2024年末に閣議決定された「税制改正大綱」に、2025年から“103万円の壁”を123万円に引き上げることが明記されました。
103万円の壁といえば以前は配偶者控除に関する壁でした。妻の年収が103万円以下だと、夫が配偶者控除の満額を受けられるというものです。しかし2018年から、満額の配偶者控除を受けるための年収は、103万円から150万円に引き上げられました。配偶者控除の103万円の壁はもうありません。
現在も残る103万円の壁は、所得税に関するものです。パートなど給与所得者は、年収から給与所得控除を引いた所得が、基礎控除の48万円以下だと所得税がかかりません。給与所得控除の最低保障額は55万円ですから、所得税の課税最低ラインは基礎控除48万円+給与所得控除の最低保障55万円=103万円です。
ただ、年収が10万円増え113万円になっても所得税は5千円。これが働き控えにつながるかには疑問が残りますが、いっぽうで課税最低ラインを上げることは働く人全員の税金に関わる大問題です。
先の衆議院選挙で国民民主党は、課税最低ラインを103万円から178万円に引き上げる公約を掲げました。基礎控除を今の48万円から123万円に上げた場合、減税効果は国の試算によると、年収210万円で年約9万円、年収500万円だと年約13万円。手取りが増えると国民民主党は支持を集めたのです。
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■厚生年金の負担をおそれず年収の壁を超えて働こう
ところが、税制改正大綱に盛り込まれた課税最低ラインは178万円には程遠い123万円でした。基礎控除は10万円上げて58万円に、給与所得控除は最低保障額のみ10万円の引き上げで65万円です。
となると減税効果は、基礎控除と給与所得控除が上がる年収150万円の人は年約2万円ですが、年収190万円以上の給与所得控除は引き上げがないため、年収300万円だと年約5千円、年収500万円だと年約1万円。期待外れです。
それよりもパート社員らに影響が大きいのは“106万円の壁”の撤廃です。現在は、従業員数51人以上の企業に勤め月収8万8千円(年収106万円)以上、週に20時間以上働くなどの条件を満たす方に、厚生年金などの加入義務があります。今後は加入条件から月収8万8千円以上と従業員数51人以上をはずし、週20時間以上だけにする案が検討されています。
週20時間だと1日4時間×週5日、7時間×週3日など、もはや“パートは全員加入”のようなもの。ならばいっそのこと、年収の壁を超えて働きませんか。家計の物価高対策としても有効です。
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大手スーパーのイオンは’25年も時給を7%上げると発表。労働組合UAゼンセンも2025年春闘でパート時給の目標は「7%基準の賃上げ」といいます。賃金アップが壁突破の追い風になるでしょう。
ただし、社会保険に加入すると、年約15万円の保険料が必要です。それも含めて、2025年は年収120万円を目指して働きましょう。
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