TBSのアーカイブには戦前のモノクロ映像なども多数残されており、そこには現代と違った日常生活の一コマも残っていたりします。これは銀座・資生堂の店前に集まった人。現在と何かが違いますよね?(アーカイブマネジメント部 疋田 智)
【画像で見る】ここまで全員帽子状態だと、どこか「同調圧力」のようなものを感じます
1928(昭和3)年はみんなこうしてたこの画像は銀座の資生堂で、モダンなマネキンガールたちが商品説明をしているところです。なんだなんだと物見高い紳士たちがショーウィンドウの前に鈴なりに集まりました。
ほとんど100年前の風景ですが、現在の風景と何かが違いますよね。はい、その通り。紳士たちがみんな帽子をかぶってることです。
この時代、帽子をかぶるのは身だしなみとして当たり前のことでした。
戦前戦後、男たちはみな帽子をかぶった明治、大正、昭和初期と、この国の男たちはみな帽子をかぶりました。
フィルムの中に残るのは、学生や軍人は当たり前としても、普通に当たり前に帽子をかぶっている姿です。
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帽子の種類は様々でした。特にパナマ帽、カンカン帽などと呼ばれる、草の繊維で編まれた帽子は高温多湿な日本にぴったりで大いに流行りました。パナマ帽というのは、パナマ草(パハ・トキージャ)というヤシに似た植物の若葉を細かく裂いて編んだ帽子のことです。ちなみにカンカン帽は麦わらを細かく編んだものでアタマが平らです。パナマ帽よりも廉価だったそうです。
帽子をかぶれば一人前一方、ソフト帽などと呼ばれるフエルト製の帽子は冬の帽子です。
日本人紳士たちは季節を選んで紳士の身だしなみとして帽子をかぶっていたのです。
一説によると、戦前、戦後を通じて「帽子をかぶれば男も一人前」といわれたそうです。つまり、帽子というものはある時期まで、出世、財力、地位のシンボルの一つだったのですね。
帽子が消えた理由ところが、戦後の高度成長の中、帽子をかぶる男たちは次第に消えていきました。
理由はいくつかありますが、「男たちも髪型を気にするようになったこと」は一因でしょう。特にポマードなどで髪をなでつけたところに帽子をかぶると、髪型もおかしくなってしまいますし、帽子が汚れてしまいます。
もうひとつは民主化です。「地位や権威の象徴」であった帽子から、もしかしたら人びとは解放されたがっていたのかもしれません。高度成長と民主化という戦後のビッグウェイブが、男たちに帽子をやめさせたというのです。
また、次第に外国映画などでも帽子のヒーローは次第に消えていき “無帽時代の風潮”は世界的に進み、今にいたるわけです。
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