久保建英だけではない高評価の日本人サイドアタッカー スペインで活躍が期待されるのは?

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2025年01月19日 17:20  webスポルティーバ

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リーガ移籍候補を探る(2)〜サイドアタッカー、セカンドアタッカー編

 スペイン、ラ・リーガで久保建英(レアル・ソシエダ)が築いた道を、日本人選手は辿ることができるのか。その可能性を考察する第2回はサイドアタッカー、セカンドアタッカー編だ。

 過去、1部で成功した日本人選手は乾貴士(清水エスパルス)と久保だけだ。ふたりは利き足が違うし、プレーテンポも異なるが、同じようなサイドアタッカー、セカンドアタッカーという共通点がある。やはり、このポジションは日本人の優位性があると言えるだろう。

「俊敏でテクニカル」

 それは欧州各国リーグで活躍する日本人サイドアタッカーに対する印象で、高い評価が与えられている。

 小柄であっても、サイドでは大きなハンデにならない。世界最高の輝きを放ったリオネル・メッシは最たる例だろう。素早さを用い、相手の裏を取る技量があれば、ラ・リーガでも通用する。

 率直に言って、日本人はこのポジションが最も人材に恵まれている。サイドから崩し、ゴールに迫る。日本代表の三笘薫(ブライトン)、堂安律(フライブルク)、中村敬斗、伊東純也(スタッド・ランス)などは、間違いなくラ・リーガで通用する人材だ。

 なかでも三笘は世界最高峰のプレミアリーグでプレーしているだけに、能力は間違いない。プレースタイルはラ・リーガよりもプレミア向きだろうが、個人で爆発的な突破ができる力は、どのチームでも求められる。世界トップレベルのサイドアタッカーだ。

 ただ、三笘がラ・リーガに新天地を求めるとすれば、レアル・マドリード、バルセロナ、アトレティコ・マドリードのようなチームになる。現実的には、プレミアの強豪クラブへの移籍を選ぶだろう。

 堂安は左利きでパワーがあるし、中村はとにかく得点感覚に優れ、伊東はサイドでクラシックなウィングとしてインテンシティを出せる。3人とも、ラ・リーガの中堅クラブのサイドアタッカーと比べても遜色ない。

 しかし、現時点では3人とも苦労するだろう。

【「うまい」だけでは十分ではない】

 ラ・リーガは駆け引きの連続で、タフさが求められる。サイドはマッチアップが多く、相手ディフェンダーはファウルにならないルールギリギリに削ってくる。それに動揺せず、最大限の出力を続けるのは簡単ではない。確かに堂安のいるドイツもハードだし、中村、伊東のフランスもパワフルだが、スペインはしつこく、粘り強く、より老獪に守ってくるのだ。

 その点、久保はパーソナリティに胆力を感じさせる。相手の挑発にも決して負けないし、熱くなっても我を失うこともほとんどない。メッシもそうだったが、むしろ怒ることでスイッチが入り、プレーの切れが増す。漫画のヒーローのようなところがある。

 10代の頃から、久保は剛胆だった。FC東京で、周囲のほとんど全員が年上でも、物怖じするそぶりも見せなかったという。自分のリズムを守ることができた。そのメンタリティこそ、スペインで生き抜く条件かもしれない。

 セカンドアタッカーにも、同じことが当てはまる。技術だけではない、生き抜く力と言えばいいだろうか。

 かつて家長昭博(川崎フロンターレ)はマジョルカでスペイン挑戦し、ミカエル・ラウドルップ監督からは信頼を得て、1年目のシーズン半分は好調だった。Jリーグ史上最高のテクニシャンの面目躍如だったが、次のシーズン、監督交代後は不遇の扱いを受け、結局、早々と撤退を余儀なくされている。

「メッシは化け物ですが、日本では知られていない選手でも、技術も体力も気が抜けないほどレベルは高い」

 当時、家長はそう洩らしていたが、それが実状である。

「スペインに行く前は、"(中村)俊輔さんみたいな人でも苦しみ抜いたスペインってどんなもんや"とビビっていました。実際、競争も激しくて。マジョルカに入って、すぐはパスが回ってきませんでした。そこは慣れで、いい動きをしてパスを引き出したりすると、周りは認めてくれるんですけどね。その積み重ねです」

 積み重ねこそ、試練である。スペインでは毎日のトレーニングが、少しも気が抜けない。なぜなら30人の所属選手がいて、ほんの一部を除いて、実力差がないからだ。

 多くの日本人ファンタジスタは入団当初、拍手で迎えられる。中村(元エスパニョール)、家長、清武弘嗣(大分トリニータ、元セビージャ)など、日本サッカー史上最高レベルの選手が、挑戦の序盤では定位置をもらっている。彼らは技術が高く、トリッキーなプレーも見せた。しかし、それを続ける体力、気力がなかった。戦いそのものに疲弊し、ポジションを失っていった。

 うまいだけでは十分ではなく、うまさを出しつ続けることが求められる。

 現在の日本人では鎌田大地(クリスタル・パレス)が技術的、戦術的にトップ下として最適の人材だろう。実際、一昨年はレアル・ソシエダ(ラ・レアル)も食指を動かしていた。関係者によれば「移籍金ゼロはいいが、年俸が高すぎた」と金額的に折り合わなかったようだ。

 鎌田は過去20年の日本サッカーで最高のセンスの持ち主だが、コミュニケーションが重んじられるスペインでは、彼が持っている一種の真面目さは足かせになるかもしれない。そのキャラクターを否定しないが、スペインでは久保のような奔放さ、明るさが好まれる。明るさとは、ふざけることではない。人や物事に対する楽観、寛容さである。

 セカンドストライカーとして、南野拓実(モナコ)も実力者である。たとえばラ・レアルでも、サイドやインサイドハーフでプレーできるはずだ。ミケル・オヤルサバルと争いながら0トップの役割もできそうだし、オーリ・オスカールソン、ウマル・サディク(現バレンシア)のようなFWに大金を積むなら、南野のほうが久保と連係も取れる。しかし言い換えると、明確なポジションが見当たらない。

 そう考えると、現実的にはモナコでチャンピオンズリーグに出場するほうがベターだろう。

(つづく)

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