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2025年01月13日 12:11 ITmedia PC USER
エレコムの「Touch Book for iPad 10.9インチ(第10世代)」(TK-CA12BPBK)は、第10世代の10.9型iPadと組み合わせて使う、キーボードと一体になった保護ケースだ。
iPadをノートPCスタイルで利用できるキーボードとの一体型ケースは、Apple純正の「Magic Keyboard Folio」を始め、サードパーティーではロジクール製品が高い知名度を誇るが、本製品はそのロジクール製品と直接競合しうる製品だ。メーカーから実機を借用したので、その特徴をチェックしていく。
●接続はBluetoothでケースは側面までしっかり保護
まず外見から見ていこう。タブレットにキーボード機能を追加するケースの中には、保護機能にはあまり注力せず、四隅や側面ががら空きになっている製品も少なくないが、本製品のケース部は、ポートやスピーカー、背面のカメラ部こそ露出しているものの、四隅を始めとして側面の大部分はしっかりと覆われており、ホコリや水滴の侵入を強固にブロックできる。
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またキーボード部はマグネット吸着式で、使わない時は折りたたんで画面を保護する構造になっている。キーボードはトラックパッドも搭載するなど、ロジクールの「Combo Touch」に近い性格を持っている。
背面には折りたたみ式のスタンドを装備しており、キーボード利用時などはこれを組み立てて背面から支える。不要時には平たく伸ばして背面に装着しておく構造なのだが、それゆえ背面にはやや段差ができてしまう。機能的には問題ないのだが、見た目の部分では少々マイナスだ。
ユニークなのは、この背面スタンドにペンホルダーが付いていることだ。Apple Pencilは充電する際にiPadの側面に吸着させるが、そのままバッグに入れて持ち歩けるほど吸着力は強くない。本製品がスタンド部に備えるペンホルダーに挿しておけば、持ち歩く時にも紛失を防げるというわけだ。
この場合、本製品の背面にペンを重ねて乗せる格好になるため、そのぶん厚みが増してしまうのだが、バッグの中でApple Pencilがどこに行ったか分からなくなるよりははるかにマシだろう。
重量は、iPad本体と合わせると実測で1003gあった。見た目のゴツさからも分かるように、決して軽量というわけではない。ただし、それと引き換えに四隅も含めてがっちり保護できるのが利点なので、それらも含めて評価したいところだ。ちなみにロジクールのCombo Touchは実測で1041gだったので、ほぼ同等ということになる。
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なおキーボード部はマグネットで吸着しており、不要な場合は取り外せる。キーボードは使わずiPadを立てて使いたいだけの場合、またiPadをケースから取り外すことなく単体で手に持って使う場合は、キーボードを取り外した方が取り回しは良くなり、軽量化できる。ちなみにBluetooth接続なので、キーボードは分離させた状態でも利用可能だ。
もう1つ、本製品のケース部に用いられている軟質樹脂はロジクール製品とよく似た質感だが、ロジクール製品はいったんiPadをはめ込むと取り外しに四苦八苦するのに対し、本製品はある程度融通が利く。常時iPadをケースに入れたままではなく、取り外す機会が頻繁にある場合は、ロジクール製品よりもお勧めできる。
またロジクール製品は、パームレストや背面などがざらざらしたファブリック調なのに対して、本製品は軟質樹脂そのままでツルッとしている。手の脂は目立ちやすいものの、ロジクール製品のざらざらした質感よりも本製品の方が好みという人は多いはずだ。気になるようならば店頭で確認することをお勧めする。
●キー配列は文句なしも挙動にやや問題あり?
それでは、本題のキーボードについて見ていこう。第10世代iPadはSmart Connectorを備えていないので、本製品の接続方法はSmart Connectorではなく、Bluetoothとなる。
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キーは日本語JIS配列を採用する。キーは6段あり、最上段にはマルチメディアキーが用意される他、左端にはEscキーも用意されているので、漢字の変換候補をEscキーで取り消すなど、Windowsのキー操作のクセが付いている場合も使いやすい。ちなみに、キートップに印字されているのはアルファベットのみで、かなは印字されていない。
キーピッチは実測17mmで、ロジクール製品のように主要キーのピッチを優先して利用頻度の低いキーのピッチを詰めたり、配列まで変えてしまったりするのではなく、それらを維持したまま全体的にキーピッチを狭くする仕様で、方向性の違いが如実に出ている部分だ。やや狭めなのが気になる人もいるだろうが、個人的には評価したい。
本製品で問題なのは、こうしたキー配列よりもキーストロークの深さだ。本製品のキーストロークは約1.3mmあるのだが、しっかりと底につくまで押し下げないと認識されないため、Magic Keyboardと同じ感覚で入力すると、押したはずの母音や子音が認識されずにローマ字入力が不完全になることがある。ごくまれにではなく、10文字に1文字程度というそこそこの頻度で発生するので悩ましい。
これらの症状はゆっくりタイプすればやや抑えられるため、慣れ次第ではどうにかなる部分ではあるのだが、高速にキー入力できないのでは本製品の存在意義が失われてしまう。後述するトラックパッドの問題と併せて減点要因となる。
ロジクール製品にあって本製品にない機能として、バックライトが挙げられる。そのため薄暗い場所でもキー入力しやすいロジクール製品に対して、本製品は使う場所を選ぶ形になる。人によっては重要視するであろうポイントなので要注意だ。
トラックパッドについても、やや減点要因となる部分だ。面積が広いこと自体は評価できるのだが、クリック感が安っぽく、ポインターの位置をずらさずにクリックするのが非常に難しい。
またパームリジェクションがうまく作動していないのか、他のトラックパッド搭載キーボードと違ってテキストを入力し始めてもポインターが画面に表示されたままになり、タイプ中にポインターがあらぬところに飛ぶという現象が多発する。勝手に日本語変換が確定されてしまうこともあり、落ち着いて入力していられないというのが正直なところだ。
試した限り、「アクセシビリティ」→「ポインタコントロール」の「トラックパッドを無視」をオンにしたり、「一般」→「トラックパッド」の「ナチュラルなスクロール」をオフにしたりするといくらか改善は見られたが、Smart Connectorで接続するMagic Keyboardやロジクール製品ではこうした症状は発生しないので、本製品の気になる部分となる。
●実売1万4800円という安さは強みだが……
最後に充電回りを見ていこう。キーボード部の右側面には、電源ボタンとUSB Type-Cポートが用意されている。第10世代iPadは本体ポートもUSB Type-Cなので、USB Type-Cケーブルが1本あれば、iPad本体も本製品も充電できる。
電源ボタンはスライドスイッチで提供されており、使わない時はオフにしておける。本製品は一定時間未使用だと自動的にスリープになる機能も備えているが、この物理ボタンを使えばよりスピーディーに電源のオン/オフを行える。
以上ざっと見てきたが、そんな本製品の最大の強みは価格だ。実売1万4800円ということで、実売2万円半ばのロジクール製品と比べると大幅に安い。またApple純正のMagic Keyboard Folioは実売4万2800円と高価なだけでなく、側面が覆われておらず保護性能では疑問符がつくので、そうした点でも本製品の方が有利だ。
もっとも、本製品は前述のようにキーやトラックパッド回りの挙動に問題があり、積極的にはお勧めしづらいのも事実だ。コストパフォーマンスの優秀さにおいては本製品の右に出るものは少なく、またSmart Connector対応のキーボードと違って本体から分離させた状態でもタイプできることも用途によっては便利なだけに、非常に惜しい。現状では「価格相応」という評価にならざるを得ないだろう。
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