CRMやSFA導入前の営業現場、どんな問題が起きていた? 大手Slerの場合

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2025年01月17日 09:51  ITmedia ビジネスオンライン

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スタートアップから大企業まで幅広く、CRM/SFAツールの導入が進んでいる

 昨今、顧客体験を重視したサービスや製品の提供が進む中で、B2Bの企業でも同様に顧客へ焦点を当てた製品開発や販売/営業、カスタマーサポートが進んできています。


CRMやSFA導入前の営業現場、どんな問題が起きているのか?


 そのため、さまざまな企業活動を推進する中で顧客管理や案件管理の重要性が説かれ、スタートアップから大企業まで広く、CRMやSFAツールの導入が進んでいます。


 本記事では、主に営業活動における顧客・商談管理を中心に、CRMやSFAツールの活用が営業現場にどのような変化をもたらすか、大手Slerとセールスフォースでの筆者の営業経験を交えて解説していきます。


 現在、CRMやSFAなどのツールの導入を検討している方や、利用方法の変更や改善をされている方の一助になれば幸いです。


●CRM/SFA導入前の営業現場では何が起きていた? 大手Sler時代


 ここからは、筆者がCRM/SFA導入前の大手Slerに勤めていた際の経験を振り返り、「顧客情報の共有や後任への受け渡し」「案件情報の報告」「日々の営業活動の報告や振り返り」「個人・チームの数字状況の把握」の4つの観点でどのような問題が発生していたのかを説明していきます。


・顧客情報の共有や後任への受け渡し


 ここでの顧客情報とは、見込み客となる企業(組織)やその担当者に関する情報のことを指しています。


 CRM/SFAが導入されていない場合、これらの顧客情報は基本的に個人管理となります。担当の机の中や名刺ボックス内で管理されているため、上司は各営業担当の名刺取得数や過去接点のあった担当者名を網羅的に把握できていませんでした。結果、提案すべき会社や組織を指定できても、担当者までは名指しできず、営業担当任せの新規拡販の営業計画立案となっていました。


 また、営業担当者の変更が起きた際には引継ぎが必要ですが、これまでは顧客の窓口や提案中の案件、過去に受注した案件、失注案件などの情報を数時間かけてExcelにまとめ、そこから数時間かけて引継ぎ担当者に共有していました。


 スムーズに案件を引き継げれば問題ありませんが、もし提案中の案件に対してすぐにアプローチしなければならない場合、この引継ぎがうまくいかない(時間を要することや失念してしまうなど)ことがあると、企業にとっての機会損失または信頼低下につながります。


 事実、引継ぎ後の対応で、顧客とのコミュニケーションミスが多く発生していました。特に受注後でプロジェクトが進行中の案件について、営業担当と調整していた内容の漏れなどの指摘を受けるケースが散見されました。


・案件情報の報告


 案件情報の報告も多種多様です。例えば、引き合い発生時の報告や提案に向けた報告、案件クロージングに向けた報告、契約手続き状況の報告などがあります。企業ごとでやり方は異なるかと思いますが、筆者が大手Slerで営業に従事していた際は、Excelでの日報やワードでの週報という形で営業活動を管理職に報告していました。


 管理職もチームメンバーを多く抱えている場合、一つ一つの案件状況を把握しきれないため、案件状況などを何度も部下に確認してしまい、「またですか」と言われるケースが多発していました。


 もちろん管理職個人の取り組みで解消できるケースはあるとは思いますが、組織的な解決ができていない以上は、個人の力量やスキル任せの管理になることは明白です。


・日々の営業活動の報告や振り返り


 日々の営業提案の1件1件は「点」かもしれませんが、それが積み重なっていくと「線」での活動となります。これらの活動状況を把握することが非常に大切です。その大切な活動をExcelやWordでバラバラに管理して、点ではなく線で捉えることは可能でしょうか?


