三菱電機の霧ヶ峰PR事務局は「室内寒暖差に関する調査」をもとに、冬場を快適に過ごすための「エアコンの上手な活用方法」を2025年1月7日に公開した。調査は、2024年11月29日〜12月1日の期間、全国の30〜50代の男女600名を対象にインターネットにて実施したもの。
■寒暖差対策を実施している人の割合は?
室内で感じる寒暖差が気になったことがあるかとの質問に対し、「気になったことがある」(80.5%)と、約8割が回答。一方、室内の寒暖差が気になるにも関わらず、何かしら対策を実施している人は37.8%にとどまり、約6割の人が対策を実施していないことが明らかになった。
対策を行わない理由には、「対策の仕方がわからない」(43.7%)が最も多く、「対策をするのが面倒」(34.6%)、「コストがかかる」(19.4%)と続いた。
調査の結果を踏まえ、三菱電機のエアコンのプロ・久田優美氏と、住環境の専門家である東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 准教授の前真之氏から、室内寒暖差が発生する要因と、「部屋内」「布団内と寝室」「部屋ごと」に行う対策について紹介していく。
■日本の戸建て住宅は「室内寒暖差」が発生しやすい?
冬場における日本の一般的な戸建て住宅は、欧米諸国の住宅と比較して、室温を十分な高さに保てていない傾向にあり、さまざまな室内寒暖差が発生しやすくなっているという。
それらの要因として、「住宅の断熱(熱の出入りを防ぐ)・気密(空気の出入りを防ぐ)性能が低いこと」や「住宅全体に熱と空気を循環させる工夫が備わっていないこと」があげられるのだそう。
近年、断熱・気密性能が高い住宅や全館空調を採用する住宅が増えてきてはいるものの、「家全体が均一にあたたかい状態」を実現できている住宅はまだまだ少ないのが現状だという。
■「部屋内の寒暖差」の要因と対策
「顔まわりは熱いのに足元が寒い」といった部屋内の寒暖差が発生する要因には、エアコン暖房の暖気が部屋全体にうまく行きわたらないことや、断熱・気密性能が低いことで住宅の隙間から冷気が侵入し、あたたかい空気が出て行ってしまうことにより発生するという。
部屋内の寒暖差をなくすには、なるべく暖気をまんべんなく部屋に行きわたらせることが重要。その対策について紹介していこう。
1. 風向は60度以上「下向き」に、風量は「強め」に設定
あたたかい空気は軽く、部屋の上部に溜まりやすいため、風向は下向きに設定し、床をつたってあたたかい空気が部屋に広がるようにすると良いとしている。また、風量が弱すぎると温風が床付近に届く前に舞い上がってしまうため、風量はやや強めに設定しよう。
2. サーキュレーターの併用で部屋全体の空気を循環
エアコン暖房とサーキュレーターを併用すると、天井付近に溜まったあたたかい空気を部屋全体に循環させられるのだそう。併用する際は、サーキュレーターをエアコンの対角線上に置き、エアコンの吹き出し口に向けて風を送ると良いとしている。
なお、サーキュレーターをエアコンの対角線上に設置できないときは、部屋の中心に置いて真上に風を送り、床付近の冷たい空気を上昇させることで部屋に空気の循環が生まれるという
3. 暖房の空気があたる場所に家具を置かないようにする
エアコン暖房のあたたかい空気をさえぎることなく、部屋全体に暖気を行きわたらせるには、家具の置き方が重要。あたたかい空気がソファーやテレビなどの家具にあたらないように、配置場所を工夫しよう。
■「窓付近」でできる対策とは
窓ガラスは、熱の流出が住宅の中で最も多く、無断熱の窓がある部屋ではエアコン暖房をつけていても約半分程度の熱が窓から出て行ってしまうことに加え、外の冷たい空気の影響も受けやすいのだとか。
内窓をつける以外にも、「窓付近」でできる対策を2つ紹介していく。
1. ポリカーボネート板を貼る
