車中泊の魅力を発信しているYouTubeチャンネル「ちいこなの車中泊」。心地良く癒される映像と発信者であるちいこなさんの愛らしさも相まって、人気を博している。
車中泊がどういうものかを知らず、車の運転免許も持っていなかったというちいこなさんが、なぜ車中泊にハマり動画を投稿するようになったのか。そのきっかけや車中泊の魅力などについて聞いた。
◆“寛容な職場”で正社員として働く顔も
――「ちいこな」というネーミングの由来は?
ちいこな:X(旧Twitter)で投稿されていてアニメ化もされている漫画「ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ」が好きなのですが、その通称である「ちいかわ」をベースに、自分の名前「こなつ」を合わせて名付けました。
――現在は社会人とのことですが、どのようなお仕事をされていますか?
ちいこな:一般企業の総務部で電話対応などをする事務職をしています。もともと学生時代にアルバイトをしていた企業で、現在は正社員として雇っていただいています。職場の方々には私がYouTubeチャンネルをやっていることを教えていますし、投稿した動画を見てくれたりもしています。
新しい動画を投稿するとすぐに感想を言っていただけますし、私の動画がきっかけで車中泊を始めたという方もいらっしゃったり。身近な方々からの反応はやっぱりうれしいですね。副業も可能ですし、けっこう寛容な職場です。
◆車中泊に惹かれ、すぐに教習場に通い始めた
――もともと車は好きだったのですか?
ちいこな:そうですね。ただ、自分が運転するというよりは、父親が運転している車の助手席に乗って車窓から見える景色を眺めることが好きでした。車種に詳しいわけではないですし、車中泊のことも最初は全然知らなかったんです。
――車中泊を知ったきっかけは?
大学2年生のころにコロナ禍になって自分の時間が増えたとき、YouTubeの動画を見漁っていたんです。そこで車中泊の動画を投稿している「Dentan」さんのYouTubeチャンネルが目にとまり、車中泊の魅力にハマったのがきっかけです。免許を持っていなかったのですぐに教習場に通い始めましたし、行動にうつすのは早かったですね。
――大学生活はコロナ禍で制限されることも多かったのでは?
ちいこな:授業数も減っていましたし、授業がある場合もオンラインでした。ただ、通学時間がなくなったおかげで、自分のために時間を使うことができました。
◆キャンプは敷居が高いと思っていたが…
――すぐに車中泊を始めたとのことですが、車中泊の動画をYouTubeに投稿し始めたきっかけは?
ちいこな:やっぱりDentanさんをはじめ、YouTubeに投稿されている車中泊の動画を見ていた影響が大きいですね。ただ、YouTubeを始めたのは今のチャンネルが初めてではなくて、元々は弾き語りの動画を投稿していました。昔から自分で何かを作って発信したり、クリエイティブなことが好きだったんです。
キャンプにも興味もあったのですが、初期費用がかかることや、設営も人でやるとなると大変そうで敷居が高そうだなと思い断念している部分もありました。でも、Dentanさんが車内で使っているギアなどを見ていると、「これなら私でも簡単に始められそうだな」と思えたんです。せっかく車中泊をするのであれば、綺麗な景色の場所へ行けばいい映像が撮れますし、自分にとってもいい思い出になります。あと、ご自身の体調の都合で外へ出られない方などに“行った気分”になってもらえれば……という思いも、動画を作るうえでの原動力になっています。
◆夫からアドバイスをもらうことも
――一日の過ごし方は?
ちいこな:大学生の時は時間があったので平日も動画の編集ができたのですが、社会人になってからは平日にそういった時間をなかなかとれません。通勤時間に片道2時間くらいかかりますし、帰宅後も食事の準備をしなければいけませんし……。限られた時間のなかで、少しだけでも動画の編集をしたり、息抜きにゲームをしたりしてゆっくりしていることが多いですね。最近は特に「STREET FIGHTER 6(ストリートファイター6)」というゲームにハマっており、大会にまで参加するほどのめり込んでいます。その時に初めてライブ配信もして、たくさんの方に応援していただけたのは、とても嬉しかったです。
――動画の撮影や編集は休みの日に作業している?
ちいこな:そうですね。ほぼ土日にまわしています。撮影は大体丸二日間かかりますし、撮影が終わったらすぐに編集という感じで。月初めの土日に撮りに行って、中ごろの土日に編集して、月末に投稿というサイクルでやっています。
投稿は月1回だけなのですが、編集にこだわりを持っている分、少々時間をかけています。基本的に撮影も編集も自分でやっているのですが、旦那さんが「こういう企画で動画を撮ったら面白いんじゃない?」と第三者目線でのアドバイスをくれたり、結婚後はアシスタントとして撮影に付いてきてくれることもあります。
――編集は独学ですか?シーンを切り替えるタイミングや見せ方などにこだわりを感じますし、もともと動画編集のお仕事をされていたのかなと。
ちいこな:編集は独学です。Adobe Premiere Pro(アドビ プレミアプロ)を覚えて編集しています。Dentanさんをはじめいろいろな方の動画を参考にしていますね。特に初期のころはBGMやテロップをつけなかったり、車内の撮り方やカットの仕方などDentanさんを意識して編集していました。撮影する時の構図なども独学なのですが、水平を保ったりとか多少こだわって撮るようにしています。カメラをセットして、車に戻って運転して……と全部自分でやっています。
◆行く場所は、観光スポットを基準に選定
――車中泊の主な活動エリアは?
