岩隈久志が語る佐々木朗希のメジャー挑戦 重視される「イニング数の多さ」をクリアできるのか

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2025年01月13日 10:10  webスポルティーバ

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岩隈久志インタビュー 後編

(前編:田中将大は「本来のピッチングに近づいている」 巨人での200勝達成に向けた改善点は?>>)

 ポスティングシステムを利用してのMLB挑戦を目指すロッテの佐々木朗希。昨年12月10日に交渉が解禁されてから、移籍先のチームについてさまざまなニュースが飛び交っている。

 一方で、佐々木のメジャー挑戦を不安視する声も上がっている。3年目の2022年4月に完全試合を達成するなど能力の高さは誰もが認めるところだが、過去5年間、故障やコンディション不良でたびたび戦線を離脱。2024年は10勝を挙げて自身初のふた桁勝利をマークしたが、規定投球回に到達には至らなかった。

 そんな佐々木のメジャー挑戦について、シアトル・マリナーズでも活躍した岩隈久志氏はどう見ているのか。

【移籍交渉中の佐々木の心境は?】

――岩隈さんは2011年のオフにFA権を行使し、シアトル・マリナーズに移籍。しかしその前年には、ポスティングでのメジャー移籍を目指しながら移籍交渉がまとまりませんでした。現在MLB移籍を目指して交渉中の佐々木投手は、どのような心境でいると思いますか?

「まず、僕がポスティングシステムでのメジャー移籍に至らなかったことについて、多くの方が『交渉に失敗した』と認識していると思いますが、実際のところは球団との交渉がほとんどできないまま、契約期限を過ぎてしまったという状況でした。現在は、当時とは大きくシステムが変わり、オファーをかけている球団名や条件面が選手本人に明かされるようになり、その上で選手が行きたい球団を選べるようになりました。

 今回の佐々木投手の決断は『MLBに挑戦したい』という強い思いがあってのことだと思います。僕が現役の頃よりも、不安になる場面は少なくなっているでしょうから、きっと期待に胸を膨らませながら、チームが決まるのを楽しみにしているのではないでしょうか」

――ちなみに、岩隈さんが2011年のFAでマリナーズを移籍先に選んだのは、どこが決め手になったんでしょうか。

「ありがたいことにさまざまなオファーをいただきましたが、金銭面などの条件よりも、本当に自分のことを必要としてくれるか、自分が挑戦したいと思えるようなオファーかどうかを優先して交渉を進めていきました。あと、当時のマリナーズにはイチローさんが在籍していたので、日本人選手がプレーしやすそうに見えた点も影響したと思います」

――佐々木投手は、どのような基準でチーム選びを進めていると思いますか?

「佐々木投手は2023年のWBCにも出場し、アメリカでのプレーを経験しています。もしかすると、彼のなかには行きたいチームがあるのかもしれませんし、プレーしやすい環境や気候といった条件も照らし合わせながら考えているでしょう」

【多くのイニングを投げるために必要なこと】

――佐々木投手は過去5年間で、一度も規定投球回に到達したことがありません。そういった点は、獲得オファーに影響を及ぼすと思いますか?

「MLBの場合は、1年間怪我をせずにローテーションを守り抜き、年間を通して多くのイニングを投げることが日本よりも重視される傾向にあります。実際に、僕もマリナーズ時代に、監督から『勝利数よりも、1年間怪我をしないで投げてくれたほうがうれしい』と言われたことがあります。その点では、正直なところ、離脱が多い佐々木投手の現状を不安視する球団はあると思います」

――能力に関しては疑う余地がないと思いますが、イニング数を投げられる投手になるためには何が必要だと思いますか?

「球速は十分なので、少しずつコントロールの精度を磨いていくことが重要になるでしょうし、MLBでの成功に向けた近道になると思います。コントロールが安定しないと球数が増え、0点に抑えている試合でも長いイニングを投げられなくなってしまう。勝利数につながる部分でもありますが、イニング数などの数字を伸ばしていくためには、制球力が求められるでしょう。

 あとは、日本と違うボールやマウンドに対応したり、対戦する打者の特徴も新たに覚えなければなりません。それらに関しても、環境の違いを受け入れながら、しっかり学んでいくことが大切だと思います」

――岩隈さんもマリナーズ移籍後、投球の内容やスタイルが変わったんですか?

「そうですね。僕が日本で投げていた頃は、まだ"先発完投が当たり前"という風潮が残っていましたが、アメリカでは"100球以内で長いイニングを投げること"が重視されていました。そのため"決められた球数のなかでどのように試合を組み立てていくか"を考えることが増えましたし、よりメリハリをつけた投球を心がけるようになりましたね」

――佐々木投手のメジャー挑戦に対しては、「もう少しチームの勝利に貢献してから夢を追ってほしい」といった声も少なからず聞かれます。岩隈さんはどのように感じていますか?

「あくまで外から見た印象ですが、ロッテの首脳陣は佐々木投手の将来を見据え、とても大事に育てているように感じました。そういう経緯を見ていたファンの方々が、『もう少しチームに貢献してほしかった』『もう少し投げる姿を見たかった』という気持ちになるのは理解できます。ただ、ロッテ側が早めに彼の夢を応援することも含めてドラフト指名した可能性もありますし、一概には言えない部分ではありますね」

――メジャー球団との交渉期限は米東部時間で1月23日の17時(日本時間24日の7時)、その動向から目が離せませんね。

「まだ23歳と若いですし、本当に素晴らしい能力がある投手ですから、メジャー移籍が決まって、その舞台でどのような経験を積んでいくのか、とても楽しみです。将来的には、その経験を日本の野球界に還元して、次の世代の成長につなげていってもらえたらうれしいですね。さまざまな声もありますが、今はとにかく新たな挑戦を見届けたいです」

【プロフィール】

岩隈久志(いわくま・ひさし)

1981年4月12日生まれ。1999年にドラフト5位で近鉄に入団。2年目に初勝利、2003年に15勝を挙げるなどエースとして台頭。2005年には楽天に移籍して初代開幕投手を務めた。日本球界で通算107勝、沢村賞1度、最多勝2度など多くのタイトルを獲得。2012年にメジャーリーグのマリナーズに移籍し、7年間で63勝をマーク。2015年にはノーヒットノーランを達成した。2018年オフに巨人に移籍して日本球界に復帰し、2020年シーズンをもって現役を引退。2021年にマリナーズの特任コーチに就任。同時に、中学硬式野球チーム「青山東京ボーイズ」のオーナーを務めながら指導を行なっている。

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