「取りあえず就職」でもいいんじゃない?――就活で悩んでいる大学生のキミへ

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2025年01月17日 07:11  @IT

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@IT

大丈夫だよ

 これからお話しするのは、就職活動(就活)に悩んでいる大学生の皆さんへのお手紙です。


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 皆さんが大学生ならば、「どんな会社に就職しようかな」「そもそも、就職できるのかな」と悩んでいるのではないでしょうか。というのも、僕の上の娘は大学3年生で、いままさに「どんな会社に就職しようか」と悩んでいるからです。


 もっとも、@IT読者の皆さんなら、「エンジニアになりたい」などの理想や希望はお持ちではないかと思います。ちなみに、僕の娘は文系のため、端(はな)から技術系の会社には興味がないようです(笑)。それでも、悩んでいる娘を見ていたら。「もし@ITの読者の中に大学生がいたら、きっと就活で悩んでいるんじゃないかな」と思ったのです。


 文系の娘の就活に対して、それらしいアドバイスはしてあげられそうにありません。でも、エンジニアを目指している皆さんになら、何か、お話ができるのではないかと思い、お手紙を書くことにしました。


 なお、先に僕の属性を明らかにしておきますと、大学生を支援する仕事をしているわけではありませんし、就職・転職エージェントで仕事のあっせんをしているわけでもありません。キャリアコンサルタントのような資格があるわけでもありません。


 しかも、元エンジニアですが現役ではありません。そう、ただのおじさんです。


 それでも、他の人があまり経験していないキャリアは歩んできたつもりです。また、何度か採用する側で、職務経歴書を拝見したり、面談をしたりしたことならあります。


●僕のキャリアを紹介します


 最初に、僕が歩んできたキャリアをざっと紹介しておきます。


18歳〜28歳 自動車会社の企業内高校を卒業後、18歳で自動車会社に就職。10年働く


28歳〜33歳 「プログラマーになってみたい」とIT企業に転職。エンジニアの仕事にはまる


33歳〜34歳 「生涯エンジニアでいたい!」とIT企業に転職。しかし、パワハラ管理職の下でうつっぽくなる


34歳〜35歳 避けていた管理職をやることになってしまい、苦悩する


35歳〜36歳 「何とかしなくちゃ」と思い、マネジメントやコミュニケーションを勉強。人の成長を支援することに楽しさを感じるようになる


36歳〜37歳 人の成長支援を本業にしようと、NPO法人しごとのみらいを設立


37歳〜40歳 法人を設立したものの、まったく仕事がなく苦悩する


40歳〜47歳 何とか食えるようになる


47歳〜 仕事を作るために行ってきた情報発信がきっかけで、サイボウズに複業採用される


 現在は「しごとのみらい」で企業の組織づくりやコミュニケーションに関する企業研修や講演を行う傍ら、サイボウズではマーケティングやブランディングを担当。その他、新潟を拠点にフルリモートで働いていることがきっかけで、行政機関などと連携し、多様な働き方の実現によって人が交流できる仕組みづくりや地方創生に関わる仕事をしています。


●いろんな経験をしてきて、まず、思うこと


 就職に対して、期待していることは人それぞれかと思います。「一流のエンジニアになりたい」「生涯エンジニアとして働きたい」「新しいサービスや製品を開発したい」「できるだけ安定した暮らしがしたい」「大企業で働きたい」「給与や福利厚生が良い方がいい」「中小企業の方がいろいろな経験ができそう」「いろいろなチャレンジをしたいから、最初の会社は2〜3年で転職する予定」など、その期待はさまざまでしょう。


 僕がいままでいろいろな経験をしてきて、就職に対してまず思うことがあるとしたら、「人生は、想定外ばかりである」ということでしょうか。就職の時点で想定したことは、最初のうちはその通りになるかもしれません。ですが、もう少し先の未来は、他にやりたいことが出てきたり、逆に「いまの仕事、合っていないかも」と思ったり、人間関係によるドラマがあったり。ぶっちゃけ、どうなるのか分からない。それが実際のところではないかと思います。


 自分の経験からしてもそうです。想定内だったのは、最初、自動車会社で働いたことぐらい。その後、神奈川から新潟にUターンすることになったり、やりたいことが出てきたり、人間関係でトラブったり。こんな人生、社会人になった当初はまったく想定していませんでした。


 また、僕が自動車会社に就職したとき、当時の上司からこう言われました。「うちの会社に入れば生涯安泰だぞ。つぶれることはないからな」と。ですが、いま、大手の自動車会社ですら再編真っただ中です。まさか、こんな日が来るとは思ってもいませんでした。企業は生き物だなと思います。


 市場の変化もあるし、コロナ禍のような環境の変化もあります。いまどんなに勢いがある会社でも、将来どうなるかなんて誰にも分かりません……。


 唯一、安定している業界があるとすれば……行政は安定しているかもしれませんね。ですが、仮に行政で情報関係をはじめとした技術系の仕事に就けたとしても、行政の場合、自分の意思にかかわらず2〜3年で担当が変わったり、配置転換があったりします。加えて、非常に速いペースで進む人口減少社会の中では、行政だって安泰だとはいえません。


