<バレーボール全日本高校選手権(春高バレー)女子:共栄学園3−0下北沢成徳>◇12日◇最終日◇決勝◇東京体育館
女子は共栄学園(東京)が、05年度大会以来19年ぶり3度目の優勝を飾った。前回大会準優勝の下北沢成徳(東京)との9大会ぶり東京対決を3−0。エースの秋本美空主将(3年)が、両軍最多35得点でけん引し、大会最優秀選手賞も受賞した。スタンドで声援を送る12年ロンドン五輪銅の母愛さん(旧姓大友)にも勝利を報告した。男子は駿台学園(東京)が、東福岡をストレートで破り3連覇。全国総体、国スポとの「高校3冠」を果たした。
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秋本が整列するメンバーの顔を見回した。「待って。本当に日本一なの?」。自身のスパイクで19年ぶりの優勝を引き寄せても、実感はない。共栄学園のエースは、まだこの場所でバレーがしたかったのかもしれない。仲間にポンと肩をたたかれると、ようやく晴れやかな笑みが広がった。
「みんなが喜んでくれるのを見てると笑顔になるし、楽しかった」。東京予選など今季の公式戦で4連敗していた強豪を相手に、のびのびとぶつかった。第1セット(S)序盤からセンターポジションでの強打で得点を量産。大量リードで奪うと、第2Sも中盤に5連続得点をまとめて逆転連取した。第3Sも勢いで押し切り、ストレート勝ち。33本のスパイクと2本のブロックポイントなどで優勝へ導き「決めたいところで決められた」とうなずいた。
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にじみ出すワクワク感こそ、頂点へ必要なピースだった。母からの勧めで小2の時に始めたが、以前は見ることにもやることにも興味が持てなかった。23年3月。フル代表に選出されたが、知っている選手は「古賀さんと石川さんくらい」。当然、誰がどこのチームの所属かもわからない。合宿では真鍋監督に「最年少なんだからもっと早く練習に来なさい」と諭されるほど、意識は低かった。
希薄だった競技への思いは、高3になり、主将の責任感とともに膨れ上がっていった。初戦敗退を喫した1年前の春高。「こんなはずじゃない」と悔しさが込み上げた。必要だと気付かされたのは「いつも強気です」という母愛さんから説かれてきた気持ちの大切さ。「自分が引っ張っていかなければ」と、仲間のために腕を振ろうと決意した。この日も大声を張り上げて鼓舞。手厳しかった中村監督からも「以前とは比べものにならないくらいチームを引っ張っていた」とたたえられるキャプテンシー。高校最後の大会で花開いた。
日本一に輝いても、熱は増す。「優勝チームのエースは私なので、世代NO・1エースと誇りたい」と胸を張る。そして「日本代表に選ばれて次のオリンピックに出たい」ときっぱりと言った。高校卒業後は、将来的な海外でのプレーも視野に入れる逸材。秋本のバレーボールはここからが本番だ。【勝部晃多】
○…共栄学園の中村監督は「本当に成長したと思う」と選手たちを手放しでたたえた。3年生は「すごいメンバー」がそろったという代だが、今大会まで全国大会では1年時の春高8強が最高成績だった。「本当にプレッシャーだった。無理もさせられないし、ある程度理不尽なことをしないと立派なエースは育たない」と重圧と葛藤があったと吐露。最後の大会で有終の美を飾り「みんなの笑顔が良かった」と目頭を押さえていた。
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