◆ 白球つれづれ2025・第2回
新年早々、日本球界では楽天の宗山塁選手がスポーツ紙の1面を賑わせている。
1月9日に始まった新人合同自主トレでは、早速華麗なフイルディングを披露すれば、翌10日には12球団のルーキーたちが一堂に会した新人研修会が都内で行われ、熱視線を集める。
同会議で講師役を務めたレジェンド・鳥谷敬氏からは「顔もいいですし、そういう選手が活躍すれば、見ている人を魅了できる」と、甘いルックスまで含めたスター候補生に期待を寄せられた。
「20年に1人の逸材」と評される黄金ルーキー。昨年のドラフトでは5球団が競合の末に楽天が抽選で1位指名を引き当てた。
明大時代は1年から遊撃手を任されると、4年間で打率.344、本塁打6本に60打点。リーグ戦の首位打者を獲得した打撃以上に高い評価を集めるのが華麗な守りだ。備範囲は広く、強肩で、グラブさばきはすでにプロでも上位にランクされるほど。加えて主将としてのキャプテンシーに、端正なマスクと非の打ち所がない。
そんな宗山の当面の目標は遊撃手として定位置を確保して、フルに活躍する事。だが、チーム内には昨年、急成長した村林一輝選手という手強いライバルがいる。こちらも幅広い守備と勝負強い打撃で売り出し中の男だ。
三木肇新監督は、当面二人を競り合わせる方針だが、チーム内では新たな動きも見えている。昨年、二塁から三塁にコンバートされた浅村栄斗選手を、今季はさらに一塁に再コンバートすることが明らかになっている。
これは何を意味するのか? 宗山も村林もレギュラーとして起用したい。二塁には昨年ベストナインに輝いた小深田大翔選手がいる。そうなれば「20年に一人」の大物ルーキーをいきなり三塁にコンバートするとは考えられない。チームとしても若いスター選手は喉から手が出るほど欲しい。キャンプ、オープン戦でレギュラーとして起用できるのか、最終判断は持ち越すものの、よほどのことがない限り宗山の遊撃手、村林の三塁で開幕を迎えることになるだろう。
宗山のプロ入りで、にわかに脚光を浴びるショートのポジションだが、実はここ数年で勢力図に大きな変化が生まれている。「10年に一度」の黄金時代の到来と言ってもいい。要因は巨人・坂本勇人選手の三塁コンバートと、若手選手の台頭だ。
直近10年の遊撃手と言えば、坂本とパリーグでは源田壮亮(西武)、今宮健太(ソフトバンク)の3強時代が続いてきた。この間のゴールデングラブ賞の遊撃部門を見ると、源田が7度、今宮が3度。セでは坂本が5度受賞している。
だが、セ・リーグでは22年から長岡秀樹(ヤクルト)、木浪聖也(阪神)、矢野雅哉(広島)各選手が受賞。
そればかりではない。オリックスの紅林弘太郎選手はすでに侍ジャパン入りしているし、DeNAの森敬斗選手も昨年急成長して下剋上日本一に貢献している。これに宗山や村林らの楽天勢、巨人の門脇誠選手らを加えれば、まさに多士済々の顔ぶれだ。
遊撃手は「野手の華」と言われる。投手や外野との連係プレーは二塁手と変わらないが、一塁への距離が遠い分、幅広い守備力に強肩まで求められる。間一髪のプレーが多い分、ファインプレーが引き立つ。不動のレギュラーがいれば、中々、後任は育ちにくいポジションでもあるが、これだけ才能豊かなショートストップが揃うのも珍しい。
かつては守備さえできれば文句なしとされた遊撃も、近代野球では打撃も求められる。
「白球の申し子」と言われる宗山は、日本一の名手・源田や「忍者守備」と呼ばれる矢野の牙城にどこまで迫れるのか?“投高打低”の時代にあってどれほどの打撃を見せることが出来るのか?
今から2月1日のキャンプインが待ち遠しい。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)