“アメリカ一強”は「AI革命」の恩恵ではない?FRBの金融政策の“逆噴射”による日本と世界への負の影響とは

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2025年01月17日 06:00  TBS NEWS DIG

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2025年の経済は“アメリカ一強”というのが多くのエコノミストの一致した見方です。それはなぜなのか、そしてその結果として日本を含む世界経済が被るマイナスの影響とは?専門家が解説します。

【図解】FRBの引き締め「以外」の効果の仕組み

高い労働生産性はAIではなく、金融政策の帰結か

1月10日に発表された昨年12月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数は前月比で25万6000人増と予想を大幅に上回り、失業率は4.2%から4.1%に改善しています。

「数字が強かったのがサプライズですが、雇用統計が上振れてアメリカの強さがさらに示されることに『やっぱり』と思った人も多かったのではないでしょうか」と大和証券チーフエコノミストの末廣さんは言います。

末廣さんはこの背景を読み解くため、「労働生産性」に注目します。「労働生産性は労働者1人あたりどれくらいのGDPを生み出しているかの統計で、アメリカは2024年に前年比およそ2%で伸びており、結構な高水準です」

「高い伸び率はAIによる生産性革命があり、生産性が上がって経済が一強状態になっている、という見方も増えてきています」

ただ、“AI革命”なら他国にも恩恵があるはず。末廣さんは一強の背景はAIではなく、アメリカの中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策が世界経済に波及していく経路にヒントがあると解説します。

アメリカが経済成長し、他国が減速すると“トータル”でどうなる?

「“アメリカ一強”の理由より前に、金融引き締めでアメリカがたくさん利上げをしたのに、リセッション(景気後退)にならなかった謎から考えるべきです」

「シカゴ大学のラグラム・ラジャン教授は、引き締めによる実体経済へクールダウンという伝統的な経路よりも、為替市場など金融経済に与える影響が大きいとしています。国内の経済への影響より、為替(ドル高)を通じた他の国の経済に与える影響の方が結果的に大きいという主張です」

「アメリカは自国経済を見ながら利上げできますが、他の国はドル高の裏側の通貨安を防ぐためにアメリカよりもアグレッシブに利上げをしなければいけなくなる」

「例えば欧州中央銀行(ECB)はアメリカの利上げに追随する形で利上げをして、景気が悪くなってしまいました。日本も円安を取るか利上げを取るかで苦労をしました」

さらに景気減速懸念が出ている他国から投資マネーがアメリカに流入することで、結果的にアメリカ経済はクールダウンではなくさらに強化されるという循環が起きている可能性があるというのです。

「これがFRBにとって予想外なのか、計算の範疇なのかはなかなか読めないところではあります」

「ラジャン教授はこうして金融政策が波及する効果を世界全体で見て、トータルで良いか悪いかを考えるべきだと指摘します。アメリカのGDPは世界全体の26%しかありません。アメリカが成長して、他の国は減速していることを足し算すると、私はネットでネガティブの可能性の方が高いと見ています」

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