『没落貴族』EDはハッピーでポップな5thシングル!岡咲美保『JOY!!』リリース記念インタビュー アニメやゲームの主題歌、テーマソングなどを歌うアーティストに楽曲について語ってもらう雑誌「メガミマガジン」のインタビュー企画「Megami’sVoice」。2025年2月号には、『没落予定の貴族だけど、暇だったから魔法を極めてみた』のEDにして自身の5thシングル『JOY!!』をリリースした岡咲美保が登場。
ノリを大切に歌った『没落貴族』のED
――テレビアニメ『没落予定の貴族だけど、暇だったから魔法を極めてみた』(以下、『没落貴族』)のEDテーマ「JOY!!」は、とてもポップなナンバーですね。
『没落貴族』が壁にぶつかって苦労をするというよりは、明るく楽しく気持ちよく魔法を習得する物語なので、EDも楽しい気持ちで終わるものがいいなと思っていたんです。それもあって、跳ねるようなサウンド感の曲を集めていただきました。
――候補曲のなかから、このメロディに決めた理由は?
いい曲ばかりで迷ったのですが、そういうときに私は、思わず口ずさむような、何度も聞きたくなる曲を選ぶようにしているんです。「JOY!!」はサビが覚えやすくキャッチーでしたし、ここまでパキッとした明るさのある曲はこれまであまり歌ったことがなくて新鮮で。年代を問わず聞いてくれた方の頭のなかを歌詞がグルグルと回ることを期待してこの曲に決めました。
――歌詞については、どのような依頼を出しましたか?
物語冒頭から、主人公に関わる女の子のエピソードがあるので、女の子目線というところを大事にし、出かける準備や好きな人の側にいたいと思う気持ちを歌詞にしてほしいとお願いしました。実際に上がってきた歌詞のなかに、「ネイル」というフレーズがあったのですが、「メイク」のほうがよりこの曲に登場する女の子らしいと思って、私からも意見を出させていただきました。ただ、英語が多くて……。
――英語は苦手ですか?
英語はどちらかというと子音を意識することが多いと思うのですが、私は母音が強いみたいで。さらに、尺いっぱいに言葉が詰まっていると「ハッキリ発音しよう!」とがんばってしまうので、流れるような発音を必要とする英語は少し苦手です。それもあって、レコーディングでは緊張しました。
――レコーディングでは、どんなことを大切に歌いましたか?
私はまず自由に歌ってみて、それを聞いてから、しっかりとしたアプローチを考えていくほうなんです。「JOY!!」は最初に歌ったときからハマリはよかったのですが、一度録った歌を聞いて、ノリを重視したほうがいいなと感じて。音楽に乗ることを大事にしながらのレコーディングでした。ただ、英語パートだけは作家さんやスタッフさんにディレクションをいただき、試行錯誤をしながら歌いました。
――岡咲さんの曲はポップチューンも多いですが、そのなかで「JOY!!」には新しさを感じますか?
伝えたいメッセージや明るさのワット数という意味では、これまでに歌ってきた曲と近しい世界線で、この曲で私の歌を好きだと思ってくださった方は、ほかの曲もきっと楽しんでもらえるという親和性は感じます。でも、「JOY!!」のようなノリが強めの曲は、個人的には新しいと感じています。
――初回限定盤に同梱のBlu-rayに収録される「JOY!!」のミュージックビデオ(MV)では、ダンスも披露されているとか。
運動はあまり得意ではありませんがダンスはレッスンも含めて好きで、「JOY!!」のダンスもがんばって覚えたので、ぜひSNSなどに踊ってみた動画を上げてほしいです。いままではファンシーで甘めの衣装が多かったのですが、ダンスシーンは赤と黒のチェックのワンピースで、甘いだけじゃない辛さのようなものも盛り込んだので、ビジュアル的にも新しいアプローチができていると思います。
――岡咲さん自身の「JOY!!」の好きなポイントは?