 線で捉える重要性を理解すると、営業活動における振り返りの重みが増します。何の目的で何件訪問し、その結果が意図した内容かどうか、現在の数字状況は目標ペースに乗っているかなどが説明できる振り返りが習慣になっていないと、その営業活動自体の意味も弱まります。


・個人・チームの数字状況の把握


 営業における個人・チームの数字といえば、受注金額や売上金額となり、これらの数字を目標に設定する企業が多いと思います。


 これらの数字の達成状況がリアルタイムで共有されていないと、個人・チームとしての営業計画が実態から乖離しているのか、達成ペースなのかも見えません。その結果、優先度の低い提案に着手してしまったり、提案のタイミングを逃したりする可能性も否定できません。


 例えば、個人として提案したい案件が急に舞い込んできたが、受注が決まるのが1年後という状況にあるとしたらどうでしょうか。仮に現状、個人やチームでの進捗が芳(かんば)しくないとしたら、将来の案件に目を向けるより、目の前の受注に向き合うのが先決であることは自明です。


●CRM/SFA導入後の営業現場、どう変わった? セールスフォース時代


 本章では、CRM/SFA導入後において「顧客情報の共有や後任への受け渡し」「案件情報の報告」「日々の営業活動の報告や振り返り」「個人・チームの数字状況の把握」の4つの観点でどのような変化があったのかを紹介します。


・顧客情報の共有や後任への受け渡し


 CRM/SFAの導入により、顧客基本情報だけでなく、直近の活動内容や前回提案からの経過時間、過去の受注情報などを簡単に誰もが把握できるようになりました。その結果、常に新鮮な営業先リストを作成できるようにもなりました。


 そのため、マネジャーやチームメンバーは、営業担当者からの共有や報告を受けなくても必要情報を検索したり、現在の活動状況などを把握したりできます。また、営業担当者の異動時も個別の引継ぎ資料は最小限で作成でき、スムーズな引き継ぎが可能となります。


・案件情報の報告


 案件報告についても、個々の状況を管理職に都度共有する必要はなくなります。案件におけるキーパーソンや商談日時、ネクストアクションなどを記録しておくことで、管理職はその内容を確認し、必要な行動を指示するだけで済みます。


 また、これまでは口頭やExcel、Wordでの閉じた共有方法でしたが、誰でもアクセスできるデータベース上に情報が残ることで、必要に応じて直属の管理職より上位のレイヤ−が直接指示を出せるようになります。組織として、リアルタイムな情報共有から素早い意思決定や行動に移せるようになるのです。


・日々の営業活動の報告や振り返り


 日々の営業活動をCRM/SFAに登録することで、日報や週報での報告業務は減らせるかもしれません。営業提案のステータスは全てデータベース上に登録されているので、その浮いた時間を新たな提案につなげることもできるでしょう。


 日々の振り返りは半期の評価にも影響を与えます。営業職には「あいつはよく働いているようにみえる」といった感覚評価が付きまといますが、CRM/SFAを導入によって活動数を定量的に示すせるため、感覚評価に引っ張られない適切な評価を下せます。振り返りにより、活動内容の適切さも判断できるため、次月や次Qへの活動計画の軌道修正を行いやすくなります。


・個人・チームの数字状況の把握


 日々の営業活動と同様に、CRM/SFA上で個人やチームの受注と売り上げ状況を把握できるようにすれば、個々人は営業活動の優先順位を意識的に変更するようになるでしょう。自身の営業活動はチームの目標達成に貢献しているかという視点が生まれることで、自身の日々の活動内容の改善につながったり、これまでの個人主義からチーム主義に移行させたりすることも可能かもしれません。


●まとめ


 CRM/SFAの導入前後での営業担当としての動きについて、例を交えながらまとめてきましたが、いかがでしたでしょうか?


 CRM/SFAを導入すると、システムに管理されるという思い込みをする方もいますが、これらはあくまでツールです。管理職が意思決定をする上での必要な判断材料を集めたり、営業担当が持つ案件管理や報告などに関する業務負担を軽減できたりするのです。


 次回は、管理職の視点から見た、CRM/SFA導入前後の変化について解説します。


●著者プロフィール


株式会社Grand Central


セールス領域に特化したコンサルティングカンパニー。東京に本社を置き、グループ会社含め名古屋・大阪の3拠点で事業を展開。"営業革命"を体現するインフラカンパニーへというミッションを掲げ、クライアントの営業活動における課題を分析し、戦略立案の提案から、勝ちパターンのスキーム構築、営業代行、インハウス化に向けたDX支援や、定着に向けたセールスイネーブルメントなどのソリューションを提供しています。当社HPはこちら。



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