024年夏期スケジュールのピークから週68便の増(計456便、19年比 76%)を見込んでいる。比してキャセイパシフィック航空は、2025年の序盤にも2019年比の運航便数に戻る予測を立てている。

◆続々と機内プロダクト充実へ

 近隣アジアのエアラインでも動きがあった中、各社の内部投資の状況も見ておきたい。

 機内プロダクトの一例では、エミレーツ航空がビジネスクラス改修を実施しプレミアムエコノミークラスを登場させた。カタール航空は、Qスイートと呼ばれるビジネスクラスの改修を発表した。身近はところでは、JALが2024年早々に就航開始させた国際線機材エアバスA350-1000での各クラスの内装が話題となった。

◆今後の投資計画を発表

 キャセイパシフィック航空は、2024年8月には上半期の業績発表とともに、今後7年間で1000億香港ドル(約2兆円)を投資する計画を明らかにした。この投資計画は、以下のような分野に焦点を当てている。

1.顧客体験の向上
2.香港の国際航空ハブとしての地位強化
3.機材のアップグレードと客室プロダクトの改良
4.空港ラウンジの刷新
5.デジタル化の推進
6.サステナビリティへの取り組み

 これらの戦略により、キャセイパシフィック航空は競争力を取り戻しつつある。投資計画のうち、客室プロダクトの改良について2024年10月、新しいビジネスクラス「アリア・スイート」を装備したボーイング777-300ERを導入した。この客室は、プライバシーと快適性を重視し、革新的なデザインと機能を備えている。

 キャセイパシフィック航空日本支社の協力のもと、2024年12月に成田−香港往復便で運航していた新客室デザインのボーイング777-300ER機のビジネスクラスとプレミアム・エコノミークラスを体験することができた。

◆成田空港ラウンジとビジネスクラスを体験

 2023年2月にリニューアルした成田国際空港のキャセイパシフィック・ラウンジは、従来の2.4倍の広さとなり、大きく開かれた窓からは駐機する機体が並ぶのが見える。

 ワークスペースやシャワーを完備しており、巻き寿司、焼き魚、味噌汁など和食のほかカレーライスや中華粥、オードブルなど軽食を月替わりのメニューで用意されている。ラウンジ内は、フラワーデザイン会社の空間装飾に加え、有田焼の照明作品がディスプレイされ、落ち着いた空間が形成されていた。

 刷新された777-300ER機に搭乗してみると、機内の様子がいつもと違うことに気付く。入口付近が航空機というよりもオフィスの玄関口のように見えるのだ。格子の柱にロゴのブラッシュウィングが付けられ、淡い照明の中に浮かんでいる。

 香港ローカルのアーティストによるアートワークが出迎え、アリア・スイートの1-2-1配列の個室が整然と並ぶ様子が見える。

 フルフラットシートに加え、個別のスライドドアを装備し、ビジネス旅行者や長距離フライトの利用者に新たな選択肢を提供している。主翼前のNo2キャビンにまで続く45席が用意されている。座ってみると、目の前に24インチスクリーンが構えている。多くの収納とカスタマイズできる照明が居心地良い。

 機内食は、サラダ、日本蕎麦、パンが載せられたプレートに、うなぎとタコの前菜の皿があり、次にメインの煮込みチキンが運ばれた。食後には、各種チーズとフルーツが盛り合せられ、ハーゲンダッツのアイスクリームで締める内容だ。

 12月に乗務を開始したばかりの日本人客室乗務員のYukiさんは、広い座席と、大きなスクリーン、モダンなインテリアであることを強調してくれた。

◆香港のラウンジとプレミアム・エコノミークラスを体験

 香港では「ザ・ピア」ファーストクラスラウンジを経験した。朝、早い出発のためホテルでの食事は叶わなかったが、ラウンジではそれ以上のダイニングが用意されていた。洋食と中華の朝定食のある中で中華を頼むと、焼きそばを中心におかゆと小籠包が用意され身体を温めてくれる。

 他にアラカルトでワンタンメン、フルーツプレートやワッフルなども頼める。航空機が目の前の仮眠ソファなども見ることが出来て、快適さを垣間見ることが出来た。ファーストクラス利用者など利用条件をクリアした人はもちろん、全て無料で利用できる施設だ。

リニューアルされたプレミアム・エコノミークラスは、ヘッドレスト部分のデバイダーが大きくなっており、読書灯が装備されていた。シートは広い座席間隔に加え2-4-2の余裕のある座席幅と跳ね上がるフットレストなど、パフォーマンスが高いと感じられた。

 さらに、15.6インチの画面で楽しむ機内エンターテインメントや陶器の食器で食べる機内食の品質も高く、全体的なフライト体験は非常に満足のいくものだった。

 日本人客室乗務員のAiさんは、特にヘッドレストの隣席とのデバイダーでプライバシーが保てると話した。収納が増え、パーソナルな照明も自慢と話す。

◆最上の旅路で気になる運賃は

 これらの機内サービスは、成田から往路5時間、復路3時間半を過ごして香港へ導かれるのであるが、キャセイパシフィック航空の公式ホームページから予約を検索すると、閑散期の航空運賃は燃油サーチャージ込みでエコノミークラス往復6万420円、プレミアム・エコノミークラス10万1920円、ビジネスクラス18万8800円と出てくる。手の届かない範囲ではない。

 ビジネスクラス「アリア・スイート」をはじめとする新たなプロダクトは、顧客体験の質を向上させ、競合他社との差別化を図る重要な要素である。コロナ後の復活を遂げるエアラインとして、キャセイパシフィック航空の今後の動向に引き続き注目していきたい。

<取材・文・撮影/北島幸司>

【北島幸司】
航空会社勤務歴を活かし、雑誌やWEBメディアで航空や旅に関する連載コラムを執筆する航空ジャーナリスト。YouTube チャンネル「そらオヤジ組」のほか、ブログ「Avian Wing」も更新中。大阪府出身で航空ジャーナリスト協会に所属する。Facebook avian.wing instagram@kitajimaavianwing

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