【ワシントン時事】米大統領に20日就任するトランプ氏は、大規模減税や大胆な規制緩和を通じ「経済の黄金時代」を目指す。ただ、米国の財政赤字は同氏の1期目と比べて大幅に悪化。減税や赤字圧縮の財源に関税収入を当て込むが、貿易相手が報復関税に踏み切れば「返り血」を浴びるのは避けられず、不透明感は強い。
経済政策で「最も重要な課題」(ベッセント財務長官候補)は、トランプ氏が1期目在任時に実現し、2025年末に失効する大型減税の更新だ。トランプ氏は減税延長だけでなく、チップや残業代、社会保障関連給付金への非課税など中・低所得層の負担軽減ももくろむ。
一方、財政状況は大幅に悪化している。議会予算局(CBO)の見通しによると、25年度の財政赤字は国内総生産(GDP)比で6.2%。1期目就任時の17年度の3.4%を大幅に上回る。金利も高く、不用意な減税は財政悪化に拍車を掛ける恐れがある。
ベッセント氏は16日の上院公聴会で「問題は歳入より歳出だ」と発言。歳出削減を通じて財政健全化を図る構えだ。歳出の大きな部分を占めるのは社会保障費やメディケア(高齢者向け公的医療保険)だが、トランプ氏は「手を付けない」としており、おのずと削減余地は限られる。
そこで浮上するのが関税収入だ。ベッセント氏は関税について、交渉手段となるだけでなく、「より一般的に使われた場合には、連邦予算の収入源になり得る」と明言した。しかし関税引き上げには貿易相手の報復措置が見込まれ、米国の輸出や成長を圧迫しかねない。国際通貨基金(IMF)は最新の見通しで、高関税などが「世界と米国の経済に中期的には悪影響をもたらす」と警告した。