ポリカーボネート板とは、ホームセンターなどで購入できるガラスよりも優れた断熱・保温効果が特徴のプラスチック素材。窓ガラスとポリカーボネート板の間にできる空気の層が冷たい外気を遮断し、室内の暖気を逃しにくくするという。
前氏の研究室が実施した試験によると、ポリカーボネート板を窓に貼ることで、熱の流出量を53%も減らせることが判明したのだそう。
2. 断熱性の高いカーテンなどを設置
ここでは、断熱性の高いカーテンかハニカムスクリーンをつけることを推奨している。
カーテンは厚みがあり、裏地がついているものを選ぶのがポイント。また、生地の断面が蜂の巣状になっているハニカムスクリーンは、高い断熱性と保温効果をもつという。
しかし、どちらも長さが足りないと下の隙間から冷気が部屋に侵入してしまうため、窓全体を覆える長さのカーテンやハニカムスクリーンを選ぶのがおすすめとのこと。
ちなみに、断熱シート・気泡緩衝材を貼る対策は、実はあまり効果が期待できないのだそう。前氏の研究室が行った試験によると、断熱シートや気泡緩衝材では、通常の窓に比べ、熱の流出量をそれぞれ8%、18%しか減らせないことがわかったという。
■「布団内と寝室の寒暖差」が発生する要因と対策
太陽が出ていない夜の間に地面から熱が放出されることで気温が下がる"放射冷却"により、深夜から明け方にかけて気温が最も低くなるという。そのため、断熱性能が低い家や、エアコン暖房を寝るときに消す場合、寝ている間に寝室の温度は大きく下がってしまう。
ではどう対策すればいいのだろう? 2つ紹介していこう。
1. エアコン暖房を一晩中つけておく
室温を一定に保つためにも、18〜23℃くらいの設定温度で、就寝時はエアコン暖房を一晩中つけておくと良いとしている。乾燥が気になる人は、就寝前にのどを潤す程度の水を飲んだり、就寝場所近くで洗濯物を室内干しするなどの乾燥対策をしよう。
2. 「起床1時間前、室温18〜23℃」でタイマー機能を設定する
基本は、一晩中エアコン暖房をつけておくことを推奨としているものの、電気代が気になる場合は、就寝前に起床1時間前、室温18〜23℃でタイマー機能を設定すると良いとしている。
起床のタイミングに合わせて事前に部屋をあたためておくことで、朝起きて布団から出る際の寒暖差を減らすことができるという。
■部屋ごとの寒暖差対策とは
特に寒暖差を強く感じる入浴前後の洗面所や浴室では、小型ヒーターや浴室暖房機などを用いてあらかじめ洗面所をあたためておくと良いとしている。ほかにも、手間やコストがかかってしまうものの、住宅に全館空調を導入することで、洗面所やトイレ、浴室といった住宅で寒さを感じやすい部屋においても快適な温度を保つことができる。
前氏によると、日本の住宅の断熱性能不足と特有の間取りのために、部屋ごとの寒暖差は簡単に解決することが難しいとのこと。根本的に解消するには、全館空調の導入と併せて断熱改修を行うことがおすすめとしている。
手軽にできる対策として、まずは熱が最も逃げやすい「窓」、次に冷気が侵入しやすい「床」を優先、余裕があれば「天井」、さらに「壁」まで改修できるとなお効果的だという。
○【解説者】
三菱電機 空調冷熱システム事業部 久田優美氏は、入社以来、家庭用エアコンをはじめ業務用エアコンまで幅広く担当。現在は、テレビやWEBメディアを通じて、エアコンに関するお役立ち情報を発信している。
前真之氏は、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 准教授。学生時代から25年以上に渡り、一貫して住宅の省エネルギーや温熱環境を研究している。暖冷房・通風・自然光利用・給湯など幅広いテーマを研究対象とし、実住宅の設計支援も行っている。一般向けの情報発信として「エコハウスのウソ」シリーズ(日経BP)を10年以上にわたり執筆中。(MN ワーク&ライフ編集部)