移動に欠かせない交通手段のひとつである電車。しかし、通勤や通学の時間帯は混雑するため、殺伐とした雰囲気がある。車内では譲り合いの精神を持って、お互い気持ちよく過ごしたいものだ。
今回は、電車での迷惑行為に憤慨した2人のエピソードを紹介する。
◆“座席までダッシュする女性”の登場に「毎朝油断できない」
「早朝の駅でよく見かけていた“変なおばさん”の話です」
沖本奏太さん(仮名・50代)は、ホームに毎朝行列ができるほどの利用客が多い駅を利用していた。
「始発駅なので、行列の前のほうに並べば、ほぼ確実に座れました」
沖本さんは出勤する際、早めに家を出て、座れるようにしていた。
ある朝、行列の前から5列目くらいの位置に並んでいた沖本さん。この位置ならば、80パーセント以上の高確率で座れるだろう……。そう思っていたが、電車が到着し、乗車して席に座ろうとしたとき、横からものすごい勢いで50代くらいの女性が滑り込んできたという。
「その女性が空いていた目の前の座席に座ってしまい、私は座れませんでした。あっという間の出来事で、何だか“狐につままれた”ような気分になりました」
彼女が以前から同じ駅を利用していたのかはわからなかったようだが、その日を境に、連日目につくようになった。
「私は警戒レベルを上げていましたので、席を横取りされることは少なくなりました。でも、毎日油断のできない状況でしたね」
◆“迷惑おばさん”にイライラしないために…
沖本さんがよくよく女性を観察してみると、“行動パターン”があることがわかった。
電車のドアは車両の片側に4つずつあり、沖本さんが並んでいたのはいつも“3番ドア”だったそうだ。
「3番ドアから乗車した人は、3番ドア付近の座席に座るのが世間一般の常識ですよね。でも、その女性は“2番ドア”から乗車して、乗り込むや否や、猛ダッシュして3番ドア付近の座席を取っていたんです」
なぜ、そんな行動をとるのかはわからなかったという。
「いつしか私は、“迷惑おばさん”と呼んでいました。もちろん、心の中で、ですが……。たいそうなことではないかもしれませんが、私にとっては十分な迷惑行為でした」
そして、沖本さんは対策を考えた。それは、“迷惑おばさん”と同じ列に並ぶことだった。
「別の車両に乗れば解決する話ですが、目的地の駅に着いてから最短ルートで改札を出るには、その車両がよいんです。女性のせいで、わざわざ車両を変えるのもシャクに障るじゃないですか」
これで沖本さんが直接迷惑を被ることはなくなった。
「当時は、わざわざ自分のルーティンを変えられたことに、腹立たしく思いました。今でもモヤモヤ感は残ったままですが……」
おそらく、彼女なりに編み出した“朝の通勤ラッシュで座れる方法”が「2番ドアから乗車して3番ドア付近の座席までダッシュする」だったのだろう……。
◆混雑した電車内でハンズフリー通話する男性
ある日、朝の混んでいる電車内で大きな声が聞こえてきたと話す川島智也さん(仮名)。
「若い男性がイヤホンをつけて電話(スマホでハンズフリー通話)をしているようでした。周りの音が聞こえていないのか、自分の声が大きいことに気づいていませんでした」
「昨日、あいつがさぁ」
「この前も同じこと言っててさぁ」
個人的な愚痴や文句を具体的に話しており、相手の名前や出来事まではっきりと聞こえていたという。
「内容が本当にしょうもないんですよね。おそらく職場だと思いますが、特定の上司の悪口です。私も元管理職なので、部下からそのように思われていたかと思うと聞いていられませんでした」
ほかの人たちも、その男性を見ていたが誰も注意をする様子はなかったそうだ。
「私はその声が気になって、『もう少し静かにできないのかな』と思いました」
◆勇気を出して注意したのだが…
そのうち、男性が急に大きな声で笑いだしたという。その声で電車内が一瞬静かになり、隣の男性はため息をついていたようだ。
「みんな困った顔をしていましたが、やっぱり誰も何も言いません。それでも電話は続いていて、私は我慢できなくなり声をかけることにしたんです」
川島さんが「すみません、静かにしてもらえませんか?」と勇気を出して注意をすると、男性はビックリした様子でイヤホンを外した。そして、周りを見て「すみません」と謝ったのだとか。そして、またイヤホンをつけた。しかしその後、彼は驚きの行動に出た。
◆注意した相手が“まさかの行動”に
「少し静かになったと思いきや、私が電車を降りる頃には、声は再び大きくなっていましたね。私に注意されたことをもう忘れたんでしょうか……」
電車を降りても、男性の声が頭に残るほどだったようだ。
「まさかの行動に朝からイライラしてしまって、『電車ではマナーを守ってほしい』と思いましたが、それを言うのがなかなか難しいこともわかりました。次に同じようなことがあったら、もっとはっきり言うべきか、それとも我慢すべきか……。そう考えながら会社まで歩いたのを覚えています」
川島さんは思い出すたびに、「あのときもっと強く言えばよかった」と考えてしまうという。
<取材・文/chimi86>
―[乗り物で腹が立った話]―
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。