2017年3月、栃木県那須町の茶臼岳で登山講習会中だった大田原高山岳部の生徒と教諭計8人が死亡した雪崩事故について、講習会を主催した県高校体育連盟が20日までに、反省と再発防止の取り組みを文書にまとめ、公表した。事故の背景に、計画全体のマネジメントと危機管理意識の欠如を挙げ「安全対策や指導体制について、不断の見直しを進めていく」としている。
雪崩事故を巡り県高体連は、21年7月にも事故の反省を文書にまとめている。今回は、一部遺族が損害賠償を求めた民事訴訟で、23年6月に宇都宮地裁が県高体連や県に計約2億9000万円の支払いを命じ、その後判決が確定したことを受けて作成した。
公表された文書では、講習会の事前の計画立案について、下見が十分だったとは言えず、荒天時の代替案の検討がなされなかったとして「前例を踏襲するのみで、危機を想定した十分な計画がなされなかった」とした。
現場にいた教員間の協働意識や共通理解についても、行動範囲や危険箇所を曖昧にしたままで、不十分な打ち合わせが行われ「雪崩の危険性についての知識や情報が共有されず、安全確保につなげることができなかった」と反省点に挙げた。
また、過去の振り返りが不足していたことにも触れた。10年3月の講習会中にも雪崩が発生していたが、けがをした生徒がいなかったため十分に情報が共有されておらず「事故防止対策に生かされなかった」と位置づけた。これらの反省から「長年運営を継続した中で、危機意識が麻痺(まひ)し、危機管理の意識や体制が十分に機能しなかったことが、大事故につながった」などと総括している。
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再発防止策については、講習会の実施を取りやめ、部活動や競技会の危機管理体制を見直しているほか、事故の風化防止や、研修の充実を図っていくとしている。県高体連の大牧稔会長は、被害者や遺族への謝罪と「事故を風化させることなく、安全対策の徹底に努めていく」などとするコメントを出した。
雪崩事故は17年3月27日に「春山安全登山講習会」で発生し、男子生徒7人と引率中の男性教諭1人が死亡し、他校の生徒ら40人が重軽傷を負った。県教委も民事訴訟の判決を受け、反省などを記した文書を24年3月に公表している。【池田一生】
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