私のことを知らなくても、フェスなどで流れれば自然と乗れる曲になってくれたらいいなと思って選ばせていただいたので、一番はノリがいいところです。歌詞だと2番のAメロやBメロあたりが好きです。私は2番のAメロやBメロに、曲の一番伝えたいことがナチュラルに入ってくると思っているんですが、「JOY!!」もフィルターや加工を外して、楽しいものや好きだと思うものを見てみようというメッセージが詰まっているんですね。おめかしをしたくなる世のなかで、それを取り払う強さが表現されているところがいいなと思います。また、出会いの奇跡や手を取り合って進むことなど、アニメはもちろん私とファンの皆さんの関係性にリンクした歌詞も出てくるところも大好きです。
――カップリング曲の「ときめきこれくしょん!」は、2024年11月22日に発売された『岡咲美保1stフォトブック おかさきみほん!〜Precious Days』のイメージソングですね。
声優雑誌での連載を集めた書籍なので、連載を応援してくれたファンの皆さんへの感謝を込めて、一緒に歌える曲を作りたかったんです。それもあって、覚えやすく、初めて聞いても2番からは一緒に参加できる曲をお願いしました。歌詞のなかに「いっぱい」というフレーズがたくさん出てくるのですが、最初は都度違うフレーズに変更する案もあって。でも、覚えやすさを重視して、全部「いっぱい」のままにしていただきました。1stライブでコール&レスポンスをしてくださるお客さんが楽しそうだったので、もっとこういう曲を増やしていきたいと思っていたんですね。そのぶん、皆さんに覚えていただくフレーズが増えたので、宿題曲みたいにもなりました(笑)。
――「ときめきこれくしょん!」のお気に入りポイントは?
私は昭和の歌謡曲が好きなので、それを思い出せるような歌い方ができたらいいなと思っていたんです。アニメソングや声優さんの曲は、ギュッと歌詞が詰まったナンバーが多いように感じるのですが、この曲はあえてゆったりしたテンポを目指しました。レコーディングでは気を抜くと私のケロケロとした高めの声が出てしまうので、もうちょっと歌謡曲に近い雰囲気の声にしたくて。何度も録っていいテイクを選びました。
――もう1曲の「絆創膏」は、さらにしっとりとしたナンバーですね。
声優を目指した中学生のころからボーカロイドの曲が好きで、なかでも40mPさんは同郷なので勝手にご縁を感じていました。曲をお願いできることが決まったときに、どんな曲がいいかと考えて浮かんだのが自分ではなく他人にフォーカスした、不器用な恋愛の曲でした。1stアルバムで書き下ろしていただいた「Rainy Smiley」が自分の内面に迫ったような曲で、まさに自分そのものだと感じたので、違ったアプローチの曲を作っていただきたかったんですね。この曲は、まるで一枚絵のような、ピンポイントの世界を表した曲だと感じています。「JOY!!」や「ときめきこれくしょん!」と比べると、「絆創膏」は輪郭がハッキリしている。すごく生っぽくて、そんな曲を歌えることがうれしかったです。
――輪郭のハッキリした曲は、歌うときに違ったアプローチになりますか?
そうですね。「ときめきこれくしょん!」は「ときめき」のワット数を自分で決めて具体的にしていく作業があったのですが、「絆創膏」は歌詞の段階で具体性があるので、あえて生っぽさを追求してみました。でも、聞き手側にまわると苦しく感じられてしまって。歌い手側が苦しさを前面に出しすぎると、それは自己満足になってしまう気がしたので、あまりくどさを感じさせず、歌詞に寄り添うようにシンプルに歌うことを大切にしました。
――先の2曲よりも湿度が高めの声だなと感じました。
事前に40mPさんにも、この曲の主人公が何歳くらいで、どんな過去があったのかをうかがったんですね。それを踏まえて息っぽさを大切に、ひとりの女性の歌声を目指したので、そう聞こえるのかもしれません。いままでの楽曲がマンガや絵本を朗読しているとしたら、「絆創膏」は小説を読むテンションと言いますか。キャラクターのセリフではなく、地の文を読むようなテンションを意識しました。それから、一番大事にしたかったのが、この主人公は「過去に戻れるなら戻るかどうか」でした。
――戻りますか?