 そう考えると、「人生は、想定外ばかりである」(言い方を変えると、思う通りにならないこともある)というのが、就職に関して、僕がまず思うことです。


●「取りあえず就職する」でもいいんじゃないか


 人生が想定外ばかりなのであれば、ちょっと乱暴な言い方かもしれませんが、「将来なんて、どうせどうなるのか分からないのだから、取りあえず就職できれば、就職先なんてどこでもいいんじゃないか」とも思います。


 というのも、大学生の時点で「この会社に入りたい」と思う会社は、あくまでも「大学までの経験値の中での最適解」であって、「生涯の最適解」ではないからです。社会に出て、経験を積んでいくことによって見えてくる「やりたいこと」もあれば、「こうじゃないな」もあります。そもそも、経験値が少ない中では「何をやりたいのかよく分からない」という問題もあるでしょう。


 ひょっとしたら、あなたの親や身近な人が「○○という会社がいいんじゃないか」といったアドバイスをしてくれるかもしれません。とはいえ、そのアドバイスだって、あくまでも「その人が経験してきた中での最適解」です。それが現代の最適解とは限りません。


 それならば、大学生の時点で遮二無二なって就職先を探すよりも、「ま、どこでもいいか」と、肩の力を抜いて取り組むぐらいでもいいんじゃないか? と、ぶっちゃけ思っています。


 なお、2024年10月に厚生労働省が発表した新規学卒就職者の離職状況のデータによれば、大卒の3割は「入社後3年以内」に離職しています。


●大手だと転職するときに「箔が付く」?


 ただ、もし大手に就職できたら、転職するときに「箔(はく)が付く」かもしれませんね。ここでいう「箔が付く」とは、「おっ! と思われる」ということです。


 でも、実際はどうなんでしょうね。僕は何度か、転職者の職務経歴書を見たり、実際に面接をしたりしたことがあります。その際、大手出身だと確かに「お〜、○○(会社名)にいたのか〜。すごいな〜」と思います。


 でも、そう思うのはほんの一瞬です。それ以降は、やはり「人」を見ます。どんなに「大手出身でも」です。企業名は看板でしかありません。会社の看板を下ろしたときが勝負です。


●「一緒に仕事がしたい」と思う人


 逆に、大手の人じゃなくても、「お、すごいな〜」と思うときがあります。それが、どういうときかというと……。


 僕は社会課題の解決に興味があるタイプですが、これらの取り組みはNPO法人や一般社団法人の方が実績のある場合が多い。そういった法人は必ずしも大手ではありません。


 現場感覚としては、そういった現場で実務経験を積んでいる人の方にがぜん興味が湧きます。大手出身のエンジニアで限られた範囲しか経験していない人と、中小企業や社会課題に取り組んでいるチームで実務的な仕事をしてきた人がいたら、「一緒に仕事をしたら、楽しそうだな」と思うのは、現場経験を積んでいる人の方です(だからといって、大手は現場経験が積めないというわけではありません。分かりやすく比較するための表現です。念のため)。


 つまり、出身企業名が有利にはたらくのはほんの一瞬で、それ以降見たくなるのは「日頃、どんなことを考えていて」「どんな経験をしてきたか」。つまり「人」だということです。


●「柔軟に対応していく」だけでいいんじゃないか?


 そう考えると、働く上で大切なのは、「どの企業に就職するか?」よりも、その環境で必要とされていることに「いかに柔軟に対応していくか?」ではないか。何なら「それだけでいいんじゃないか?」とすら、思います。


 少なからず、僕がキャリア採用する立場だったら、そういう見方をします。


 世の中には、就職するためのさまざまなノウハウやメソッドがありますよね。「企業のビジョンや理想像に合わせて自己PRをしよう」とか、「短所を聞かれたら、短所を話すふりをして長所をアピールしよう」とか。


 でも、そんなものはぶっちゃけ「どうでもいい話」です。採用する側もばかではありません。いろいろな人を見ていれば、そういった「上っ面なテクニック」はお見通しだと思います。


 それよりも、今後の長い人生を真面目に考えるのならば、就職は「取りあえずの通過点」ぐらいに考えておいて、その環境、環境で必要なこと、求められることを一生懸命やる。そして、実力を付ける。


 その結果、「この会社はいいな」と思えたら長く働けばいいし、「本当にやりたいこと」が見えてきたり、「これは違うな」と思ったりしたときは、新たな環境にチャレンジすればいい。新たなチャレンジをするときに選択肢が増えるよう、日々の努力を重ねる。未来の自分のために、いま、この瞬間を頑張る。


 「それでいいんじゃないか」と、就職の専門家ではない、でも現場で一生懸命生きてきた、ただのおじさんは思うのであります。


●筆者プロフィール


しごとのみらい理事長 竹内義晴


「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティーの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。著書「Z世代・さとり世代の上司になったら読む本 引っ張ってもついてこない時代の「個性」に寄り添うマネジメント(翔泳社)」「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。



このニュースに関するつぶやき

  • おはようございます。生活してお金稼がないと餓死するから、仕事は継続してないと駄目だよね。職業に貴賤はないけど、待遇は差があるから、なるべく良い所いいから迷うかな。
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