NTT西日本 沖縄支店は、沖縄県内の二次離島におけるゴミ処理問題の課題解決に向けて、ERCM(有機物減容セラミック製造装置)に関する自治体向け説明会を運天港フェリー乗り場にて開催。自治体からは、伊是名村および伊平屋村の関係者が出席した。
「特に離島の自治体様から、ゴミ処理に関する相談をいただくことが多い」というNTT西日本 沖縄支店 ビジネス営業部 部長の古堅誠氏。最近では、焼却炉のコスト問題だけでなく、環境にやさしいゴミ処理問題を模索する自治体も増えており、「循環社会、サーキュラーエコノミーが求められる中、しっかりとコストも削減しながら、地球環境にもやさしい処理ソリューション」として、ERCMの導入を推奨した。
「熱伝導分解燻焼装置とも呼ばれるERCMは、焼却炉とはまったく別のもの」と話すのは、今回紹介されたERCMを製造・開発するサステナックス 社長室長の鈴木進氏。ERCMは、あらゆる有機物を熱分解してリサイクル可能なセラミックを製造する装置で、環境被害を最小限に抑え、残渣物も100%リサイクル可能にすることをコンセプトとしている。
装置に投入されたゴミは、約1,000度におよぶ輻射熱とOHラジカルと呼ばれる活性酸素によって分解。有機物からセラミックを生成する。分解時に発生する煙に関しても、触媒システムによってダイオキシンなどの有害物質を基準数値以下の無害なものとして排出される。
従来の焼却処理に比べて、低コスト、低公害、高減容率、高安全性、手間最小化を特徴としており、減容率に関しては、一般的な焼却が1/10〜1/20程度であるのに対し、1/100〜1/500に達するという。投入できるゴミは、一般家庭ごみから排水処理汚泥、糞尿、廃プラスチックほか、離島などで問題となっている塩分を含んだ海岸漂着ゴミや漁網なども投入可能であり、含水率が高いものでも処理ができる。基本的には有機物が対象であり、鉄などの金属に関しては、排出口からそのまま排出される。
さらに、処理中は動作音も非常に静かで、臭いもほとんど出ないのも大きな特徴だ。処理後に排出されるセラミックは、消波ブロックや道路の改修材、農業用の土壌改良材などにも利用可能。投入するものによって排出されるセラミックの性質が異なり、たとえば牛糞をセラミック化するとリンが取れるなど、中の成分によって取引価格も変わってくる。そのため、ゴミを処理するだけか、再資源化を目指すかによっても運用が変わってくるという。また、ダイオキシンなどで有害化した焼却灰を、ERCMによって再処理することによって無害化することも可能となっている。
説明会に参加した伊是名村 副村長の高良和彦氏は、同村が抱える問題のひとつとして、海岸の漂着ゴミに関して言及。年間に3、4回ほど回収作業が行われているが、風が少し強くなるとすぐにゴミが漂着するため、まさに“いたちごっこ”であり、かつて小型の漂着ゴミを焼却するための機械を導入したが、まったく処理が追いつかなかったという。漂着ゴミのほかにも農業用廃プラスチックや廃タイヤなども問題となっており、処理コスト、運送コストの問題からも、「そういったものを島内で処理できれば」とERCMの導入に関して強い興味を示した。
一方、「特に離島においては、本島まで運ぶ運送コストも掛かるため、島内でどこまで処理できるかが大きな課題」というNTT西日本の古堅部長は、ERCMを勧める理由として、島内で処理が可能という点に加えて、「SDGsが求められている世の中において、単純に物を燃やすだけで良いのか」という問題意識を提示する。
ゴミ問題は、離島だけでなく、本島の自治体においても課題となっており、現時点において自治体によるERCMの導入事例はないものの、「NTT西日本としては、沖縄を皮切りに全国に展開していきたい」との意欲を示す。そして、「医療機関、特に感染症が疑われるようなゴミの処理も非常にコストが掛かる」ことから、「自治体はもちろん、医療機関などへの提案も積極的に進めていきたい」との展望を明かした。(糸井一臣)