「ワンチャンあったら戻る」でした(笑)。恋愛に限らず、過去に置き去りにしたものは誰しもあると思いますし、そういったものを抱えつつ前を向いてがんばっていると思うんです。でも、「戻れるなら戻りたいよね」という気持ちに浸れる曲にしたくて。絆創膏って早く剥がしたいものだと思うのですが、この主人公は絆創膏があることも嫌ではない。傷が治ってもしばらくは剥がさないだろうな、深夜に「戻れる」と提案されたら戻るんだろうなというイメージでした。これまでは振り切った曲や、幸せな恋愛の曲ばかりだったので、この世界観を新鮮に感じてもらえたらうれしいです。
――初回限定盤には、2ndライブの映像を収録したBlu-rayも同梱されますね。
1stがファンの方に担いで動かしてもらっている船で歌っているとしたら、2ndはそれを経て自分で船の舵を取れるようになった感覚でした。「いつか一緒に武道館に行こう」と1stのときに約束をした皆さんが2ndにも来てくれて、安心感が強かったのだと思います。ステージが1stより広くなっているのに、気にせず1stと同じように動いていたらものすごく運動量が増えてしまって、めちゃめちゃ疲れたことも覚えています(笑)。
――ライブに行けなかったという方に、映像で見る際の注目ポイントを教えてください。
「フリージア」というバラードはアコースティックで歌ったのですが、音数が少なく、没入感もあったので、ちょっと物音がしただけでも空気が壊れるような緊張感もあったんです。でも、客席の皆さんも着席でじっくり聞いてくださり、5秒くらい無音になる落ちサビも物音が立たなかったんです。皆さんが聞き入ってくださっていることがわかって、プロデューサーと私のイチオシのパートになりました。その後、アンコールで桃太郎姿になりまして(笑)。桃太郎パートではきびだんごになぞらえたサインボールを投げるのですが、ライオン姿のバルーンをお供にするなどこだわっているので、両極端なギャップを見ていただきたいです。
――ジャケット写真など、ビジュアル周りもオシャレですね。
今回、衣装もストリート風ですし、髪を短くしてから初めてのビジュアル撮影だったんです。これまでと雰囲気が変わって、表情も不思議ちゃんふうにするなど、新しさを見せられたのではないかと思います。
――岡咲さんの今年の抱負は?
プライベートでは、お休みの日に都内から出ることがほとんどないので、後先考えずに旅に出てみたいですね。アーティストとしては1月に『リスアニ!LIVE2025』に出演します。私の初めての有観客ライブが『リスアニ!LIVE2022』だったのですが、ワンマンライブを経て、ファンの方に誇らしく帰ってきたと思ってもらえるステージにしたいです。また、今年は積極的にライブ活動も行う予定です。「JOY!!」が目標とする武道館へ進む窓口になってくれたらとも思っているので、「JOY!!」をきっかけに私を知ってくださった方は、アニメと曲はもちろん、ライブにも遊びに来てくださったらうれしいです。
Profile
おかさき・みほ/11月22日生まれ。岡山県出身。アイムエンタープライズ所属。
2021年にシングル「ハピネス」でアーティストデビュー。以後、これまでにシングル4枚、アルバム2枚、デジタルシングル4曲をリリース。
声優としての主な出演作は、『転生したらスライムだった件』リムル=テンペスト役など。
Information
シングル「JOY!!」の発売を記念したリリースイベントの開催が決定。
2025年2月15日に東京・AKIHABARAゲーマーズ本店、アニメイト秋葉原店にてトーク&お渡し会、3月29日に、東京・池袋Club Mixaにてスペシャルライブ&お見送り会を行う。
参加方法などの詳細は、公式webサイト【https://okasakimiho.com/】をチェック。
「JOY!!」
2025年1月8日発売
キングレコード
表題曲は、テレビアニメ『没落予定の貴族だけど、暇だったから魔法を極めてみた』のEDテーマで、“キミ”への想いにあふれたワクワクを詰め込んだポップチューン。初回限定盤には、同曲のMVやメイキング、8月に行われた『Miho Okasaki 2nd LIVE 2024〜ハッピーメモリー〜 supported by animelo』の本編映像を収録したBlu-rayを同梱する。
初回限定盤7500円(税込)
通常盤1650円(税込)