佐々木朗希もついにアメリカへ! 「日本人初のサイ・ヤング賞」を獲るのは誰だ!?

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2025年01月13日 09:00  週プレNEWS

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今オフ、ロッテからポスティングでのMLB挑戦を目指す佐々木。複数球団による争奪戦が展開されている

野茂英雄がドジャースでトルネード旋風を起こしてから今年でちょうど30年。日本人の悲願である「投手最高の栄誉」を手にするのはいったい!?

【写真】投手史上最高額でドジャースへ加入した山本

■"確変"が必要な「投手最高の栄誉」

大谷翔平(ドジャース)が2024年に獲得した本塁打王や受賞したMVPの威光がまぶしすぎて、意外と見過ごされがちなのが「日本人初の打点王」を獲得したということ。

過去にはイチローが首位打者と盗塁王を獲得しており、日本人にとって野手タイトルは身近なものになってきたといえるかもしれない。

こうなると、投手タイトルでも「日本人には無理」という固定観念を覆してほしい。真っ先に思い浮かぶのは、いまだ日本人投手が受賞したことのないサイ・ヤング賞だ。

そもそも、この賞はなぜ投手最高の栄誉といわれるのか? 歴代のサイ・ヤング賞投手を詳しく分析してきた野球評論家のお股ニキ氏に解説していただこう。

「世界から才能が集まるMLBで、各リーグ15球団のシーズンナンバーワン投手に与えられるのがサイ・ヤング賞です。技術、メンタル、フィジカル、再現性、耐久性、頭脳......これらすべてで高いレベルが求められます。

月間5勝0敗、防御率1.00レベルの確変した投球を継続しなければ到達できません。さらに、ライバル投手を上回るちょっとした運も必要です」

その難易度の高さを知る上で最高の教材が15年ナ・リーグのサイ・ヤング賞争いだ。この年はジェイク・アリエタ(当時カブス)が22勝6敗、防御率1.77、236奪三振でサイ・ヤング賞に選出されたが、ほかにもすごい成績の投手が複数人いた。

「シーズンを通して防御率1点台だったザック・グレインキー(当時ドジャース)が19勝3敗、防御率1.66、200奪三振でも得票数2位。301奪三振を記録し、3年連続4度目の受賞を狙ったクレイトン・カーショウ(ドジャースFA)でも得票数3位。この年、ノーヒットノーランを達成するなど確変的投球が続いたアリエタの前に涙をのみました」

ちなみに、歴代最多受賞はロジャー・クレメンス(レッドソックスなど)の7回。現役投手では、前述のカーショウ以外にマックス・シャーザー(レンジャーズFA)、ジャスティン・バーランダー(アストロズFA)が3回、ジェイコブ・デグロム(レンジャーズ)、ブレイク・スネル(ドジャース)の2回と続く。

「共通するのは、環境に左右されず、いつもロボットのように淡々と同じ投球ができること。デグロムの全盛期は整いすぎていて人間味がありませんでした。

また、ノーヒットノーランを複数回達成できるような投手がサイ・ヤング賞を受賞する傾向もありますが、ノーヒットノーラン7回の記録を持つノーラン・ライアン(アストロズなど)はサイ・ヤング賞にまったく縁がなく、得票数2位が最高でした。制球に難がある投手は受賞しにくい、ともいえます」

■一番近づいたのは2020年のダル

日本人投手が過去、サイ・ヤング賞にどこまで近づいたかも復習したい。パイオニアの野茂英雄(当時ドジャース)はMLB挑戦1年目と2年目が共に得票数4位。松坂大輔もレッドソックス2年目の08年に得票数4位。

そして、日本人最多3度の得票経験を持つダルビッシュ有(パドレス)は、レンジャーズ時代の13年に日本人最高となる得票数2位となった。

「私は前年9月時点で『来年はダルビッシュとシャーザーのサイ・ヤング賞争いになる』と断言していました。結果はシャーザーが1位でダルビッシュが2位。3位の岩隈久志(当時マリナーズ)も素晴らしいシーズンでした」

ダルビッシュはこの後、カブス時代の20年にも得票数2位に。コロナ禍で短縮シーズンながら日本人初の最多勝に輝いたが、サイ・ヤング賞には届かなかった。

「19年終盤から20年終盤までを切り取ると、33試合で200イニング登板、防御率2点台前半、14勝。間違いなくサイ・ヤング賞に値する内容でした」

そんなダルビッシュを抑え、このシーズンでサイ・ヤング賞に輝いたのは、DeNAにも在籍したトレバー・バウアー(当時レッズ)だ。

「8勝3敗、防御率2.01のダルビッシュに対し、バウアーは5勝4敗、防御率1.73。ほかの数字を精査しても、ダルビッシュが僅差で上回っていたのではないか、というのが私の率直な感想です。.

