<山下智子さんのメイクレッスン>
雑誌や広告、テレビなどで引っ張りだこのヘアメイク山下智子さん。気さくな人柄と確かな技術で、田中みな実さんや宇垣美里さんなど美容賢者が信頼を寄せる、業界をけん引するヘアメイクアップアーティストのひとりです。
山下さんが個人向けに「m.mode(ムード)」というヘアメイクのレッスンを行っていると聞き、取材を決行! 山下さんとお仕事したこともある私、スタイリスト大日方理子が、今っぽいメイクを教えてもらいました。
今回は、ベースメイク編です。
◆1)メイク前にたっぷり保湿
――今日は楽しみにしてきました! 40代になり、ほうれい線と目の下のクマが気になっています。今っぽく元気で機嫌良く見えるメイクが知りたいです。何を買ったらいいのかわからないのでアイテムも教えてください。
山下智子さん(以下、山下):わかりました。ではスキンケアから。洗顔後に導入の美容液を塗って、さけるコットンに化粧水をたっぷり含ませてパックします。
乾燥した肌にメイクしても、シワっぽく見えちゃいます。スキンケアをしっかりやることがメイクのノリや持ちにもつながるので、怠らずに保湿するのが大事です。
――朝バタバタで時間がない人は?
山下:シートマスクを使うのがいいかも。パックしているあいだに朝ご飯を作るとか、ほかのことをすれば時短になりますよね。
パックの後は、唇にリップクリーム、顔全体にクリームを塗って、冬なのでさらにオイルも塗ります。オイル2〜3滴を両手になじませて顔にプレスするつもりでつけましょう。
◆2)トーンアップベースは首まで塗る
●使ったコスメ:DECORTÉ(コスメデコルテ)「フローレススキン グロウライザー」
山下:スキンケアが済んだら、トーンアップベースをつけていきます。顔に塗ったら首にも塗ります。
――首まで塗ったことはなかったです。大人はトーンアップと書いてあるベースがいいですか?
山下:ヘルシーな感じがよければトーンアップがいいと思います。今塗ったのはDECORTÉ(コスメデコルテ)のもの。もともと肌が綺麗な人みたいな、つるんとした補整をしてくれる、自然な仕上がりのベースです。
――ほほにつや玉ができた!
山下:日焼け止めの成分も入っているし、自然なつやが出るのでおすすめです。
◆3)ファンデは顔全体に均一に塗らないで
●使ったコスメ:ADDICTION(アディクション)「ザ ファンデーション リフトグロウ」
山下:ファンデーションは全体に同じ量を塗ってはいけません。
直接ファンデをのせるのは、ほほとおでこ。手の甲にファンデーションを出してから、ほほには指2本でしっかりのせ、おでこには指1本で軽くのせます。水で濡らしてギュッと絞ったしずく型のスポンジで、ポンポンと広げていきます。
山下:フェイスライン・鼻・目周り・口周りは、直接ファンデーションをのせずに、スポンジについたものを塗るだけでいいです。足りなかったら、指に余ったファンデーションを足すくらい。ほほは赤みも出やすいところなので、2回目のファンデーションをのせます。
塗る場所と量を意識して塗るだけで仕上がりや化粧持ちが変わります。ヘルシーなつやが出るADDICTION(アディクション)のファンデを使いました。
――ほほが上がって、顔が立体的に見える! 手で塗るよりスポンジがいいですか?
山下:手やブラシで塗る方法もあるけど、スポンジの方が自然に仕上がります。水で濡らして絞ったスポンジを使うとピタッと肌にフィットする感じ。
薄づきだからヘルシーに見えますよね。元から肌が綺麗な人みたいな見え方が、30代40代の人にはいいかなと思います。
――DECORTÉやADDICTIONを使ったけれど、プチプラよりデパコス(デパートで販売されているコスメ)がいいですか?
山下:マスカラやアイブロウはドラコス(ドラッグストアで販売されているコスメ)でもいいと思うけど、大人はベースやファンデーションはケチらずにお金をかけるのがいいと思います。
年齢的に、肌はある程度つやっぽくないと、 シワっぽく、老けて見えちゃいます。パンとしてつやっとしていると若見えにつながります。
目指すのは、表面がテカテカしているというより、内側から光っているようなツヤのある肌です。そういう上品なつや感はやはりデパコスのほうが得意だし、化粧持ちもいい。ファンデーションの色などはコスメカウンターで相談するのが早いと思います。
――なるほど。仕上がりの質感が違うんですね。
◆4)クマ消しには、オレンジ系のコンシーラーを
●使ったコスメ:&be(アンドビー)「ファンシーラー」
山下:次はクマを消していきます。クマは青っぽいので補色になるオレンジ系のコンシーラーがおすすめ。コンシーラーをブラシに取ったら、クマの線の上に3点のせ、指の腹を使ってトントンと軽いタッチでなじませます。
小鼻の周りの赤みはベージュ系のコンシーラーを使います。同じように、ブラシで小鼻の際にのせて、指でなじませます。
Naturaglace(ナチュラグラッセ)や&be(アンドビー)など、最近はオレンジ系とベージュ系がセットになったコンシーラーがいろいろ出ています。どちらも使う色だから、2色セットがお得じゃないかな?
