あなたの周りにいないだろうか? 難易度の高い仕事をいくつも抱えているのにもかかわらず、涼しげな表情でサクサク仕事をこなす同僚が。
【画像】なんであんなに余裕そうなの? 「スケール推定」が上手にできている人の思考パターン
コンサルタントの中にも超高性能マシンのように大量の仕事を効率的に処理する者がいる。驚くべきは、その際に常に感情をコントロールできていることだ。憎らしいほどに淡々と重圧のかかるような仕事をスイスイこなす。
そんな敏腕コンサルタントがいつも無意識のうちに使っているのが「スケール推定」だ。
このスキルを学び、身に付けるだけでどんなに状況が変化したとしてもサクサク仕事を片付けられるようになる。
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●「スケール推定」とは何か? 具体的な3つの手順
「スケール推定」とは、著者の造語である。主に作業時間を概算するときに使う。作業計画を立てるときや、状況に応じて慣れない仕事をするときにとても役立つ。
例えば上司から突然、「新規開拓用のリストを作ってくれ」と仕事を頼まれたとき、どんな感情を抱くだろうか。
過去にほとんどやったことがない場合、「面倒だな」「忙しいのにそんな時間はない」とついつい思ってしまうことはないだろうか。思考ノイズが頭の整理を邪魔して「面倒だ」「気分が乗らない」という感情に支配されてしまう。だからこそ、ついつい先延ばしにしてしまうのだ。
そんなときは「スケール推定」を使って作業時間を見積もればいい。グダグダ考える前にどれぐらい時間がかかるのかをざっくり概算してみるのだ。そうすれば不思議と感情がコントロールしやすくなる。余計な思考ノイズが減って気持ちが軽くなるからだ。
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「スケール推定」のポイントは次の3つだ。
1. 細かく分解する
2. 極端な数字から近づける
3. 実践後に記録する
1つ目のポイントは、できる限り分かりやすい単位に分解することだ。例えば、新規開拓用リストの作成であれば「新規開拓用リストの作成はどれぐらいの時間がかかるか?」と自問自答しても概算するのは難しい。だから、まずは必要なタスクを紙に書き出してみるのだ。
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・新規顧客の条件を確認する
・顧客データベースから条件に合ったデータを抽出する
・新規顧客リストのフォーマットを作成する
・新規リストのフォーマットに抽出データをペーストする
このようにタスク分解すれば、概算しやすくなる。実際に概算した数字を当てはめてみよう。
・新規顧客の条件を確認する(10分)
・顧客データベースから条件に合ったデータを抽出する(2分)
・新規顧客リストのフォーマットを作成する(15分)
・新規リストのフォーマットに抽出データをペーストする(2分)
一つ一つのタスク処理にかかる時間を大体でいいので見積もれば「アタリ」をつけられる。
「新規顧客の条件さえ分かれば、30分以内で終わりそうだ」
細かく分解することで、このように精度の高い仮説が出来上がる。
●なぜバカバカしいほど極端な数字から始めるのか?
「スケール推定」の2つ目のポイントは、極端な数字をうまく使うことだ。
経験がなく、全く見当がつかない数字を見つける場合は、極端な数字から考え、正解に近づけるほうがいい。慣れると、とてもカンタンに「スケール推定」ができる。
例えば、分厚い資料を渡されて、「全て読み込んで分析して」と言われても、一度もやったことがない仕事ならどれぐらいの時間で終わるかまるで想像がつかない。そういう場合は、いったん「バカバカしいほど極端な数字」からスタートして正解に近づけていく。この分厚い資料を読み込むのに、
・1年かかるか?
・半年かかるか?
・1カ月かかるか?
・1週間かかるか?
・1日かかるか?
このように予想していくのだ。最初から正解に近い値を考えようとすると思考停止になってしまう。「見当もつかない」だと、無意識のうちに考えることを拒否してしまうのだ。
しかし「1年かかるか?」とバカバカしいほど大きな数字からスタートすると、頭は回転し始める。そして、すぐさま「ノー!」という答えを出してくれるだろう。
「半年かかるか?」「1カ月か?」「1週間か?」と自問自答しても同じだ。即座に「ノー!」と答えが出るようになり、滑らかに頭が回るようになる。まさにこれは思考のウォーミングアップのようなものだ。頭の準備体操が終われば、
・6時間かかるか?
・3時間かかるか?
・1時間かかるか?
と徐々に現実的な正解に近づいてきたとしても、正常に考えられるようになる。思考停止にならずに済むのだ。
「3時間はかからないが、2時間ぐらいはかかるかも……」
「いや、2時間以上はかかるか。2時間半かな……」
このように見積もることができるだろう。経験がない作業や慣れないタスクを処理する場合、バカバカしいほど極端な数字から考えるようにしてみるのだ。
●「スケール推定」の検証はとことん緩く!
「スケール推定」3つ目のポイントは、実践したらキチンと記録することだ。この後工程を忘れると、「スケール推定」のスキルはいつまでたっても上がらない。
実際にやってみると分かるはずだ。「スケール推定」した数字と大きく外れないことを。「スケール推定」の初心者は、この結果に驚くはずだ。
「新規開拓用のリストを作るのに、30分ほどで終わる」と「スケール推定」してみた。実際に計測してみると、25分だった、40分だったということになるのだろう。早かろうと遅かろうと大きくは外れないのだ。
フェルミ推定と同じで、一桁間違わなければ「正解だ」と思うぐらい緩く考えよう。
「30分と仮説を立てたのに1時間(60分)もかかってしまった」としても、何の問題もない。新規開拓用のリスト作成なら、データの抽出に手間取ったのか? フォーマットの作成が思った以上に時間がかかったのか? と検証するだけでいい。すぐ次に生かすことができる。
しかし、「30分と仮説を立てたのに5時間(300分)もかかってしまった」ということなら、仮説の立て方がかなりおかしい。一桁違うというのは根本的に何かが間違っている。重要な工程やプロセスが抜けていたのか、メタ思考やMECEの思考が不足しているのかと疑ったほうがいいだろう。
いずれにしても、実際にかかった時間は必ず記憶しておこう。「スケール推定」の精度を上げる上で、とても役立つからだ。
【編集部注:この記事は、横山信弘氏の著書『トップコンサルタントの「戦略的」勉強法』(翔泳社、2024年)に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。なお、文中の内容・肩書などは全て出版当時のものです。】
著者プロフィール・横山信弘(よこやまのぶひろ)
企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。
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