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三菱UFJ銀行の東京都内の支店の貸金庫から顧客の金品を繰り返し盗んでいたとして、警視庁捜査2課は14日、元行員の今村由香理容疑者(46)=東京都練馬区=を窃盗容疑で逮捕した。2020年4月ごろから約4年半で、顧客60人以上から計約17億円相当の金品を盗んだとみられる。
逮捕容疑は24年9月下旬ごろ、支店長代理を務めていた練馬支店の貸金庫室に侵入し、行内に保管されていた「予備鍵」とマスターキーを使って、都内の男性顧客2人が利用する貸金庫を開け、金塊あわせて約20キロ(時価総額約2億6000万円相当)を盗んだとしている。
警視庁によると、今村容疑者は「間違いない」と容疑を認めているという。これらの金塊は、都内や千葉県内の計7カ所の質屋に入れ、計約1億7000万円を借り入れていたとみられる。
今村容疑者は遅くとも5年ほど前から、外国為替証拠金取引(FX)への投資や競馬などで多額の損失を出していたという。FXだけでも約10億円の差し引き損があり、消費者金融にも借金をしていたとされ「返済に窮していた」などと供述している。
当初は貸金庫から現金を盗んでいたが、金塊も盗み、質入れするようになったという。盗み出された現金は約10億円、金塊は時価総額で約7億円以上に上るとみられる。
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盗んだ金品は貸金庫の顧客が来店した際などに、他の顧客の貸金庫から一時的に補塡(ほてん)していた。その際、金品の移動を携帯電話で写真に記録しており、盗難が発覚しないように帳尻を合わせる「自転車操業」を繰り返していたとみられる。金塊はシリアルナンバーを確認して、同じ物を質請けして貸金庫に戻し、発覚を防いでいた可能性がある。
三菱UFJ銀行は今村容疑者について勤務先の練馬と玉川の2支店の貸金庫から、顧客の現金や金塊などの貴金属を繰り返し盗んでいたとして、24年11月に懲戒解雇。翌月、警視庁に窃盗容疑で刑事告発していた。
同行によると、今村容疑者は貸金庫に金品がないなどとの顧客の問い合わせに対しては、後日「金庫室に落ちていた」などと説明してやり過ごしていたという。
貸金庫の中身を確認しに来店した想定外の顧客に対しては、貸金庫システムの電源を切って故障を装うなどして発覚を回避していたという。
今村容疑者は両支店で、貸金庫業務をほぼ1人で担当し、立場を悪用して貸金庫の鍵を無断で開けていたとみられる。今回の問題は、24年10月に顧客からの指摘があるまで発覚しなかった。同行は再発防止策として、予備鍵の対策を強化する。1月中に各拠点ではなく本部での一括管理に移行するとともに、複数の人員でチェックする体制を整備する方針を示している。
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同行では貸金庫事業を全国約300拠点で展開し、約13万件の契約がある。年1万5000〜3万円程度で利用でき、主に株券や契約証書といった重要書類や貴金属などを預け入れる用途が想定されている。
一連の問題を巡り、金融庁は24年12月、同行に対して銀行法に基づく報告徴求命令を出していた。同行は被害に遭った顧客への弁済を進めている。【遠藤龍、木下翔太郎、浅川大樹】
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