3軸ジンバル市場はここ数年、進化のペースが鈍化しています。特にスマートフォン用モデルが厳しい。
ブレ補正に関しては、いずれのメーカー製であっても一定のクオリティーに達しており、さらに2024年7月に発表されたスマホ用ジンバル「Insta360 Flow Pro」は「Apple DockKit」にも対応しています。iPhoneと組み合わせて使う場合、Insta360純正アプリだけではなく、200以上のiOS用カメラアプリで被写体を追いかけながらの撮影ができるようになりました。
・スマホジンバルなんてもういらない? AppleのDockKit対応で可能性が広がる「Insta360 Flow Pro」で再考する
これ以上の機能アップをするとしたら、Androidでも正確に被写体を認識できるトラッキングセンサーを内蔵するしかなさそう(センサー外付けタイプは既に商品化されています)──となると、次は小型軽量化面での進化になるでしょうか。
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でも、スマホ用ジンバルは重量物であるスマホを固定し、手に持って扱う製品です。ゆえに小さくなると扱いにくくなってしまう。他の進化ルートってあるんでしょうか──なんて思っていたら。
先ほど挙げたInsta360 Flow Proはまだまだ目新しい製品ですが、半年後となる1月16日に、新モデル「Insta360 Flow 2 Pro」が公開されました。短期間でのリリースですが、従来モデルと比較して「これは良いものだ」と感じられる進化……とまでは言い切れないけど、“技アリ”な改善ポイントがいくつもあったのですよ。
●やや大きくなったものの、これは大きな改善点
まずは折りたたんだ状態のInsta360 Flow 2 Proをご覧ください。ジンバル本体部と、スマホを挟むクランプは磁石で固定するスタイルはそのままですが、一部が出っ張っています。
参考までに、こちらがInsta360 Flow Proの収納形態です。スマートです。しかしこの形状は改善ポイントの1つだったんですよ。
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ジンバルは多くのモーターを内蔵している製品ゆえに、ラフに扱うと壊れてしまうのではという不安がつきまといます。だからバッグなどから出し入れするときもおっかなびっくりで腰が引けがちなのですが、Insta360 Flow 2 Proはしっかりと握れる形状のため安心して出し入れできます。
スマホ用ジンバルで小型化を目指したInsta360自身が、「小型化が正しいわけじゃない」と考えを切り替えたかのような姿勢が伺えますよね。
接合部もやや複雑な形状となりました。従来品は1つの、広い台座でクランプの向きを決めていましたが、Insta360 Flow 2 Proは中央部に爪が入り、台座部が2つに。そしてInsta360 Flow 2 Proの接合部には小さな赤いスイッチが備わっています。
電源が入っている状態でクランプを外すと、ジンバルの各モーターが一瞬たりとも暴れずに一定の角度で保たれます。これはスマホを何かにぶつけてしまってクランプが外れたとき、Insta360 Flow 2 Proのモーターに負荷をかけないようにするための保護スイッチなのでしょう。
前述した出っ張り部分ですが、これはメインアームのヒンジです。2軸構造となったのが興味深い。なぜこのような形状となったのか、開発者にお話を聞けたわけではないので想像するしかないのですが……。
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対してInsta360 Flow 2 Proは、中間のモーターが入ったジンバル部が横方向に大きく張り出しています。
軽量なスマホと組み合わせて使うのであれば、Insta360 Flow/Flow Proの大きさでも悪くありません。しかし今は大画面スマホ全盛期です。小型モデルは実際に売れていないのか、次々とディスコン状態となり、後継機が生まれていません。今後も大きく、重いスマホが求められていくことを考えると、体格の良いスマホでも安定させるべく、このような構造を取り入れたと考えられます。
Insta360 Flowシリーズは三脚を内蔵しているのも売りです。Insta360 Flow 2 Proは従来よりも剛性があり、長さも申し分ない三脚パーツとなりました。
記憶に頼ってみると、従来よりも安定感が向上していますね。筆者は6.12型のiPhone 14 Proで試用しましたが、7型に近いサイズのスマホでもしっかりと立たせることができそうで好印象です。
シリーズおなじみの伸縮ロッドも備えています。やはり同じくヒンジも備わっています。
ヒンジを真っすぐに保ったままであれば、伸縮ロッドを伸ばした状態にして自立させることも可能です。テーブルの上において調理シーンを撮るときも、ローアングルな視野の構図にしなくて済むのがありがたいじゃないですか。
ジンバル+スマホを無人カメラマンとして使う場合、強力で精度の高いトラッキング機能を備えたInsta360 Flow 2 Proはその期待に確実に応えてくれるでしょう。
●分かりやすく、操作しやすくなったコントローラー
コントローラー部分もチェックしましょう。メインコントローラーは、中央部のジョイスティックに加え、円形のモードボタン+ホイールで構成されています。従来品は円形ボタンがタッチパネル式でしたが、大まかな操作は同一。かつ確実に押した、操作をしたという感覚が得られるように改善していますね。
モードボタンは、下側を押すとモードがFPV、オート、フォロー、マニュアルと切り替わります。現在のモードはLEDの光っている場所で把握できます。
左側の赤丸部分は録画/停止ボタンです。ペアリングした状態で使うと、Apple DockKit対応カメラアプリを操作できます。
右側を二度押しすると縦横の画角変更ができます。ジョイスティックはジンバルの角度調整のため、ホイールはズーム倍率を変えるときに使います。
見た目以上に操作感に影響を及ぼしたのがトリガーです。1度押しでトラッキング開始/停止、2度押しでセンタリング、3度押しで前向き、後ろ向き(メインカメラで自撮り)、押しつづけるとロック方向の調整ができますが、ボタンストロークが減ったことで操作しやすくなりました。ゲームのコントローラーもそうですが、ストロークによっても操作性は大きく変わるものですね。
アナログな手法ですが便利だと感じたのが、スマホ側のジンバルモーター部に備わっているミラーです。画質の良いメインカメラで撮影しながらカメラの向きを(簡易的に)確認できるというものです。
Insta360は、最新のデジタル技術で課題を解決し続けてきたメーカーという印象が強かったのですが、考えが変わりました。良いと思える要素は新しいものも古いものも取り入れていくメーカーだと感じます。
●使い方によってはFlowシリーズからの買い替えも考えたい
ジンバルそのものの安定感はいうまでもありません。フラットとはいえ未舗装の場所を歩いても余計な微振動もなく、360度回転させることができる仕様のため、被写体を追いかけ続けやすいという特徴も持っています。
今回、やはり改善ポイントの1つである、複数の人が画角内にいる状態でもトラッキングしてくれる、そして動物のトラッキングも可能という「Deep Track 4.0」が試せなかったのですが、動画撮影だけではなく、YouTubeやTwitchで雑談生配信をするときも失敗することなく活躍してくれるだろうという実感はあります。
過去モデルのInsta360 Flow/Flow Proは、完成度の高いスマホ用ジンバルでした。カスタムスキンで好みのカラーリングで彩れるなど、ファッショナブルな要素も取り入れ、ユーザー層を拡大しようとした設計も納得がいくものです。椅子に座りながらの撮影をするのであれば、まだまだ、いやバッテリーが消耗し切るまで現役で使い続けられるでしょう。
しかし、外で撮影するのであれば、持ちやすく、操作しやすいInsta360 Flow 2 Proの秀才さがキラッと光ります。抜本的な進化はなくても、改善ポイントを重ねることでさらなる魅力を作り出せることを証明してくれたことにも感謝したいですね。
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