大谷レベルで異次元の成績を残さない限り、MVPやサイ・ヤング賞のような投票形式のタイトルでは、日本人選手は票を集めにくい。残念ながら、そのような傾向はいまだに根強いです」

また、20年はア・リーグで前田健太(当時ツインズ)も得票数2位だった。

「20年の前田は11試合登板で6勝1敗。投球内容も素晴らしかったです。また、23年の千賀滉大(メッツ)も得票数では7位ながら実際は3位相当の投球内容でした。さらに、昨季の今永昇太(カブス)も得票数5位と健闘しました」

ここで気になるのは大谷だ。お股ニキ氏が「投手・大谷のベストイヤー」と語る22年は15勝9敗、防御率2.33ながら得票数は4位だった。

「さすがに3位にも入らなかったのは謎です。大谷ですら、投手としては『日本人に獲らせてなるものか』というガラスの天井と闘わなければならない状況でした。

大谷がキャリアハイの活躍を続けたこの2年で状況は変わったかもしれませんが、サイ・ヤング賞はそういった点でも非常に難易度が高いものなのです」

■最大のライバルは佐々木と山本を足し合わせた怪物

歴代日本人投手たちが届かなかった高き山。それでも、ここから数年はチャンスのはずだ。日本人最高の実績を持つ山本由伸(ドジャース)、日本人最高の素質を持つ佐々木朗希(ロッテからポスティング行使)の存在があるからだ。

「サイ・ヤング賞に一番近い日本人投手は佐々木、山本、大谷の3人でしょう。以前と違い、近年は200イニング登板が絶対条件ではなくなっていることも追い風です」

年齢やコンディションを考慮すると、トミー・ジョン手術を2度受けている大谷よりも、山本と佐々木に対する期待感のほうが大きいという。

「山本も佐々木も再現性が高い点は大きな魅力です。その上で、山本はシーズンを通して故障せず、配球やクセを見破られることなく、昨季のポストシーズンのような投球ができるかどうか。

佐々木も完全試合を達成した22年のような投球が求められます。7回1失点、10奪三振レベルの投球を継続できれば可能性はあります」

一方、日本人投手にとって最大のライバルとなりそうなのは、昨季のナ・リーグ新人王、ポール・スキーンズ(パイレーツ)だ。昨年5月にメジャーデビューした22歳の怪物右腕は、新人ながらオールスターで先発し、サイ・ヤング賞得票数では3位だった。

「あと1ヵ月デビューが早ければ、サイ・ヤング賞の可能性も十分ありました。バーランダーら球史に残る大投手に共通する、キャッチボール感覚なのに球がビシッと来る天性の感覚があります」

昨季最速164キロを誇ったライジングの速球だけでなく、コントロールも抜群で変化球も多彩。まさに佐々木と山本を足し合わせたような存在だという。

「回転軸を理解しているので、スラッターとスイーパーを投げ分けられる上に、カーブもある。

『スプリンカー』と呼ばれるスプリットとハードシンカーの中間球がありますが、155キロ以上出て落差もスプリット並み。さらに大学時代から投げていた140キロ程度のチェンジアップも驚異的。まさに非の打ちどころがありません」

お股ニキ氏は2年前から「日本人で初受賞するなら佐々木朗希」と発言してきたが、スキーンズを上回るための課題はなんなのか?

「大前提は22年のようなフォームと球質を取り戻し、常に安定して投げられるようになること。昨季のように出力を落とし、のらりくらり投げていてはかえって打ち取るのに時間がかかり、制球も乱れてケガの要因にもなります。

これまでは周りが制限をかけてきましたが、もう23歳。そろそろ自分で殻を破るときです」

お股ニキ氏は、「鍵を握る球種はフォーク」と指摘する。

「佐々木はもともとスライドするジャイロフォークが持ち味でした。しかし、昨季はスライダーと差別化させようとシュート気味のフォークに変えたことで、ストレートの質まで悪化。ストレートを生かす上でもジャイロフォークが最強なので、自信を持って投げてほしいです」

今年は野茂英雄のメジャー挑戦からちょうど30年。2025年、日本人投手はどんな伝説を残せるのか。今年もMLBから目が離せない。

文/オグマナオト 写真/時事通信社

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