◆5)ほうれい線の溝ではなく、内側にハイライターを
●使ったコスメ:YVES SAINT LAURENT BEAUTY(イヴ・サンローラン・ボーテ)「ラディアント タッチ」
山下:もうひと手間やってもらいたいのがハイライターです。
――ハイライターとは?
山下:白に近い肌色で、コンシーラーのツヤがあるバージョンみたいな感じ。光でふわっと見せる効果があります。目の下の頬骨の1番高いところと唇の山のところに塗って、指の腹を使ってポンポンとなじませます。
年齢とともに人中(鼻の下)が長くなるけど、唇の山をハイライターでふっくら見せることで人中を短く見せる効果があります。あとは、ほうれい線よりも内側に入れると、ほうれい線が目立たなくなるんですよ。
――ほうれい線に塗るのではなく、内側に塗るんですか?
山下:そう。内側を明るくしてあげることで、ほうれい線の下にできる影を光で飛ばすことができます。だからほうれい線の溝を埋めるんじゃなくて、下側を明るくするんです。
さらに、口角をあげるイメージで唇の端をくの字で囲うように入れて指の腹でなじませてください。唇の輪郭がはっきりします。
――ほうれい線の溝が薄くなった気がする!
山下:光でふわっと見えますよね。
◆6)全体にパウダーをさっと塗る
●使ったコスメ:DECORTÉ(コスメデコルテ)「ルース パウダー」
山下:次にパウダーをつけていきます。基本的にファンデーションなど油分のあるものを肌にのせると崩れてくるので、それを防ぐため。さらさらにすることで、汚れがつかないようにする意味もあります。パウダーを塗りすぎると乾燥するので大きなブラシでさっと塗るのがいいです。
フェイスラインに油分のつやがあると不潔に見えてしまうため、最初に塗るのはフェイスライン。パウダーをブラシに取ったら手の甲でなじませて、フェイスラインはしっかり塗ります。それから鼻、眉毛、と塗ってください。
目元は目をつむり、指の腹でまぶたをなぞってからブラシで軽くパウダーをのせる。おでこやほほのあたりはブラシに残っていたパウダーでさっとなでるぐらいで大丈夫です。
◆7)最後に、気になるシミを消す
●使ったコスメ:NARS(ナーズ)「ラディアントクリーミーコンシーラー」
山下:パウダーで押さえたら、最後にシミを消していきます。
――シミを消すのはパウダーをしてから?
山下:そうです。油が乗ってるところにコンシーラーを乗せても、よれてしまうから。シミの上にコンシーラーをのせたら、シミの上は触らずに境目がわからなくなるように指でトントンとなじませて、指先にパウダーをつけて押さえます。
シミやニキビのカバーには、ベージュ系のハイカバータイプのコンシーラーを使います。テクスチャーの違いよりも、メーカーによってコンシーラーのカバー力は違うんですよ。私はNARS(ナーズ)のものを使っています。
◆大人は“健康的な肌感”を目指してメイク
――シミがどこにあったのかわからなくなった!
山下:これでベースメイクは完了です。肌にパンとハリが出ましたね。すごく綺麗。beforeと比べたら口元の上がり方も全然違う!
――ナチュラルだけど、なんだか顔が元気になってる! 若くなった感じ。ベースメイク大事!
山下:そう! だからこそ大人は、ベースメイクに時間もお金もかけていいと思います。
(次回は眉毛の描き方を教えてもらいます)
◎山下智子さん
1979年東京生まれ。ヘアメイクアップアーティスト。女性誌、カタログ、広告、テレビなどで幅広く活躍中。田中みな実さん、宇垣美里さんなど女優やモデルからの支持も厚い。約10年前から個人向けのヘアメイクレッスンを続けており、2023年10月にパーソナルレッスンを行う「m.mood(ムード)」をオープン
Instagram:@tomokoyamashita_hairmake
<文・モデル/大日方理子 撮影/林 紘輝(扶桑社)>
【大日方理子】
(おびなた・りこ)スタイリスト。1979年生まれ、お茶の水女子大学卒。『Ray』などの女性誌やテレビでスタイリストを務める。きれいめからカジュアルまで、今の気分を取り入れたスタイリングが得意。骨格診断アドバイザー。猫背改善で身長149cm→151cmに。中学生の女の子がいる1児の母でもある。公式HP