三菱鉛筆「クルトガ」はなぜ売れ続けるのか 累計1億本超ヒットの要因

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2025年01月27日 08:31  ITmedia ビジネスオンライン

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シャーペン「クルトガ」が1億本を突破、人気の秘密は?

 2008年の発売以来、シリーズ累計販売本数が1億本を突破しているシャープペンシル(以下、シャーペン)がある。三菱鉛筆(東京都品川区)の「KURUTOGA(クルトガ)」だ。販売実績(※)を見ると、16年連続シャープペンシル売り上げ1位を記録している。


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 ラインアップは495〜5500円まで幅広く、どのモデルも学生を中心に支持を得ている。最大の特徴は「芯(しん)が回ってトガり続ける」ことだが、なぜここまでロングセラー商品となっているのか。


 クルトガの特徴や開発時のこだわり、ヒットの要因などを設計担当の井澤弘壮さんに聞いた。


●世の中のニーズに合わせて進化し続けてきた「クルトガ」


 2008年の発売当時、同社としてはまだシャーペンのラインアップがいまほどそろっていなかった。そこで「文字をきれいに書きたい」という目的に着目し、新たに開発した機構「クルトガエンジン」を搭載したのがクルトガだ。


 クルトガエンジンは、筆圧を動力として書くたびに芯が回転する特徴がある。書くたびに芯がだんだん斜めに摩耗する「偏減り(かたべり)」によって「文字が太くなる」「芯が折れやすくなる」「崩れた芯で紙面が汚れやすくなる」といった従来の問題を解決している。


 「偏減りはそれまで課題として認識していなかったが、ボールペンとシャーペンを使う様子を比較してよく観察すると、シャーペンを使っているときはペンを持ち直して回す動作が多いことに気付いた。その行動をなくし、文字もくっきりきれいに書けるようになれば、多くの学生にも使ってもらえるのではないかと考えた」


 発売に至るまで、何度も改良を重ねた。当時はまだペン先の中が動く商品がなかったこともあり、試作の段階では使ったときに違和感を覚えたという。モニターからは「書いた感じが気持ち悪い」といった声もあった。「偏減りがないメリットを伝えても、それ以上に書いたときの違和感が強く、使ってもらえるレベルに至るまで非常に苦労した」


 その後、機構の改良を重ね、2008年3月に初期モデルを発売。マーケティング調査によって得られた市場ニーズへの対応や機構自体の改良を重ね、これまで10以上のモデルを発売している。


●「高くてもこだわりが強いものを使いたい」ニーズに対応


 ここ数年は多くの顧客から「高くてもこだわりが強いものを使いたい」といった声があり、クルトガシリーズでもそれに応える形で新モデルの開発を進めてきた。


 2023年3月には、書き始めから終わりまでノックすることなく書き続けられ、繰り出し量を5段階調節できる「KURUTOGA DIVE(クルトガ ダイブ)」(希望小売価格5500円)を発売した。また、2024年4月にはメタル製の軸を採用した上質なモデル「KURUTOGA Metal(クルトガ メタル)」(同2750円)を投入。各モデルともにシャーペンとしては高価格帯でありながら品薄の店舗も出るなど、好調に販売数を伸ばしている。


 クルトガ ダイブは、筆記の動力を応用した自動芯繰り出し構想をベースにしたもので、完成に長い年月がかかった。「この機能はクルトガ開発当初からつくりたい気持ちが強く、それを目指して機能を積み上げてきた」という。


 独自の調整機能により、筆記中の芯の繰り出し量を筆圧や芯の硬度に合わせて5段階に調整が可能となり、自分好みの筆記感で書き続けられるようにした。またシャーペンとしては珍しいキャップ付きで、そのキャップを外すと、すぐに文字を書き始められる機能も備えている。


 クルトガ メタルは、メタル製の軸による上質さと、より安定した筆記感を実現したモデルとなる。上質なメタル軸のデザインを採用し、表面の質感やクリップ形状といった細部にまでこだわり開発している。


 クルトガ メタルにも筆記中のブレを軽減する「クルトガエンジン」を採用している。また、ペン先に筆記時の衝撃を和らげる樹脂製パーツ「ニブダンパー」を備えることで、ペン先のブレを感じにくく、安定した書き味を実現している。


 グリップ部分にはメタル製の上質さも生かしつつ、手になじみやすい表面加工を施した「マイルドエッジグリップ」を採用。「高価格帯になったことで、より自然な書き心地が感じられる機構が採用できた。機能も外装(デザイン)も、これまでのクルトガのノウハウを詰め合わせたモデルとなっている」


●三菱鉛筆が考える「クルトガ」シリーズヒットの要因


 クルトガシリーズは累計で1億本以上も販売しているが、同社はヒットの要因をどのように分析しているのか。


 井澤さんは「複数の要因が考えられるが、シャーペンに対して他社も含めて機能性を求める流れが来ていたタイミングで、なかなか目新しい機構だった点がうまくはまったのではないか」と話す。


 初期モデルを発売した2008年ごろは、いまほど動画やSNSを活用したプロモーションが活発ではなかったため、クルトガの特徴を視覚的に伝える手段が限られていた。そんな中、店頭で映像を使うなど工夫を凝らすことで、学生を中心に認知が拡大していったという。


 「機構もデザインも、クルトガは過去にない唯一のユニークなシャーペンだと思っている。中高生にまず興味を持ってもらい、使い勝手の良さも体感してもらうことで良さが伝わり、世代を超えて長年使ってもらえるシャーペンになればうれしい」


 同社は今後も市場のニーズを反映させながら、新機能を搭載したモデル開発を進めていくという。


 「クルトガシリーズは長年さまざまなモデルを発売しているが、芯が回ってトガり続けるといったベースの機能を持ちながら、モデルごとに新しいものを提案している。発売をきっかけに初めてクルトガを知ってもらったり、既存ユーザーに驚いてもらったり、今後も機能を磨きながら新しいものを提案していきたい」


 2024年には、クルトガファンを対象とした初のユーザーミーティングを開催。今後もさまざまな取り組みを通じて、時代のニーズを反映した開発を進めていくようだ。新モデルの展開にも注目したい。


(熊谷ショウコ)



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  • クルトガ好きで使っています。子どもも好きです。スカイツリーに行った時にオリジナルのクルトガあって買いました���ޥ���
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