ちいこな:自分が暮らしている神奈川県をはじめ、山梨県や静岡県にも行きますし、自分の合宿免許の地でもあり思い入れのある栃木県に行くことも多いです。
――場所を選ぶ際のポイントは?
ちいこな:基本的に観光スポットのなかから行きたい場所を決めて、その周辺に道の駅があればそこで車中泊をするという感じです。道の駅がちょっと離れていたとしても、広めの駐車場で美味しいグルメがあったり、気になるものがあったらそこにするとか、そういう感じで決めています。
――いま行ってみたい場所は?
ちいこな:群馬県にある「川場田園プラザ」という道の駅です。他の道の駅と比べて規模が大きく、景色もすごく綺麗なんです。古風な建物の近くに小川が流れていたりするのも魅力的ですし気になっています。車中泊をする場所はだいぶ前から計画するわけではなく、その時々で探しています。
◆小さい車、狭い空間が落ち着く
――スズキのハスラーで車中泊をされていますが、どんなところが魅力ですか?
ちいこな:車種にあまり詳しくないので見た目で決めたのですが、やっぱりかわいいのが魅力です。幼いころからミニチュアが好きだったこともあり、クリっとした丸い目のようなヘッドライトが付いていることにまず惹かれました。バンパーのあたりはちょっとワイルドなデザインになっていてアウトドアにも似合います。
あとは車内の機能的な部分ですね。フルフラットにできたり、後部にラゲッジボードを取り付けることができたり。車中泊をするのに適しているので気に入っています。
――トヨタのハイエースや日産のキャラバンなど、大きな車での車中泊にも興味がありますか?
ちいこな:小さい車が落ち着くんです。昔から狭い空間が好きで、幼いころはドラえもんじゃないですけど押入れのなかに入ったりもしていました(笑)。ただ、広いほうがいいなと思うこともありますよ。夏にポータブルクーラーを車内に持ち込んだりするのですが、けっこうサイズが大きいんですよね。
車中泊は一人でしているので寝るスペースぐらいは確保できるので大丈夫なのですが、飼っている猫と一緒に車中泊をしてみたいとも思っているので、その場合は広いほうがいいのかなと。車内に置くギアのサイズも、「もう少し小さくすれば大丈夫かな?」とか考えたりもしています。
◆動画を投稿することが“生きがい”に
――YouTubeチャンネルを始めて良かったことは?
ちいこな:仕事が忙しくて心の余裕がない時、動画のコメントを読んで励まされています。最初は自分が発信することで視聴者の皆さんを癒したいと思っていたのですが、今はどちらかというと皆さんに支えられているような感じです。それと、動画を投稿することが“生きがい”になってきている実感もあります。
――YouTubeチャンネルに対するご家族やご友人の反応はいかがですか?
ちいこな:お兄ちゃんが2人、お姉ちゃんが1人いて、チャンネル自体はみんな知っているのですが、見てくれているのはお姉ちゃんだけです(笑)お姉ちゃんは友達に私のチャンネルを紹介してくれたり、すごく応援してくれていますね。友達も見てくれていて、ギアを紹介する動画を投稿した時には、「庭でキャンプする時の参考にしている」と言ってくれたのはうれしかったですね。
――今後の車中泊でしてみたいことはありますか?
ちいこな:先ほども少しお話ししましたが、飼っている猫と一緒に車中泊をしたいなと。まだ猫が小さいので先の話にはなりますが、環境を整えてあげて実現できたら、もっと癒される車中泊になるだろうなと夢を膨らませています。それと、斬新なことをするというよりも、車内のスペースを有効活用するなど、もっと車中泊を極めていきたんです。ギアを販売されているメーカーさんに頼る部分でもあるのですが、例えば今よりもギアがコンパクトになっていろいろと車内に持ち込めるようになれば、シーズンを通して快適に過ごせる空間を作れるんじゃないかなと。
秋などは車中泊をしやすいのですが、やはり車のなかなので夏や冬は気温によっては厳しい環境になりますし、そういう課題を解決していきたいですね。
――365日、車内で快適に過ごすことが究極の目標?
ちいこな:そうですね。それができるような空間が作れれば夢のようですし、少しでもそこに近づいていければと思います。
<取材・文/浜田哲男>
【浜田哲男】
千葉県出身。専修大学を卒業後、広告業界を経て起業。「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の取材をはじめ、複数のスポーツ・エンタメ・ニュース系メディアで連載企画・編集・取材・執筆に携わる。X(旧Twitter):@buhinton